基本的なFNマシン作りのコツ Dio編


ここでは、今や少数派であるライブDio-ZXのFN仕様について解説します。

前述した通り、私は96仕様ライブDio-ZXでFNクラスに参戦しております。

そのレース経験で得た仕様等を解説したいと思います。

私は田舎レーサーですので(笑)情報が古いかもしれませんが、少しでもDio乗りの方々のお力になれば、と思いますので・・・。

もちろん「基本編」と合わせてストリートでの街乗りマシンにも有効な方法です。

※このページはHP開設前の古い時期にまとめておいた物ですので、かなり情報が古い事をご了承下さい。


エンジン編

まずエンジンのツボを解説します。

基本的にライバル車である3YK-JOGと比べると、どうしてもDioエンジンは見劣りしてしまいます。
ライブDioのエンジン、「AF34型」は、前述した通り「トルク型」のエンジンですのでどうしても最高速でJOGに及びません。

となりますと、Dioの「力のあるエンジン特性」を少々犠牲にしても最高速を狙わなくてはなりません。

まずエンジン自体の「最高回転数を少しでも上げる」方法を解説します。


さて、「最高回転数」を上げるとその分「最高速」も伸びますね。
駆動系の変速が終了し、エンジン回転のみで「スピード」を稼いでいく部分です。
となると、FNクラスで「最高回転数」を上げる為にセッティング変更可能なエンジン関連部分は

  • キャブレター
  • オイルポンプの調整
  • CDI
  • プラグ

    となります。

    (駆動系については後の項目で解説します。)


    ではまずキャブレターです。
    これは97〜規制前モデルまでの物を使用します。
    94〜96モデルの物より回転フィーリングが良くなります。

    Dioの97キャブです


    97モデルの銀色キャブです。

    96以前のマニホールドに付ける場合は、

    インシュレーターも97モデルを使用します。

    メンテ性を考えてエアクリカバーを加工してます。

    (画像をクリックすると拡大します)



    ※以下略語

    エアスクリュー=AS

    スロー(パイロット)ジェット=SJ

    ジェットニードル=JN

    スロットルバルブ(カッタウェイ・カットバルブ)=THV

    メインジェット=MJ

    と記述します。


    そしてまずオートチョークを殺します。
    基本的に、「スクーターのオートチョークはON状態で壊れて固定されている物がかなり多い」からです。
    チョークが効きっ放しだと、全ての回転域で混合気が濃くなってしまいます。

    さて、チョークを殺してエンジンを回しても、おそらく最高回転はさほど上がらないと思います。
    なぜなら、フルノーマルのキャブセッテイングは、カブらない程度にかなり濃い目のセッテイングになっているからです。
    ちなみに、DioのノーマルMJは94〜96モデルで#82ですが、これを#85にして走行すると

    超高回転時のアクセル「全閉」状態から一気に「全開」にした場合に、「混合気が濃すぎる事によるエンジンの失速」が起こってしまいました。

    「ゴボゴボ」という感じでは無く一瞬で回転が失われてしまいました。「失火」と言った方が良いかもしれません。
    すなわち、メインジェットを1ランク上げただけでも空燃比のバランスが崩れるほどガスが濃いという事ですね。
    まずこの事が大前提です。「ノーマルのキャブセッテイングは濃いめ」なのです。
    少々MJ&SJを下げた所で、焼き付く事はまず無いと言って良いでしょう。

    では、「上を伸ばす」為には当然「薄め」のセッテイングが必要です。
    具体的にはMJ、SJとも1〜2ランクのダウンといった所です。
    97モデルのノーマルセッテイングはMJ=#80 SJ=#40ですので、

    MJ=82・80・78・75

    SJ=40・38・35

    といった所になります。

    この位が実用範囲内です。

    ここで勘違いしないで頂きたいのが、MJがノーマルより下がっているからといって、「かなり薄い」セッティングでは無く「適正値より少し薄め」だと言う事です。
    前述した通り、「ノーマルジェットはノーマルエンジンに対してベストセッティングでは無い」という事ですので。

    SJ、THV、JNについても全体的なバランスで調整しなければなりません。
    MJのみを薄めにセットし、高回転時の空燃比が合っていたとしても、仮にコーナー進入時に「アクセルを全閉」にして立ち上がりで「全開」にしたとします。

    そのような場合、ガスが噴出するのは当然MJからです。

    しかし、いくら一瞬でアクセルを「全閉」から「全開」にしてMJからガスを大量に噴出させようとしても、

    SJからのガス噴射や、THV&JNの働きがカットされている訳では無いのです。

    アクセルが「全閉」から「全開」になるほんの一瞬でも、THVやJNによる空燃比の調整が行われているのです。
    直線を全開走行している場合でも、SJからのガスがカットされる訳ではありません。
    アイドリング時にMJからのガス噴出が無いかといえばそうでもありません。

    「アクセル全開時」に「混合気が薄い」と感じた場合でも、MJが薄いとは限らないのです。

    このあたりが、「キャブはトータルバランス」という事ですね。


    まとめますと、

    高回転域を薄めにセットすれば、オーバーレブ域でのエンジン回転そのものは上昇します。
    すなわち最高速も稼ぐ事が出来ます。

    しかし「中回転域でアクセルを急に全開にした場合」等の「アクセル全開固定では無い」状況下では、 THV&JN&SJのバランスによっては立ち上がりで失速感が出たり、エンジンの熱ダレを引き起こす事もあります。

    そしてエンジン回転域のどこか一箇所でも「薄すぎる」セットになっている場合、どこかで熱ダレ等の不具合が出る可能性があります。

    といった所です。

    当然雨などの天候によっても左右されますので、臨機応変なセッテイングが必要ですね。


    ここでキャブ関係のまとめとして、一つの目安をご紹介しておきます。

    実走行でそこまで使う事はありませんが、リヤタイヤを浮かせた無負荷空転のエンジン回転数で、

    10000rpmを超えるのがベターだと思います。

    この程度は無負荷空転で回せていないと、キャブだけではなくトータルのエンジン作りのバランスが悪いと言う事だと私は思っておりますので。

    もちろん色々と不確定要素もありますが、せめて9800rpm程度はどんな環境でもキープしておきたいですね。

    回らない原因はセッティングの他にクランクシャフトやケース、CDIやシリンダーの問題もありますが…

    ライブDio-ZXベースのFNレーサーとして考えるならば、その位のエンジンでなければJOGとまともに渡り合う事は難しいでしょう。


    では次にオイルポンプの調整です。
    Dioの場合「オイル吐出量」は、エンジン回転よりも「アクセル開度」に左右される所が大きいです。
    簡潔に言いますと、エンジン回転にはあまり関係無く、アクセル開度が大きければ「オイルも濃くなる」と言う事です。

    さて、オイルポンプ開度もノーマルセッテイングだとかなり、と言いますかメチャクチャに濃いめになっています。
    はっきり言って、エンジン内部やマフラーを汚したいのか、と思わせる位オイルの吐出量が多いのです。

    これではいくら空燃比が適正でも、エンジン内部に入るオイル量が多すぎて、エンジン内部の燃焼状態をベストに保つことはできません。
    (よほど燃焼効率の良いエンジンなら話は別ですが)

    エンジンの燃焼室に入って「燃える」のは、空気+ガス+オイルなのです。
    すなわちオイルも適正値まで「絞って」セッテイングしなければならないと言う事です。


    具体的には、サービスマニュアルを見ると「アクセル全開時にはオイルポンプも全開に固定」となっていますね。
    その状態を「10」とすると、私のセッテイングは「5〜6」位しかオイルポンプが開いていません。
    すなわち、「物理的なアクセル全開時にはオイルポンプは半分位しか開いていない」というセッティングになります。

    そうするとエンジン燃焼室には不要なオイルが流れ込まなくなり、混合気を「完全燃焼」させる方向に持っていく事が出来ます。

    スクーターのエンジンは強制空冷ですので、安定した燃焼効率を保つ事は難しいようです。
    しかし極力きちんと「燃焼」させなければ、パワーには繋がりませんからね。


    でもそれで焼きつかないのか、と思われる方もいらっしゃると思います。
    エンジンですので断言は出来ませんが、少なくとも私はオイルの吐出量が原因で焼きついた事はありません。
    某スクーターチャンプでも実験されていましたが、オイルが無くてもエンジンは動きます。

    燃焼室に混合気が掃気される時にはかなりの冷却効果がある様ですし、混合気が爆発する際の「遅延爆発による気化冷却」も大きいようです。

    私も限界へのチャレンジをした事があります。縦置Dioでチャンバー+キャブ+混合という作りのマシンで、ガスとオイルの混合比を限界まで薄くしてみました。

    結果は、120:1でもかなり普通に走りました。

    10km走っても何も起こりませんでした。
    (混合だと潤滑&冷却効率が良いので一概には言えませんが、参考までに)

    という事ですので、ノーマルエンジンではまず大丈夫です。

    しかし分離給油である以上、アクセル全閉時にはオイルはほとんどエンジン内に入りませんので、高回転時の「長時間のアクセル全閉」はまずいと思います。


    そして、キャブの項目でも書きましたが絶対的な「混合気量」が少ない場合には、エンジンの「熱ダレ」を引き起こしやすくなります。
    当然、オイル量が少なくなおかつ空燃比も薄い場合ですと、エンジンはかなり熱を持ってしまいます。
    すなわち、燃焼効率を上げるためにオイルを絞った場合、ガスの流量も調節する必要があるという事です。

    では具体的に、私のセッテイングを公開してみます。

    オイルポンプ開度規定値= MJ75〜78 SJ38 THV94モデル

    オイルポンプ開度1/2= MJ78〜80 SJ40 THV97モデル

    といった感じです。

    オイルポンプ開度1/2のセッテイングでSJ、THVも共に濃くしています。(THVは94モデルの物より97モデルの物の方が空気吸入量が少ない)
    これは、「アクセルが全閉〜半開までの状態ではオイルポンプがほとんど開かず、失速感が出るほど混合気が薄い」からです。
    それと同時に「エンジン高回転時のアクセル全閉時」に熱ダレを防ぐ狙いもあります。(これはアイドリングを上げておくのも一つの手段です)

    オイルポンプに関しては以上です。
    JOGと違ってDioはオイルポンプの調整が出来ますので、かなりセッティングの幅が広がりますね。




    次はCDIについてです。

    まず大きく分けてデジタルCDIアナログCDIの2種類に分けられます。

    デジタルCDIは、点火タイミングのプログラムがコンピューター制御になっており、全回転域で正確な点火が望めます。
    しかしここでは「CDIの点火タイミングのプログラム」のみを問題にしていきたいと思います。

    ※ここからは、ノーマルCDIに対しての点火時期が速いか遅いか、という表現になりますのでご了承下さい。

    さて、その点火特性ですが、基本的にアナログは「高回転が伸びる」特性です。
    デジタルは「トルク、レスポンスに秀でて高回転は伸びにくい」特性です。

    すなわち、アナログは「低〜中回転域ではノーマルと同じ位、高回転域では遅角気味」の点火特性のようです。
    対してデジタルは「低〜中回転域では進角気味で、高回転域ではかなり進角気味」な点火特性を持っているようです。

    高回転で遅角する=オーバーレブ特性が良いという事ですので、ただでさえ高回転の回りにくいDioエンジンにはデジタルは不向きだと思います。
    しかもデジタルCDIは「高回転時に進角気味」の特性になりますので、ピストンが上死点に上がりきる遥か以前に「燃焼室に火が付いている」ことになります。
    そうなってしまうと燃焼時間が長くなり、結果的にエンジンが熱を持つ原因になってしまいます。

    以上の理由により、少なくとも私はよほどの低速コース(駐車場レースやジムカーナ)以外ではデジタルCDIは使用しません。

    チャンバー装着車等でしたら、高回転域の進角特性(上が回らない)をチャンバーでカバーできます。
    しかしノーマルに近い車両でしたら、最高速と熱ダレをかなり犠牲にしてまでレスポンスに振ってもデメリットの方が多いです。

    この辺も人それぞれのセッティングがありますので、好みにもよりますが・・・

    それでは、CDIメーカー別の特性をまとめてみます。
    (上側の物ほど「高回転進角型」です)


    デイトナデジタル(赤)
    ZEROデジタル
    カメファクアナログ
    キタコアナログ(紫)
    ノーマル
    デイトナアナログ(茶)
    POSHアナログ
    ↑高回転で進角気味







    ↓高回転で遅角気味



    私の体感ではこのような感じでした。

    ちなみに、MJ80、SJ40、オイルポンプ1/2でデイトナデジタルを使用した場合、高回転でノッキングを感じました。
    デイトナデジタルはかなり高回転時の点火時期が進角しているようです。
    駆動系がフルノーマルだと65km/h位しか出ないのではないでしょうか。

    デジタルCDIでトルクと回転のレスポンスを稼ぎ、駆動系で最高速を補うという方向性もあります。
    しかしそのような場合は熱ダレを回避する方法も行わなければなりませんね。
    プラグの突き出し量でも点火時期は変わってきますので・・・

    CDIについては以上です。これは好みによるものが大きいと思いますね。



    では次にプラグです。

    私は基本的に「B○EGV」を使用しています。
    ワッシャー4枚を基準として入れています。
    Dioの場合、ピストントップとの関係であまり圧縮比を上げられません。

    しかし、ただでさえ上の回りにくいエンジンですので、あまり圧縮比を上げることはお勧めできません。
    圧縮比を上げると「トルク」が出る反面、最高回転数が上がらないといった弊害があります。

    なお、最大のデメリットとして「プラグ点火部が燃焼室に飛び出す事により、点火時期が速くなる(進んでしまう)」事にもなってしまいます。

    (これを解決するには、「B○EGP」や「R7376」等の電極がフラットな物を使うと良いでしょう)

    デジタルCDIを併用した場合等は高回転時にかなり進角してしまいます。
    これでは、FNマシン最大の難点「熱ダレ」がひどくなってしまいます。
    この辺りは走るステージに合わせてのセッティングが必要ですね。

    補足ですが、私はB8EGV&ワッシャー4枚+デイトナデジタルCDIというセッティングで、エンジンストップを経験した事があります・・・



    これでエンジンセッティングの解説は終了です。
    次に、エンジンメンテのツボを少し紹介したいと思います。
    エンジンパワーを常に最良の状態に保たないと、セッティングはなかなか決まらない物ですので。



    さて、DioのエンジンはJOGと違い、各部にゴム製のOリングが多用されていますね。

  • オイルポンプ
  • キャブのインシュレーター側
  • インシュレーターのマニホールド側

    この3点はJOGにはありません。
    しかもオイルポンプ部分は「一次圧縮比」に関わってくる重要ポイントです。
    ここのOリングは、オイルポンプ自体が少し動く設計になっているため、かなヘタりやすいのです。

    すなわち、ここのOリングがヘタった場合、一次圧縮漏れを引き起こしてしまうという事です。

    これではエンジンパワーが出ませんね。
    キャブ&マニのOリング、リードバルブ&ガスケットと共にマメな交換をお勧めします。

    ここのパーツを交換した場合、極端な例では

    キックがパーツ交換前より重くなる

    という事もありました。

    一次圧縮比が上がった(適正値に戻った)事により、二次圧縮比も向上したという事ですね。


    そして、クランクシャフトの「オイルシール」ですが、このパーツも「一次圧縮比」を左右するかなり重要な物です。

    一次圧縮比を保つ為にはOリング以外にリードバルブ、リードブロック、そしてオイルシールが重要です。

    目で見てクランクケース内から混合気が漏れているようであれば交換です。

    さて、そのオイルシールですが、クランクケースに挿入する場合にはメーカー指定の深さまで入れなくてはいけません。
    が、実はメーカー規定値よりも「深く」挿入する事が可能です。
    車両に対しての具体的な数値は書けませんが、ほんの少しですが「一次圧縮比」を高めることが出来ます。

    ※この方法はレースによってはレギュレーションに抵触するかもしれませんのでご了承下さい。

    しかし、オイルシールは時間と共に「徐々に抜けてくる」(位置がズレる)物ですので、少々深く入れておいた方が安全だと私は思います。


    左側オイルシールです



    見づらくて申し訳ありませんが、左側のオイルシールです

    少し打ち込まれているのが分かるでしょうか?

    (画像をクリックすると拡大します。)




    さて、これでエンジン編は終了です。

    「スピード」を出すには駆動系のセッティングが重要ですが、駆動系をいじる前にエンジンのパワーを引き出さないとスピードは出せません。

    「基本的なFNマシン作りのコツ」のページでも述べましたが、根本的な所がメンテナンスされていないと速いエンジンを作ることは難しいと思います。

    私は、エンジン周りに関しては「気にしすぎ」位のメンテナンスで丁度良いと思いますので・・・


    駆動系編

    では次は駆動系です。

    こればかりは色々な要素が絡んできますので、なるべく簡潔に説明したいと思います。

    まず「プーリー」です。

    ノーマルプーリー等です



    これはノーマルの「22110-GBL-700」を使用しています。

    他車種の物も実験してみましたが、やはり下から上まで一番安定していました。

    ボスは純正誤差で少し短い物を使用しています。

    ランププレートは94ZXの初期の物です。




    WR(ウェイトローラー)は重さに純正誤差がありますので、何種類か用意してセッティングをしています。 8.45g〜8.7g位までが存在します。

    ちなみに私の手持ちの同一品番WRで一番軽いのは8.45gですが、100個中6個しかありませんでした。

    場合によっては規制後モデルの7.5gを使用します。(22123-GT8-600 6個セット)

    プーリー本体は、大事なレース前に必ず交換します。
    新品プーリーと中古ベルトを組み合わせ、コースを5周ほど回ってプーリー表面のザラザラをならしておきます。

    ドライブフェイスについてはさほど気にしていません。
    指で触って減りが感じられたら交換しています。



    次は「フェイスセット・ドリブン」です。

    ※色々な呼び名が有るパーツですが、当サイトでは「シーブもしくはドリブンフェイス」と表記します。


    これは94〜96モデルの物が「レスポンスが鈍く上が伸びる」タイプです。

    97〜モデルの物は「94〜96モデルの物よりもレスポンスが良く上が少し伸びにくい」タイプです。

    そしてジョルノクレア前期モデルの物は「97モデルの物よりもレスポンスが良く上は更に伸びにくい」タイプです。


    基本的に94〜96モデルの物はレスポンスが悪く、上が伸びるといっても最高速が出るまでに時間が掛かりすぎるためほとんど使用しません。(その代わりエンジン回転が無駄になりません)

    最高速を伸ばすツボは他にありますので、基本的に「97モデル」のシーブを使用しております。
    注:上記の年式は全て「ライブDio-ZX」の年式です。

    ※エンジンの最高回転がムラ無く回せるエンジンであれば、高回転の伸びで目一杯最高速を稼ぎ、立ち上がりに有利なクレアカムを使った方が良いと思いますが…

    シーブ内部の「ピン・ガイド」はマメに交換します。
    グリスアップは2回走行毎に行っています。(硬いグリスを目一杯詰め込んでいます)



    そしてレスポンスをシーブで稼ぎ、犠牲になる最高速を伸ばすために変更するべき所はベルトとファイナルギヤです。

    まずベルトですが、ノーマルベルトの「23100-GAG-751」よりも最大変速比を大きくするために、「23100-GR1-753」というベルトを使います。
    これはノーマルと比べて幅は同じでわずかに外周が短い物です。

    GR1ベルトです

    「23100-GR1-753」のベルトです。

    この品番のベルトには2種類あり、下側の「緑ラインの入り刻印が大きい」物の方が、上側の「真っ黒で刻印の小さい物」よりも新品状態で少し短いです。

    太さは約17.8mm〜18.0mm位ですが、この長さのベルトを使うのであれば少々幅を狭くする必要があります。
    (一説によるとこのベルトは品番変更が行われたらしいのですが、(23100-GZ5-0130)現時点では詳細不明です)



    短いベルトを使う理由は「最大変速時のプーリー側のベルト位置を変えずに、シーブの内側にベルトを落とし込む」という狙いです。

    リヤスプロケットを小さくするのと同じ理由です。

    最小変速比から最大変速比までの「ギヤ比」が同じであれば、ベルトの回転半径が小さければ小さいほどロスが少なくなると言う事ですね。

    仮に「10-30」というスプロケットと「20-60」というスプロケットがあるとします。
    減速比は両者共「3.000」になります。
    しかし実際にそんなサイズのスプロケットを付けて走行するとしたら、どう見ても「20-60」の方がロスが大きそうですね。

    ノーマルスクーターのエンジンパワーは小さいため、「ハイスピードプーリー的」な考え方ではダメだと言う事です。

    そしてベルトを使い込み、幅を狭くすることによってよりいっそうシーブの内側にベルトを落とし込むことが可能です。

    参考までに、ベルトの寸法です。

    23100-GAG-751新品:長さ671mm 幅18.1mm
    23100-GAG-751中古:長さ668mm 幅17.6mm
    23100-GR1-753新品:長さ666mm 幅18.1mm
    23100-GR1-753中古:長さ662mm 幅17.6mm

    ※中古というのは、幅が約0.5mm減る位使った物です。

    ※ベルトが馴染んでくると少し長さが縮み、それ以降の寸法の変化がほとんど無くなります。

    私の経験上、一番バランスが良いのは「23100-GR1-753:長さ663mm位 幅17.5mm位」の物ですね。
    これだと、0発進〜最高速までバランス良く加速してくれます。
    この太さでこれ以上短いベルトだと、クランクシャフトが引っ張られている様な感じを受けました。



    次はファイナルギヤです。

    始めに流用可能な車両の「一時減速ギヤ」の減速比を紹介します。(二次減速ギヤは全て共通の減速比です)

    スーパー/Dio/SR12-42丁減速比 3.500
    94〜98ライブDio&SR12-42丁減速比 3.500
    92〜93スーパーDio-ZX13-41丁減速比 3.154
    94〜98ライブDio-ZX13-41丁減速比 3.154
    13-40丁減速比 3.076

    二次減速側のギヤは全車13-45丁で減速比は「3.461」になっています。

    ベースエンジンが94〜96ライブDio-ZXなら、G´の「40丁カウンターギヤ」を入れる事によりハイギア化が可能です。

    97〜モデルに関しては、「カウンターシャフト」を94〜96またはG´の物を使用する事によりボルトオン装着が可能になります。
    ギヤの歯の形状がDioとG´では少し異なるので、出来れば「13丁シャフト・ドライブ」「40丁カウンター・ギヤ」共にG´の物にした方が、ギヤ鳴りが少なくなります。

    ※「ギヤーCOMP・ファイナル」(リヤホイールが付く45丁シャフト)は、G´の物を使うとホイールが左に寄ってしまいクランクケースとリヤホイールが干渉します。

    出来ればギヤBOXのカバーもベアリング入りの96以前の物にすれば良いでしょう。
    (この場合は94〜96モデルの「ギヤーCOMP・ファイナル」が必要です)
    ハイギヤード化する事により、Dio特有の変速幅の狭さが改善されます。

    補足ですが、スタンダードモデルやSRでも「13丁シャフト・ドライブ&40丁カウンターギヤ」を入れる事により、かなりスピードの改善が見られます。
    ヘタなハイスピードプーリーを入れるよりははるかに走ります。

    最後に品番です。

    G´用「40丁カウンターギヤ」:23422-GZO-000

    94〜96用「13丁カウンターシャフト」:23421-GWO-000 (97以降モデルに40丁を入れる為に必要)

    以上です。



    次にクラッチ関係です。

    クラッチシューは純正品でも軽い物は存在します。
    ライブDio/SR、93スーパーDio-ZX用の「22535-GAH-307」はライブDio-ZX用より軽いです。クラッチスプリングにも互換性があります。
    92スーパーDioのクラッチシューはかなり軽いのですが、残念ながらクラッチスプリングに互換性がありません。

    しかしむやみにクラッチミート回転のみを上げても、改造車のようにはレスポンスは上がりません。

    現時点ではノーマルで調子の良い物を使っています。


    センタースプリングは、私の知る限りでは有用に使えそうな物がありません。
    ヤマハと違いホンダ50ccスクーターはほぼ共通の様です。

    しかし、もし純正強化センタースプリングがあったとしても、Dioシーブのトルクカムの溝形状は二段階に折れているタイプの為、デメリットしかありません。
    ただでさえシーブ側の変速が鈍い所に、さらに圧力をかけて変速を鈍らせることになってしまいます。
    (変速が進まない=加速してないと言う事です)

    いくらシーブ後半の溝が90度の直線でも、センタースプリングが強いと「ローギーヤード状態のままエンジン回転のみ上昇する」という事です。
    少なくともノーマル程度のパワーではデメリットしかありませんね。

    (改造車とは反対の方向性ですが、FNマシンと言う物はそこまでしても回転を無駄には出来ないのです)

    という事ですので、ノーマルの新品で1回練習に使った物をレースに使っています。(新品だと硬すぎるので)

    ただ、ジョルノクレアのトルクカムを使用する場合なら、変速後半の回転を食われる現象をカバーする為、弱めのセンタースプリングでも良いかもしれませんね。


    以上で駆動系の解説を終わります。
    まとめますと、

    DioはJOGに比べて「プーリー&シーブの変速幅」が狭い&効率が悪いので、ベルト&ギヤで少しでもスピードを稼ぐ

    といった方向性になります。

    駆動系に関しては日々試行錯誤しておりますので、新たな情報があれば改めて紹介したいと思います。


    足廻り編

    次は足廻りについてです。

    ご存知の通りDioはJOGに比べて初期旋回が悪いです。
    フロントフォークのストローク量も関係してきますが、一番の違いはフルボトム時のキャスター角&ホイールベースです。

    これを改善する為には、フロントフォークを突き出すか、リヤサスの全長を長くします。

    フロントフォークの突き出しは当然ノーマルでは出来ません。
    しかし三つ又等を加工するとレギュレーション違反になってしまいますね。

    そこで、「95前期モデルのインナーチューブ」を流用します。

    このインナーチューブを流用する事により、約14mm程フォークの突き出しが可能です。
    これで少しキャスター角を立てる事が出来ます。

    96三つ又+95前期インナーチューブです。



    96用三つ又(インナー切り欠き部を上側ボルトで固定タイプ)と

    95前期用インナーチューブです。

    (画像をクリックすると拡大します。)



    しかし弊害として、低速コーナー等では物理的にフロント側の車高が下がってしまう為に、アンダーカウル等が接地してしまう事もあります。
    私は現在では使用しておりません。

    ※注意点として、フルボトム時にアウターチューブのダストシール部分が三つ又に接触する可能性があります。

    ではここで品番を明記しておきます。

    パイプCOMP・フロントフォーク(インナーチューブ) 51410-GBL-751 3900円×2

    となっています。

    (価格については値上がりしている可能性があります。)


    リヤサスについては、社外品の中から丁度良い長さを選ぶか、取り付け部分を延長加工するしかありません。

    ノーマルが約305mmですので、1G沈下量にもよりますが315〜335mm位が適当では無いかと思います。
    しかしあまり高くしすぎると、人間の重心が高くなり、なおかつホイールベースも短くなりますので不安定になってしまいます。

    重心に関しては、かなりシートの「アンコ抜き」をしないといけませんね。

    ちなみに私は約325mmのリヤサスを使っています。
    それに合わせてシートも低くしています。


    次はブレーキです。

    ここもかなりの泣き所ですね。
    Dioのキャリパーは片押し1POTですので、どうしてもヤマンボ対向2POT(笑)には制動力で及びません。
    とにかく「効き」の良いパッドを使う事しか出来ませんね。

    リヤブレーキシューはタッチの好みで純正を使用しています。

    アールズメッシュ&デイトナ緑パッドです。


    アールズのメッシュホースです。

    ブレーキパッドはデイトナ緑パッドです。

    雨天時には赤パッドを使っています。

    (画像をクリックすると拡大します。)



    もちろんエア抜きやディスク板の状態にも気を使わないといけませんね。


    そしてタイヤですが、定番の「TT91GP」です。
    F=3.00、R=3.50サイズです。

    私の基本空気圧はF=1.1、R=1.5といった所です。
    雨天時には極端に変えますが・・・コレは企業秘密なもので(笑


    後は足廻りと関連して「アンコ抜き」と「ステップ滑り止め」ですね。

    私は自分のお尻に合わせながらシートを作っています。
    これは個人個人の体格差がありますので低ければ良いというものでもありません。
    あまり低くしすぎるとかなりのバックステップになってしまい、ポジションがきつくなってしまいます。

    滑り止めに関しては、「大根おろし」を使っています。
    ブーツの減りが早いというデメリットもありますが、雨天時のグリップ等は最高だと思います。


    大根おろし(アルミ製)です



    大根おろし「改」です(笑

    ビス止め+ステップ形状に合わせて板金しました。

    そしてグリップしすぎない様に山を叩いて調整しています。





    足廻りに関しては以上です。
    最大のツボは

    自分のコントロールしやすいようにする

    という事ですね。

    「操りにくい」マシンでは、スムーズなライディングは難しいと私は思います。


    小ワザ編

    最後に、知っておくと便利な小技を紹介します。

    まず、「キックペダル」です。

    取り付け角度を標準の取り付け位置よりも45度ほど上向きに取り付ける事で、キックが踏み易くなります。
    エンジンがかかりにくい時には結構重宝します。

    そして左側に転倒した時にペダルがケースカバーにめり込んでしまわないように、ペダルとケースの間にワッシャーを入れています。
    理由は少しでも完走率を上げる為ですね(笑
    運が悪いとキックギヤとドライブフェイスが干渉してしまって走れなくなってしまいますので。

    さらにエアシュラウドからのダクトも一部カットしています。
    これはクランクケースカバーの取り外しをスムーズに行う為です。

    キックペダルです


    キックペダルとケースカバーの間にワッシャーを入れています。

    キックペダルの角度も上向きにしています

    エアシュラウドのダクトは黄線部分をカットしています。

    (画像をクリックすると拡大します。)





    次は「クランクケースカバー」です。

    駆動系を頻繁にセッティングする状況では、少しでも効率が良い方がいいですね。

    私はクランクケースカバー内側のゴムパッキンを接着剤で固定しています。

    ケースカバーの脱着時にズレないようにする為です。

    ケース外周にパッキンを接着します





    この様に剥がれてはダメですね。

    ゴムパッキンを接着します。



    たったこれだけですが、作業性はかなり向上します。


    長くなりましたが、これで一通りの「Dioのツボ」を解説しました。

    エンジンはもともとの特性を活かしてトルクをスピードに変換するか・・・
    逆に回転数を稼ぐ方向性にするのか・・・

    足廻りは「初期旋回」を追及すると「安定性」が失われますね・・・

    なかなか難しい所です。

    しかしそんな事を悩むのもレースの楽しみの一つだと私は思いますので。

    Dio乗りの方々に参考にして頂ければ幸いです。


    最後に、2001年度まるち杯全国大会時の仕様を公開しておきます。

    高速コースの猪名川サーキット仕様です。

    • 駆動系
      • WR:8.45g×6個
      • ベルト:GR1=幅17.8mm長さ663mm
      • センタースプリング:2回程走行した物
      • シーブ:96用
      • ギヤ:13-40丁
      • 他ノーマル

    • キャブ
      • MJ=78
      • SJ=40
      • THV=94モデル
      • JN=94モデル

    • CDI:POSH

    • 足廻り
      • 96フォーク&97シートパイプ
      • フォークオイル:#15-60cc
      • リヤサス:オクムラ改335mm
      • タイヤ空気圧:F=1.2 R=1.6

    とにかく最高速に特化したSETでした。
    レスポンスは無いに等しかったです・・・


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