ここでは、今や少数派であるライブDio-ZXのFN仕様について解説します。
前述した通り、私は96仕様ライブDio-ZXでFNクラスに参戦しております。
そのレース経験で得た仕様等を解説したいと思います。
私は田舎レーサーですので(笑)情報が古いかもしれませんが、少しでもDio乗りの方々のお力になれば、と思いますので・・・。
もちろん「基本編」と合わせてストリートでの街乗りマシンにも有効な方法です。
※このページはHP開設前の古い時期にまとめておいた物ですので、かなり情報が古い事をご了承下さい。
エンジン編
まずエンジンのツボを解説します。
基本的にライバル車である3YK-JOGと比べると、どうしてもDioエンジンは見劣りしてしまいます。
となりますと、Dioの「力のあるエンジン特性」を少々犠牲にしても最高速を狙わなくてはなりません。
まずエンジン自体の「最高回転数を少しでも上げる」方法を解説します。
(駆動系については後の項目で解説します。)
96以前のマニホールドに付ける場合は、
インシュレーターも97モデルを使用します。
メンテ性を考えてエアクリカバーを加工してます。
(画像をクリックすると拡大します)
エアスクリュー=AS
スロー(パイロット)ジェット=SJ
ジェットニードル=JN
スロットルバルブ(カッタウェイ・カットバルブ)=THV
メインジェット=MJ
と記述します。
さて、チョークを殺してエンジンを回しても、おそらく最高回転はさほど上がらないと思います。
超高回転時のアクセル「全閉」状態から一気に「全開」にした場合に、「混合気が濃すぎる事によるエンジンの失速」が起こってしまいました。
「ゴボゴボ」という感じでは無く一瞬で回転が失われてしまいました。「失火」と言った方が良いかもしれません。
では、「上を伸ばす」為には当然「薄め」のセッテイングが必要です。
MJ=82・80・78・75
SJ=40・38・35
この位が実用範囲内です。
ここで勘違いしないで頂きたいのが、MJがノーマルより下がっているからといって、「かなり薄い」セッティングでは無く「適正値より少し薄め」だと言う事です。
SJ、THV、JNについても全体的なバランスで調整しなければなりません。
そのような場合、ガスが噴出するのは当然MJからです。
しかし、いくら一瞬でアクセルを「全閉」から「全開」にしてMJからガスを大量に噴出させようとしても、
SJからのガス噴射や、THV&JNの働きがカットされている訳では無いのです。
アクセルが「全閉」から「全開」になるほんの一瞬でも、THVやJNによる空燃比の調整が行われているのです。
「アクセル全開時」に「混合気が薄い」と感じた場合でも、MJが薄いとは限らないのです。
このあたりが、「キャブはトータルバランス」という事ですね。
高回転域を薄めにセットすれば、オーバーレブ域でのエンジン回転そのものは上昇します。
しかし「中回転域でアクセルを急に全開にした場合」等の「アクセル全開固定では無い」状況下では、
THV&JN&SJのバランスによっては立ち上がりで失速感が出たり、エンジンの熱ダレを引き起こす事もあります。
そしてエンジン回転域のどこか一箇所でも「薄すぎる」セットになっている場合、どこかで熱ダレ等の不具合が出る可能性があります。
といった所です。
当然雨などの天候によっても左右されますので、臨機応変なセッテイングが必要ですね。
実走行でそこまで使う事はありませんが、リヤタイヤを浮かせた無負荷空転のエンジン回転数で、
10000rpmを超えるのがベターだと思います。
この程度は無負荷空転で回せていないと、キャブだけではなくトータルのエンジン作りのバランスが悪いと言う事だと私は思っておりますので。
もちろん色々と不確定要素もありますが、せめて9800rpm程度はどんな環境でもキープしておきたいですね。
回らない原因はセッティングの他にクランクシャフトやケース、CDIやシリンダーの問題もありますが…
ライブDio-ZXベースのFNレーサーとして考えるならば、その位のエンジンでなければJOGとまともに渡り合う事は難しいでしょう。
ライブDioのエンジン、「AF34型」は、前述した通り「トルク型」のエンジンですのでどうしても最高速でJOGに及びません。
さて、「最高回転数」を上げるとその分「最高速」も伸びますね。
駆動系の変速が終了し、エンジン回転のみで「スピード」を稼いでいく部分です。
となると、FNクラスで「最高回転数」を上げる為にセッティング変更可能なエンジン関連部分は
ではまずキャブレターです。
これは97〜規制前モデルまでの物を使用します。
94〜96モデルの物より回転フィーリングが良くなります。
97モデルの銀色キャブです。
※以下略語
そしてまずオートチョークを殺します。
基本的に、「スクーターのオートチョークはON状態で壊れて固定されている物がかなり多い」からです。
チョークが効きっ放しだと、全ての回転域で混合気が濃くなってしまいます。
なぜなら、フルノーマルのキャブセッテイングは、カブらない程度にかなり濃い目のセッテイングになっているからです。
ちなみに、DioのノーマルMJは94〜96モデルで#82ですが、これを#85にして走行すると
すなわち、メインジェットを1ランク上げただけでも空燃比のバランスが崩れるほどガスが濃いという事ですね。
まずこの事が大前提です。「ノーマルのキャブセッテイングは濃いめ」なのです。
少々MJ&SJを下げた所で、焼き付く事はまず無いと言って良いでしょう。
具体的にはMJ、SJとも1〜2ランクのダウンといった所です。
97モデルのノーマルセッテイングはMJ=#80 SJ=#40ですので、
前述した通り、「ノーマルジェットはノーマルエンジンに対してベストセッティングでは無い」という事ですので。
MJのみを薄めにセットし、高回転時の空燃比が合っていたとしても、仮にコーナー進入時に「アクセルを全閉」にして立ち上がりで「全開」にしたとします。
直線を全開走行している場合でも、SJからのガスがカットされる訳ではありません。
アイドリング時にMJからのガス噴出が無いかといえばそうでもありません。
まとめますと、
すなわち最高速も稼ぐ事が出来ます。
ここでキャブ関係のまとめとして、一つの目安をご紹介しておきます。
デイトナデジタル(赤) |
ZEROデジタル |
カメファクアナログ |
キタコアナログ(紫) |
ノーマル |
デイトナアナログ(茶) |
POSHアナログ |
↓高回転で遅角気味
私の体感ではこのような感じでした。
ちなみに、MJ80、SJ40、オイルポンプ1/2でデイトナデジタルを使用した場合、高回転でノッキングを感じました。
デイトナデジタルはかなり高回転時の点火時期が進角しているようです。
駆動系がフルノーマルだと65km/h位しか出ないのではないでしょうか。
デジタルCDIでトルクと回転のレスポンスを稼ぎ、駆動系で最高速を補うという方向性もあります。
しかしそのような場合は熱ダレを回避する方法も行わなければなりませんね。
プラグの突き出し量でも点火時期は変わってきますので・・・
CDIについては以上です。これは好みによるものが大きいと思いますね。
では次にプラグです。
私は基本的に「B○EGV」を使用しています。
しかし、ただでさえ上の回りにくいエンジンですので、あまり圧縮比を上げることはお勧めできません。
なお、最大のデメリットとして「プラグ点火部が燃焼室に飛び出す事により、点火時期が速くなる(進んでしまう)」事にもなってしまいます。
(これを解決するには、「B○EGP」や「R7376」等の電極がフラットな物を使うと良いでしょう)
デジタルCDIを併用した場合等は高回転時にかなり進角してしまいます。
補足ですが、私はB8EGV&ワッシャー4枚+デイトナデジタルCDIというセッティングで、エンジンストップを経験した事があります・・・
さて、DioのエンジンはJOGと違い、各部にゴム製のOリングが多用されていますね。
この3点はJOGにはありません。
すなわち、ここのOリングがヘタった場合、一次圧縮漏れを引き起こしてしまうという事です。
これではエンジンパワーが出ませんね。
ここのパーツを交換した場合、極端な例では
キックがパーツ交換前より重くなる
という事もありました。
一次圧縮比が上がった(適正値に戻った)事により、二次圧縮比も向上したという事ですね。
一次圧縮比を保つ為にはOリング以外にリードバルブ、リードブロック、そしてオイルシールが重要です。
目で見てクランクケース内から混合気が漏れているようであれば交換です。
さて、そのオイルシールですが、クランクケースに挿入する場合にはメーカー指定の深さまで入れなくてはいけません。
※この方法はレースによってはレギュレーションに抵触するかもしれませんのでご了承下さい。
しかし、オイルシールは時間と共に「徐々に抜けてくる」(位置がズレる)物ですので、少々深く入れておいた方が安全だと私は思います。
少し打ち込まれているのが分かるでしょうか?
(画像をクリックすると拡大します。)
「スピード」を出すには駆動系のセッティングが重要ですが、駆動系をいじる前にエンジンのパワーを引き出さないとスピードは出せません。
「基本的なFNマシン作りのコツ」のページでも述べましたが、根本的な所がメンテナンスされていないと速いエンジンを作ることは難しいと思います。
私は、エンジン周りに関しては「気にしすぎ」位のメンテナンスで丁度良いと思いますので・・・
※中古というのは、幅が約0.5mm減る位使った物です。
※ベルトが馴染んでくると少し長さが縮み、それ以降の寸法の変化がほとんど無くなります。
私の経験上、一番バランスが良いのは「23100-GR1-753:長さ663mm位 幅17.5mm位」の物ですね。
次はファイナルギヤです。
始めに流用可能な車両の「一時減速ギヤ」の減速比を紹介します。(二次減速ギヤは全て共通の減速比です)
二次減速側のギヤは全車13-45丁で減速比は「3.461」になっています。
ベースエンジンが94〜96ライブDio-ZXなら、G´の「40丁カウンターギヤ」を入れる事によりハイギア化が可能です。
97〜モデルに関しては、「カウンターシャフト」を94〜96またはG´の物を使用する事によりボルトオン装着が可能になります。
※「ギヤーCOMP・ファイナル」(リヤホイールが付く45丁シャフト)は、G´の物を使うとホイールが左に寄ってしまいクランクケースとリヤホイールが干渉します。
出来ればギヤBOXのカバーもベアリング入りの96以前の物にすれば良いでしょう。
補足ですが、スタンダードモデルやSRでも「13丁シャフト・ドライブ&40丁カウンターギヤ」を入れる事により、かなりスピードの改善が見られます。
最後に品番です。
G´用「40丁カウンターギヤ」:23422-GZO-000
94〜96用「13丁カウンターシャフト」:23421-GWO-000 (97以降モデルに40丁を入れる為に必要)
次にクラッチ関係です。
クラッチシューは純正品でも軽い物は存在します。
しかしむやみにクラッチミート回転のみを上げても、改造車のようにはレスポンスは上がりません。
現時点ではノーマルで調子の良い物を使っています。
しかし、もし純正強化センタースプリングがあったとしても、Dioシーブのトルクカムの溝形状は二段階に折れているタイプの為、デメリットしかありません。
いくらシーブ後半の溝が90度の直線でも、センタースプリングが強いと「ローギーヤード状態のままエンジン回転のみ上昇する」という事です。
(改造車とは反対の方向性ですが、FNマシンと言う物はそこまでしても回転を無駄には出来ないのです)
という事ですので、ノーマルの新品で1回練習に使った物をレースに使っています。(新品だと硬すぎるので)
ただ、ジョルノクレアのトルクカムを使用する場合なら、変速後半の回転を食われる現象をカバーする為、弱めのセンタースプリングでも良いかもしれませんね。
DioはJOGに比べて「プーリー&シーブの変速幅」が狭い&効率が悪いので、ベルト&ギヤで少しでもスピードを稼ぐ
駆動系に関しては日々試行錯誤しておりますので、新たな情報があれば改めて紹介したいと思います。
ビス止め+ステップ形状に合わせて板金しました。
そしてグリップしすぎない様に山を叩いて調整しています。
自分のコントロールしやすいようにする
という事ですね。
「操りにくい」マシンでは、スムーズなライディングは難しいと私は思います。
ゴムパッキンを接着します。
長くなりましたが、これで一通りの「Dioのツボ」を解説しました。
エンジンはもともとの特性を活かしてトルクをスピードに変換するか・・・
足廻りは「初期旋回」を追及すると「安定性」が失われますね・・・
なかなか難しい所です。
しかしそんな事を悩むのもレースの楽しみの一つだと私は思いますので。
Dio乗りの方々に参考にして頂ければ幸いです。
高速コースの猪名川サーキット仕様です。
とにかく最高速に特化したSETでした。
ワッシャー4枚を基準として入れています。
Dioの場合、ピストントップとの関係であまり圧縮比を上げられません。
圧縮比を上げると「トルク」が出る反面、最高回転数が上がらないといった弊害があります。
これでは、FNマシン最大の難点「熱ダレ」がひどくなってしまいます。
この辺りは走るステージに合わせてのセッティングが必要ですね。
これでエンジンセッティングの解説は終了です。
次に、エンジンメンテのツボを少し紹介したいと思います。
エンジンパワーを常に最良の状態に保たないと、セッティングはなかなか決まらない物ですので。
しかもオイルポンプ部分は「一次圧縮比」に関わってくる重要ポイントです。
ここのOリングは、オイルポンプ自体が少し動く設計になっているため、かなヘタりやすいのです。
キャブ&マニのOリング、リードバルブ&ガスケットと共にマメな交換をお勧めします。
そして、クランクシャフトの「オイルシール」ですが、このパーツも「一次圧縮比」を左右するかなり重要な物です。
が、実はメーカー規定値よりも「深く」挿入する事が可能です。
車両に対しての具体的な数値は書けませんが、ほんの少しですが「一次圧縮比」を高めることが出来ます。
見づらくて申し訳ありませんが、左側のオイルシールです
さて、これでエンジン編は終了です。
23100-GAG-751 新品:長さ671mm 幅18.1mm 23100-GAG-751 中古:長さ668mm 幅17.6mm 23100-GR1-753 新品:長さ666mm 幅18.1mm 23100-GR1-753 中古:長さ662mm 幅17.6mm
これだと、0発進〜最高速までバランス良く加速してくれます。
この太さでこれ以上短いベルトだと、クランクシャフトが引っ張られている様な感じを受けました。
スーパー/Dio/SR 12-42丁 減速比 3.500 94〜98ライブDio&SR 12-42丁 減速比 3.500 92〜93スーパーDio-ZX 13-41丁 減速比 3.154 94〜98ライブDio-ZX 13-41丁 減速比 3.154 G´ 13-40丁 減速比 3.076
ギヤの歯の形状がDioとG´では少し異なるので、出来れば「13丁シャフト・ドライブ」「40丁カウンター・ギヤ」共にG´の物にした方が、ギヤ鳴りが少なくなります。
(この場合は94〜96モデルの「ギヤーCOMP・ファイナル」が必要です)
ハイギヤード化する事により、Dio特有の変速幅の狭さが改善されます。
ヘタなハイスピードプーリーを入れるよりははるかに走ります。
ライブDio/SR、93スーパーDio-ZX用の「22535-GAH-307」はライブDio-ZX用より軽いです。クラッチスプリングにも互換性があります。
92スーパーDioのクラッチシューはかなり軽いのですが、残念ながらクラッチスプリングに互換性がありません。
センタースプリングは、私の知る限りでは有用に使えそうな物がありません。
ヤマハと違いホンダ50ccスクーターはほぼ共通の様です。
ただでさえシーブ側の変速が鈍い所に、さらに圧力をかけて変速を鈍らせることになってしまいます。
(変速が進まない=加速してないと言う事です)
少なくともノーマル程度のパワーではデメリットしかありませんね。
以上で駆動系の解説を終わります。
まとめますと、
大根おろし「改」です(笑
足廻りに関しては以上です。
最大のツボは
この様に剥がれてはダメですね。
たったこれだけですが、作業性はかなり向上します。
逆に回転数を稼ぐ方向性にするのか・・・
最後に、2001年度まるち杯全国大会時の仕様を公開しておきます。
レスポンスは無いに等しかったです・・・