さてさて今回は、表題通りの「ジョルノクレア初期型のセンタースプリング」を使ったセット方法をご紹介致しましょう。
何故、クレアセンターなのかと言いますと…まずはパーツ品番表にて各車種のセンタースプリングの違いを把握して頂きたいです。
まずこのクレアセンター、ノーマル品に比べ、かなり短いですよね。
この短いセンター、もちろんバネとしての張力はノーマルに比べて弱く、そのまま取り付けたのでは変速回転&ミート回転共に下がってしまい、何の役にも立ちませんが(笑
まず大前提ですが、このクレアセンター作戦、定番のFNセッティングであるジョルノクレア初期型トルクカムを使用している事が必要です。
このクレアカム、Dio系特有の「後半90°溝」ではなく、変速後半は約60°と、回転が落ちにくい形状ですよね。
通常ですと、他の駆動系はフルノーマルの仕様でも、ここだけはクレアカムを使っておられる方が大多数かと思われます。
コーナー立ち上がりでトルクカムが閉じ側に戻る動きを行う場合、90°トルクカムに比べてトルクカムの戻りが効率良く動き、回転を上げつつ立ち上がれる、というメリットですね。
という大前提なのですが、ここからは駆動系の仕組みをしっかり理解しておられる方で無いと少々難しいかと思いますが…
一応レーサーの方に読んで頂く事が大前提ですので、いつも通り細かな説明は省かせて頂きますね。
さてこのクレアカム仕様、アクセル全開加速時の40km/h〜50km/h程度での回転の落ち込みも和らげられますね。
ノーマルで溝角度が45°→90°になる瞬間には、トルクカムピンが90°溝に一気に入り込みセンタースプリングの力だけでは変速を支えきれていないんです。
なので一気にドリブン側が開いてしまい、ギヤを2段上げた様な現象が起きてしまうワケです。
そして減速側・・・といいますか、一度アクセルを戻して回転を落とし、再度アクセルを開けた「再加速」の瞬間にも、ノーマル90°溝だといまいちキックダウンが弱いですね?
これは90°溝の一番奥にトルクカムピンが入っているのに、それが戻るのが溝形状により遅れるワケです。
ちなみにここで大事な事を一つ。
Dio系のセンタースプリングってかなり硬いですよね?
コレ、上でご説明しました「90°の溝部分に対してバランスの良い硬さ」なんです。
ですので、90°溝に入ってしまっているトルクカムピンを、再加速状態の時に思い切り押し戻せる、という意味合いもあるんです。
もちろん加速側でも、変速が90°溝に到達してからのトルクカムの動きを抑制している、という事も合わせて行っていますが…
…ここまで書くと、カンの良い方は今回の趣旨がもうお分かりかもしれませんが(汗
そうです。クレアカムを使った場合、センタースプリングがノーマルだと、
後半60°溝に対してはセンタースプリングが硬すぎる
と言う事なんですね。
これ、トルクカムをクレアのモノや…ストリートチューンなら社外の直線溝の物に交換した場合、変速の落ち込みは無くなおかつ回転も下がらないですよね?
しかし、これが罠なんです。
実際、「体で体感出来る加速スピード」は、間違い無くノーマルトルクカムより劣っていますよ?
これがパワーの無いFNマシンでは、致命的な程にスピードを殺されて回転を「喰われて」しまっているんです。
特にクレアカム溝の効果が一番発揮される50km/h程度のスピード域だと、サーキットでの一般的なコーナー立ち上がりのスピードになりますので…
ここの速度域で「回転」が上がっていると、「ガンガン回って前に進んでいる」様な気がするんですよ…
しかし実際、体感やスピードメーターでじっくり「加速度」を感じ取ると、思った程「前には進んでいない」ハズですので。
私が柔らかいヘタリまくりのセンタースプリングを好んでいたのはこの辺にツボがあるんですよ?
あ、もちろんWRは8.5g&7.5g程度の重さでの話ですけど…
私は高速サーキットでのJOGとの最高速勝負、を避けては通れない環境にいるので、WRをとにかく重めにし、「回転慣性」での最高速UPが必要なんです(泣
コレ、実際は同一の駆動系構成でWRだけ重くしても、変速回転が下がった上に最高速度までの到達時間は遅くなる場合もありますが、それを犠牲にしてまでも、わずかなWR重量の違いによる「回転慣性での最高速」が欲しかったんですよ…
…そんなもん体感できるのかこの阿呆、とかいうツッコミは無しの方向性でお願いしますね。そこは私を信じて(以下略
ではこの辺でいつもの下手絵を描きましょうか(笑
文字ばっかではさすがに分かりにくいですからね。
※:図中では後半溝角度が50°と表記していますが、「60°」の間違いですのでよろしくです(汗
おおむねこの様な感じですね。
要は、Dioのセンタースプリング&FNパワーだと、クレアカムの後半溝角度とは非常にバランスが悪い、と言う事です。
いくらなんでもノーマルの90°と比べれば…60°でも角度寝すぎですね。
2段階変速の切り替わりで回転が落ち込まないのは良いんですが、上がりすぎってコトです(笑
あ、ちなみに左図の「最小変速状態」ですが、実際にベルトを入れるとこんな端っこからトルクカム溝をフルに使えるワケではありませんのでよろしくです(汗
そしてここで勘違いしないで頂きたいのが、「前半溝角度」との兼ね合いです。
「前半は45°溝なので後半溝より角度がきつく、変速前半だと後半溝より余計に回転が喰われているのでは」と思われる方もいらっしゃると思いますが…
そこは前述した通り、ノーマルのセンタースプリングの力が前半溝角度の変速抑制にさほど極端には影響していない、という「バランス」の問題なのです。
(とはいっても、極端にセンタースプリングを強くした場合は前半溝角度部分にも影響はありますが、そんな場合はいくらなんでも強化しすぎなので問題外です)
ちなみに、社外品等で45°を下回るきつい角度(40°とか)の溝角度だと、さらにセンタースプリングの力は加速側の変速には影響しにくくなってきます。
こういった場合、減速側変速でもセンタースプリングの力が有効に活かされず、キックダウンは鈍くなりますよ。
と言いますか、45°を下回る溝角度だとトルクカムとして成り立ちません(笑
すごく前置きが長くなりましたが…ここからは実際のセッティング方法などを。
まず、上記の理由でクレアカム+クレアセンターを使用すると仮定します。
もちろん他の駆動系は一切ノーマルにしておきましょう。
以下、セッティングパーツを明記します。
プーリー&ランプ&ボス:ノーマル
ベルト:ノーマルGAG-751(671×18.0)
クレアカム&クレアセンター+Gダッシュドリブン
クラッチシュー&スプリング:ノーマル
WR:8.5g&7.5g
以上の様な構成だと…単純にセンターだけが弱いので、ミートは落ち込み変速回転も下がってしまいます…
ここで基準としまして、私のFN-ライブDioZXの変速回数は、上記の仕様でセンターがノーマルだと
クラッチミート:4000rpm
変速回転数:6200rpm
MAX:7200rpm
といった所です。
Dioはパワーバンドが約6000〜7000rpmですので、まずパワーバンド下限回転より変速を行い、回転を全く無駄にしないセットとなっています。
(ちなみにGダッシュベルトですとハイギヤード化され回転数は全体的にさらに低いです)
ここでクレアセンターを装着しますが、変速回転数の低下を防ぐ為、WRはかなり軽量化を図らなくてはいけません。
そして、このセットのもう一つのメリットとして、JOGの様に回転を上げつつ走るという…
Dioらしからぬセットを行う、といった狙いもあるんですよ。
一般的にFN-JOGの回転数はDioよりも約500回転は上なので、JOGばりに回してやるという新しい方向性です。
ですので…クレアセンターを使用するとだいだい下記の様な変速回転数になります↓
WR:7.5g&6.1g
クラッチミート:3500rpm
変速回転数:7100rpm
MAX:7600rpm
WR:7.5g&6.5g
クラッチミート:3500rpm
変速回転数:7000rpm
MAX:7600rpm
とにかく7000rpm近辺で、ガンガン回して変速させてやると、ノーマルセンター&WRと同じ位の「前に進む感覚」で走れますね。
これだと…「前に進む感覚」はクレアセンター併用により後半溝部分でもかなりUPしますし、なおかつ回転も上げつつ走行出来ます。
結果的に、レスポンスも稼げる上にタレにも強く、オーバーレブが伸ばせるエンジンであれば今までに無い位の「回転数での最高速の伸び」も稼げますよ。
しかし私、Dioのパワーバンドは7000rpmを超えない所が一番おいしいと思っていたのですが…
実際は、パワーバンド上限近い回転数での変速でも充分に走りますし、ちゃんとエンジンのパワーバンドを「上にずらせる」セッティングを行えば問題はありませんでした。
(ノーマルセンターだと回転数ばかり上げてもギャンギャン回るだけで前には進まないのでご注意をば)
そして次に…上記のセットだと明らかにクラッチミート回転が落ちてしまいますよね?
良い機会なので、何故にセンターが弱いとミートが低くなるのか、をかいつまんでご説明しておきます。
まず…クラッチミートとは「クラッチシューがアウターに完全密着するエンジン回転数」ですが…
正確にはシューが完全密着するのが「クラッチミート」で、リヤタイヤが動き出すのは「クラッチイン」です。
しかし一般的にはリヤタイヤが動き出す回転数が「クラッチミート」なので、ここは便宜上「クラッチミート=リヤタイヤが動き出す回転数」で行きましょう。
ノーマル車だとそこまでクラッチインとミートに多大な差がある訳ではありませんし、分かりやすさの為にという事でひとつ(汗
※クラッチミート=クラッチインの表記はこのコンテンツ内のみです。
ではまず、フルノーマルでのミート回転数を「4000rpm」としましょう。
そこでセンターを柔らかくすると…ミートが「3500rpm」まで落ちたとしますね。
これは…センターが柔らかい事により、「ドリブンがハイギヤードになるタイミングが早まっている」からなんです。
センターが弱くなる(変速回転数だけで言えばWRを軽くしたと同意)と、プーリー側の変速が始まると、ドリブン側もそれにつられて早いタイミングで変速を開始します。
すると…リヤ側ドリブンはノーマルより変速が早く始まり、変速比そのものは「エンジン回転数が同じでも」ハイギヤードになりますよね?
クラッチシューはドリブンにくっついて回転する物ですから、ドリブンの減速比が大きくなるとその分クラッチ自体の回転数も上がるので…
結果的に、クラッチシューがクラッチアウターにくっつくタイミングが早くなってしまう、という事です。
要は、「実際のエンジンのパワーバンドに入る前に、ドリブンが高速回転してしまいクラッチミートが始まってしまう」と言う事ですね。
このクレアセンターを使用した場合、WRも軽くしなければならないので幾分かは変速回転数を上げる事が出来ますが、物理的にセンターが柔らかいのはそれ以上に「ドリブンを開かせてミートを落とす」原因となりえます…
これは好みにもよるでしょうが、私は重量480gの「22535-GAH-307」に、ライブのクラッチスプリングを入れて使っています。
さすがにこれだといくらなんでもミートは高すぎでは無いかと思われるかもしれませんが…WR重量やクレアセンターとの相乗効果で、これでもある程度まともな0発進が稼げる程度にしかなりえません(泣
実際のミート回転数は5000rpmを軽く上回っていますが、センターが柔らかい事による変速のロスは0発進にはかなり影響がありますね。
後は好みにもよりますが、この「回転を上げて走らせる」セッティング、逆手にとってToday系の「大径プーリー」も有効に併用出来ます。
単体で使用するとどうしてもレスポンスの落ちる事もあるTodayプーリーですが、このセットならあまりデメリットは感じませんよ?
ノーマル比で直径2mm程変速比を稼げるプーリーですから、このセットでは使わない手は無いと私は思っていたりします。
では、ここで現状での私のセッティングなどを公開しておきましょう。
現在はおおむねこういった感じとなっています。
実はコレ、2005年度の全国大会、猪名川で走った仕様ですよ。
このセットだと…少なくともビギナーの真ん中辺りのLVだと、一瞬の立ち上がり加速を除いては、JOG勢とまともに渡り合う事が出来ました。
もちろんレスポンスも良く、常に回転が上がっているのでタレにもかなり強く、非常に「戦いやすい」セットですね。
最高速においても、回転が上がっている分、JOGのスリップに付けば前車を確実に上回る最高速を出せる事もありましたよ?
…今までのGR1ベルト仕様、「何が何でも最高速のみ狙い」セットだと…ほんの少しのミスすら許されないので、間違い無くこちらの方がレースディスタンス的には良い方向性ですね。
なお、「変速回転を今までより上げて走れる」という事は、DioにとってはJOGに対しかなりのアドバンテージを築く事が出来ます。
詳しくは明かせないのですが、エンジンの出力や構成がJOGとDioで全く同じだと仮定した場合…
駆動系の構成そのものでは、Dioに比べてJOGの方が「タレやすいポイント」がいくつかある事は間違いないと私は分析しています。
設計&寸法上の問題なので、駆動系のチューニングや加工が出来ないFNマシンではこれはどうしようも無い事なのですが、それをふまえるとほとんどタレの無いDio、というマシンはなかなかのメリットが出ますよ?
…元々FN-JOGはその辺りも考慮し、結構な高回転変速気味で走らせるのが定番となっていますが(笑
ではでは…今回は通常のDioのセッティングの方向性とは180度方向性を変えたセッティング方向でしたが・・・
実は私、以前からこのクレアカムの「中速域でうなって前に進まない」と言うのは体感していたんですが。
DJ-1等のセンタースプリングを使ってみたのですが、イマイチしっくり来なかったので使えないセットだと判断していたんですね…
で、そこに…大西塾の安田選手より打電を頂きまして。
色々とDioについてお話する内に、今回のセットのクレア用センタースプリングの可能性を伺ったんですよね。
そして私も再度色々と煮詰めてみると…絶対的なスピードが爆発的にUPしたわけではありませんが、少なくとも「使いやすい」セットとあいなったワケです。
やはり私だけの固定観念だと、「Dioは回してもパワーは出せない」と思い込んでいたので。
違った視点からアドバイスを頂くと言う事はとても大事ですね。レースに限らずとても為になりますよ。
ですのでこのセッティング方法、効果が上がったのは安田教官殿のおかげと言っても過言ではありません(汗
全国大会レポートのところでも書きましたが、現在では色々とDioのセットも一段落、といった所ですので、このセットの公開を快く許可して頂きました。
安田教官殿、どうもありがとうございました〜
と、実はこんな裏話があった今回のセット方法です。
これはGR1ベルト仕様に比べるとかなり燃費も悪くガス喰いまくりですが(笑
後、タイムはともかくタコメーターは必須ですし、個人的にはスピードメーターも使ってセッティングされる事をおすすめしますよ。
「体感」が騙されている場合って意外と良くあるんですよね。この辺りはレースをやってる方ならご存知かと思いますが…
FNマシンの様な無茶苦茶にシビアな物は…体感だけでは無く、出来る限りの情報を得つつ、色々と考えなければならないんですよ。
そして最後にひとつ。
このセット…いくら回転を上げて走れるとはいえ、7000rpm付近のパワーを出せる様に、CDIやキャブでセッティングしないと思う様には走りません。
もちろん体重差やエンジンの個体差によってもセッティングは変化する物ですので、そこの所はご了承下さいませ。
ではでは…全国のDio乗りの方々がJOGに負けない事を祈りつつ…お役に立てて頂けると幸いです。