FN仕様Dio 銀&金フォーク比較と油面データ



さて今回は、足廻りのキモであるフロントフォークについて少々ご紹介したいと思います。

基本的にライブDioですと、


●95年後期型〜96年までのHD-SUS 「銀フォーク」

●97年型〜最終型までの2ピースアウター 「金フォーク」


の2種類が使用出来ますね。

…ちなみに98年以降の限定車だと黒い2ピースアウターの物もありますが中身は金と同じなので割愛します。


※なお、95年前期型銀フォークですと、フォークをステムに取り付けるボルトの「切り欠き」が他の物より下にあり、

ボルトオンで装着出来ない、といった扱いとさせて頂きますね。

(レギュレーションを曲解して95前期型インナーに95後期型ステムと言うのもありですが…)



と、そんなマニアックな話は置いときまして(笑

簡単にこの2種類のフロントフォークの相違点をご紹介しましょう。


ではまず一番大きな違いですが…これは外見が違います(爆

…いやこれは好みの問題なので別にどちらを使ってもかまいませんよ?

重量差や剛性、強度の差はあるのかもしれませんが私そこまで体感出来ませんので。



で、一般的にストリートでは金フォークの方が良いと言われているんですが、正直私金フォークの特性って嫌いなんです。

それがこの2種類のフォークの大きな相違点、特性を決定付ける所の差なのですが。

それで結局何が違うのかと言いますとですね…



シートパイプの穴「オリフィス」が違う



んですよねコレ…


ぶっちゃけた話、スプリングもインナーチューブもリバウンドスプリングもオイルシールも…

銀フォークも金フォークも全く同じパーツが使われているんですよ。

なので実際はシートパイプの穴のみが違うワケです。

※品番的にはシートパイプリングも違うのですが品番統合の模様なので割愛します。


もちろんシートパイプの穴が違う、と言う事はテレスコピックオイルダンパーとしては特性激変の元ですけど(笑

具体的にこんな感じですね↓


シートパイプ比較


と、これだけ見ればオイルダンパーの仕組みを理解されている方はだいたいの特性の違いが掴めると思いますが。

穴位置の違いは置いておきましても、明らかに伸び側のオリフィス穴が違うんですね。

違いはわずかに0.5mmですが、1個しかないオリフィス穴で0.5mmも径が違うとかなり差が出ます。

すなわち、穴が小さいとフルストローク状態からの伸び側の減衰力が大きくなり、「じわっと伸びる」傾向になりますね。

銀フォークに比べて金フォークは伸び側の減衰力が強め、と言う事です。


圧側は…実は厚側のオリフィスって6φ穴が2個でどちらも同じなのですが。

通常は金フォークの方が硬く感じますよね?

これは圧側オリフィス位置の違いにより、金フォークの方がフルボトム寸前の位置では「非常に沈みにくい」んですよ。

そして私の分析によりますと、インナーチューブがフルボトムした状態だと、金フォークの圧側オリフィス穴位置をインナーチューブが「通り過ぎた後全く沈んでいない」のでは…と思っています。

上記の図で約3mm程の圧側オリフィス穴の位置に差がありますが、インナーチューブの「底」が圧側オリフィスを通り過ぎてしまうと、それより下側に残ったオイルはもう逃げ場が無くなり…

オイルロック状態になっていると推測しています。

(銀フォークだと圧側オリフィス穴をインナーの底が通り過ぎた所がちょうど底付き点かと思いますので)


もちろん長〜いブレーキングで限界までストロークを行えばその3mm分も「有効」ストロークとして使い切れるのかもしれませんが。

少なくとも私の経験では、銀フォークと金フォークをフルノーマル状態で使い分けても、明らかに金フォークの方がわずかにストロークを余らせていましたので…

あ、ちなみにスクーターのフォークのシートパイプリングやインナーチューブとシートパイプ軸のオイルの密封性なんか知れてますので、他の部分の構造がそのまま特性変化に100%伝わるという保障は無いのですが、実験結果で出てますのでその辺りは頭を柔らかくして下さいませ(汗


まとめますと、


銀フォークよりも金フォークの方が沈みにくく伸びにくい特性


と言う事になります。



と、これだけ見るといかにも「オイルダンパー」らしい特性で金フォークの方が有効性があるかと思われるかと思います。

ですが、少なくともFNといったマシンの仕様としては、


硬すぎる上に動きも渋くて使い物にならないLV


だと私は思いますよ?


…基本的にFN仕様の場合、タイヤサイズはF=3.00、R=3.50で前下がりになっている上、リヤサスも320mm以上の物を使いますね?

なのでフルノーマル車体のアライメントとは別次元のフロントヘビーになる荷重バランスです。

ですがそんな状態の上、サーキットで減速率の高いハードブレーキングを行ってもまだまだ金フォークは「硬い」んですよ。

なかなか沈み込まない上伸びも遅いので結果的に動きが悪く、しかも圧側のストロークはわずかに銀フォークより短いので…

減衰力は必要であれど、それよりもある程度フレキシブルな動きを求められるサーキット走行には全く持って適していません。

この辺りが私が金フォークそのものの特性が嫌いな理由でもありますね。

そして何よりも、初期旋回に非常に優れるJOGの回頭性に近付けませんので(笑



ではここからは具体的なフォークのセッティング等をご紹介致しましょう。


FNクラスのレギュレーションではシートパイプの改造は全く認められていないので、シートパイプそのものは銀フォークの物を使います。

もちろんスプリングの変更や改造、スペーサー等の追加もNGですので…

なので前述した通り、アウター側は好みでどちらを使っても良いかと思いますが、オリフィス等がいじれない以上、シートパイプは絶対に銀フォーク用が良いでしょう。


そうすると変更出来る部分は「油面」のみとなりますね。

これはもちろんフォークオイルの量の管理ですが、間違っても「油量」で管理してはいけませんよ??

ただでさえ絶対的なオイル量が少なく、オイルが収まる部分も狭いので、油量で管理してしまうと左右で硬さが違う、と言うポカをやらかす可能性はとても大きいので…

ライブのフォークは左右均等な作りなので、左右均等な油面でセットするのが一番無難かと私は思っていますよ。


ではここで、具体的な油面のデータをどうぞ。


オイル量68cc→油面74〜75mm

オイル量65cc→油面80〜81mm

オイル量60cc→油面90〜91mm


私の経験ですがおおむねこの様な感じですね。

もちろん誤差等はあるかと思いますが、まずノーマルの68ccといった規定量を入れてみて、その油面を計測しつつ色々なデータを取るのが良いでしょう。


ちなみに私が好むのは、約85〜90mm辺りの油面ですね。

私のDioはさほどリヤの車高は高くする傾向にはありませんが(315〜325mm程度)、それでもノーマルよりはいくぶん油面を下げるのが好きなんです。

そして使用するフォークオイルはホワイトパワーの#10です。

これは全体的に熱ダレに強い…様な気がするので(笑

とまあ、それは置いときましても、番手のワリにしなやかで動きの良いストロークが得られるので…

私は基本的にこのホワイトパワー#10のオイルを使用していますよ。


あ、もちろん各社フォークオイルは表示されている番手が同じでも、実際の中身は番手換算では全く比べられないのは皆さんご存知かと思われますが。

ホワイトパワー#10を他社の番手にあてはめますと…SHOWAで#8、ヤマハで#5、カヤバで#3(笑)といった感じになりますかね〜

…実際には存在しない番手になってしまいますが、基本的に非常に柔らかい物だとお考え頂きたいですね>WP#10

(カヤバみたいな硬い#10を入れるのは絶対にお奨め出来ませんけれど…)


特にDioのフォーク、と言いますか絶対的な油量の少ないスクーターのフロントフォークの場合、ほんの少しの油面の差でかなりの差が出る物なんです。

なのであまりにも硬いオイルを使うのは絶対的なストロークを殺してしまうだけで何のメリットもありません。

よく「フルボトムして底ヅキするまでの余力を出したい」と言われるフォークオイル(圧側)の「強化」ですが…

あまりにオイルが硬すぎる為にストローク量そのものを数mmでも殺してしまったのではそれこそ本末転倒ですので。

リヤサスの記述にも書いたと思いますが、


路面からの入力&ライダーからの入力に対して

フレキシブルに動かないサスペンションなど全く意味が無い


と言う事ですね。

一見足廻りがしっかりした様に見える「ガチガチセッティング」はタイヤの性能に頼ってるだけですので(笑


とまあ、この手法はストリートの方も騙されたと思って一度お試し頂きたく思います。

サーキットを走るからといって、「ノーマルより強化」なんて事ばかりでは無いのですよ〜

一般的に柔らかいと言われる銀フォークでも、ノーマル状態でまだ「曲がらない」といった傾向なんですねコレが。

あ、もちろん100km/hからのブレーキングを多用するとなってくればまた話は別ですよ?(笑



そして最後に。

こういう油面調整という物は、荷重に対するストロークスピードをコントロールする非常に大事な所です。

油面調整等の重要さは上記に記した通りですが、しっかりしたオイル管理を行う為にも、


オイル量&番手を大幅に変更する時には

「シートパイプリング」を新品に交換しましょう(断・言


…正直、このシートパイプリングが劣化しきったままフォークオイルを調整しても、まずまともな結果にはなりません。

上の方でも書きましたが、いくらDioのフォークが高性能とはいえ、所詮スクーターのフォークですので…

オイル通路のピストンリングの役目を行うシートパイプリングが劣化していると、全く持って減衰力など生まれませんよ?


よく「オイルが劣化してフォークが柔らかくなったからオイル変えよう」と言うパターンですが。

それで純正番手に交換してみたら、「思ったほど硬くならなかったので番手上げちまおう&油量増やそう」ってなってる人、結構居ます。

これでは劣化したシートパイプのおかげで純正新品のダンピング能力に戻らないだけでなく、さらにオイルが硬くなってしまっているので…

意味の無いガチガチフォークの出来上がりにしかなりえませんので。

少なくとも私は、フロントフォークをO/Hするのであれば、オイルシール換える位ならシートパイプリング換えろって思ってますよ?

(ちなみにシートパイプリング交換1発目は結構バリが出てすぐオイル汚れますのでその後のメンテも一考しましょう)


なおちょっと補足ですが、ホンダの場合ですと純正指定がSHOWAの#10ですよね。

しかしコレ、規定量を入れても新品状態より明らかに硬くなります(汗

これもいつもの妄想ですが…メーカーさんはフォークO/H時にシートパイプリングを交換する事を想定しておらず、

それゆえ減衰力の回復しない部分をオイルの硬さで誤魔化すべし、として指定している気もするのですよね(笑

実際はSHOWAオイル使用だともう1ランク柔らかくしないとノーマルと同等の「硬さ」にはなりえませんので…



と、フォークについてのセッティングは以上となります。

…別段大した事ではありませんが、一応参考までにどうぞ(笑

少なくともDioは規制前JOGと違い、フォークオイルでのセッティングの幅は結構ありますので…

ただでさえ足廻りにしなやかさが足りないDioなので、色々と試してみるのも面白いと思いますよ

あ、もちろんガチガチなのは良くありませんよ?「曲がる」事を第一にと言う事をお忘れ無き用に…



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