FN仕様Dio キャビーナCDIについての暴露



さてさて、これを書いている2011年現在だとFNと言いますか周回レース自体がそれなりに

下火になっちゃってますが、メカニカルなお勉強とそれとは無関係なので今回も多少のネタを

披露させて頂きますね。


で…タイトルからして不穏と言いますかなんと言いますか(笑

これ、別にFN車に限らない事なので「スクーター改造」に入れようかどうか迷ったのですが、

おそらく閲覧される方が少ないであろうコチラに入れておくと色々と問題も出なさそうなので

コッチに入れておこうという狙いがあったりしますが、なにはともあれ、今回はそれなりに定番である


「30410-GBB-000」 通称:キャビーナCDI


について少々ネタばらしをしたいと思います。


…最初に言っておきますが、これはあえて今まで「隠してた」ので、もう今の時代であれば時効かなと

いう事でよろしくです(汗



では、そのキャビーナCDIなんですが。

これ、純正品ではありますがCDIそのものに回転数リミッターが無く、一種のリミッターカットとして

主にライブDio系において流用が行われているのは皆さんご存知かと思います。


私もこのCDIについては以前から少しだけ質問板等で言及していたりはしますが…

ある程度、「自分が不利にならない為」に隠し通していた事の一つ、という事で。

もちろんこれはFN仕様に限りませんが、ある意味の落とし穴である、と言う事でもあったりします。


で、そのキャビーナCDI、これは当然のごとくリミッターが無いので、ホンダ純正CDIでのリミッターである

ある一定の回転数まで回ると点火がカットされるというシステムが存在しません。

純正CDIというのはフルノーマル車にてメーター読み60km/h程度まで来ると点火がカットされてしまい

ブブボボボボ〜っと失火してしまいますが、キャビーナのCDIにはこれが無く、私の確認している限りでは

12000rpm程度までは十分に追従しています。


その点火カットの行われる回転数は約8000rpmに設定されているのですが、これは駆動系構成が

ライブDio-ZXとほとんど同じであるスーパーDioZXやGダッシュでも全く同等の8000rpm程度で点火カットに

なってたりしますよ。


そしてそのキャビーナのCDIを配線加工してフルノーマルのライブDioZXにくっつけると、当然ですがリミッターは

無いので8000rpmオーバーでエンジンの限界まで回りそれなりの速度を出せますが、実はメリットはこれだけでは

無いんですよ。

もちろんその件も後述しますが、その前にちょっとしたネタをば。



さて、この流用方法、元ネタとしてはモトチャンプの一コーナーで紹介されていたものでして、

96年頃だったかと思いますが、このリミッターカットネタが出てたんですよ。

…実はこれを思い出したのは今月のモトチャンプ(2011年3月号)に懐かしのネタみたいな感じで載って

いたので、私も元ネタを思い出したという感じなのですが(笑


で、その当時の記事ですと…リミッターが無いのは当然として、それに加え


キャビーナCDIを流用する事により「低中速がトルクフルになる」


という紹介がなされてました。

が、これは実は冷静に読み解くとちとおかしいんですよ。


これ、私の実験ではまずそんな事は体感出来なかったと断言しても良いです。

少なくとも、


ノーマルCDIからキャビーナCDIに変更しても

「低中速」はほとんど変わらない


と言わせて頂きます。


何故に?と思われるかもしれませんが、これって実は単純な話で。

当時のモトチャンプ記事だと、「キャビーナは重いので点火時期がかなり違うらしい」といった

解説になっていますが、これ、実際にはライブDio-ZXのノーマルCDIと点火時期は変わらないんですよ(笑


私、以前に実際に測りましたがライブDio-ZXのノーマルCDIの特性はサービスマニュアル通り


7000rpm位まではBTDC14°


そこから上はBTDC13°で1°遅角、それ以降は変化なし


なんですが。


で、キャビーナCDIだとリミッターが無いのでもっと上まで測れますが

点火時期そのものはライブDio-ZXのノーマルCDIと全く同一の特性

なんですよね。


これなら基本的にキャビーナCDIで本当に力が出た、と言うのであれば点火時期のせいでは無いと

いう証明になりますし、かといってノーマルに比べてそこまで火が強いのか?と言われればそんな事は

ありませんから。

じゃあ何でモトチャンプの実験ではそんなに低中速があるという表現だったのか、となれば…

これはあくまで私の臆測にしか過ぎませんが、



すでに社外CDIを装着済みの車両に対して


キャビーナCDIを装着しなおしての走行テストだった


から「かも」しれませんね。


ただ、当時のモトチャンプで写真で判断する限りは、装着済みキャビーナCDIの横にノーマルCDIを並べた

写真だったので、実験車両のライブDio-ZXには元々「何」がくっついていたのかは分かりません。

あくまで、そういった手順であれば上記の様な「低中速が強くなった」という錯覚が起きるかもいう

勝手な妄想ですが(笑

元々ノーマルCDIがくっついてた可能性もありますけど、それだと体感は明らかにプラシーボ効果ですよ?と(略



そして、それが何故に低中速のUPに繋がるんだ、となれば…

すでに「スクーター改造」のコンテンツ内にある「BTDC点火時期や点火力について」をお読みの方は

お気づきかと思われますが、これもまた「社外品CDIは基本的に点火力が弱い」という、

実にシンプルな回答です。


某…ではなくもうこの際だとぶっちゃけてしまいますが、上記コンテンツの点火時期測定グラフにも表して

いる様に、デイトナのアナログ系とかPOSHのアナログとかだと、正直ノーマルと比較しても全くと言って

良い程に「点火時期の変更」なんて行われていないんですよね。

当然、仮にノーマルエンジンで1°進角遅角したからといって通常は体感なんて出来ないです。


で、その手のブツだとFN仕様というフルノーマルベースではなかなか体感しづらいですが、基本的に

低、中回転域となればあからさまに点火力が弱いんですよ。

「始動しづらくなる場合はプラグギャップを詰めろ」という注意書きがある時点で火がヘボいといった事も

ご説明してきたかと思いますが、そういった物にノーマルのクラッチイン程度の4000rpm時点とかでの点火力が

強烈にあるかと言えばまずありえない、という事で。


かと言って、7000rpm程度での点火力がノーマル、もしくはキャビーナCDI以上にあるのか、と問われれば

私はそれもまずありえない、と分析して経験もしていますので…

当然、チューニングエンジンで10000rpmとかになれば、その差は余計に顕著に出てきますね。

もっと言えば、某社のCDIなんかは結構な値段がする割に10000rpm以上ではとんでもなく不安定な上

同等の品でも点火時期が明らかに異なっていたりという個体差まで大きいというのもあったりします。


一応、このコンテンツは「スクーターレース」として扱っている為に、いつもよりもはっきり言いますが、




点火時期が純正品と同等で良いのであれば


火の弱い事が多い社外品CDIを選ぶ価値が


全くと言って良い程に無い




んですよ。


もっと言えば、ノーマルCDIのリミッターである点火カットは約8000rpmだと記しましたが、これも

FNというカテゴリーであれば、よほどのロングストレートが無い限り、7000rpm近辺の変速を完全に

終わらせ、その後で8000rpmまで速度を伸ばしきるという事自体がほぼ不可能ですよ?


となれば、キャビーナCDIでリミッターすらカットせずとも、純正リミッター付きのノーマルCDIにて

用が足りてしまう、という(笑

実際に、ストレートエンドで変速しきるかしきらないか、という「FN仕様」にて60弱しか出ない狭いコース

とかだと、社外CDIはおろかキャビーナCDIすら要らないとも言えますから。


これが仮に、ノーマルエンジンに対してすら遅すぎるノーマル点火時期のBTDC14°という数値をもっともっと

進角させて使いたい、というのであればデジタル系統のマップを選べる物を使用する事もアリですが、

デジタル系のCDIというのは入力電圧が安定してなおかつキッチリと供給されていなければならないので

上手く使うにはまたコツが必要です。



とまあ、オチとしてはこんな感じなのですが…

これ、キャビーナCDIをお持ちの方であれば、「ノーマルCDIと比べて」みればよく分かりますよ。

逆に、社外品と比べると発進で力が無さげだ、と感じるのであれば、それは「その社外品CDIが極端に

低、中回転域での点火力が弱い」という事の証明にもなります。


下手をすれば、デジタルCDIで数度の進角を行われているのは確実なのに、それでもノーマルに比べて

発進がタルい、とかってのもあったりしますんで。

これは遅すぎるノーマルの点火時期より進角さえしていれば多少のトルクアップはあってしかるべきでは

あるんですが、「進角してるのに体感では力が無い」となれば、もはや何が原因で

あるのかは語るべくもありませんね。



で、ちと余談ですが。

これが仮にFN車で無いのであれば、BTDC14°で7000rpmで1°遅角、といった点火時期そのものは

全域まとめてではありますが簡単に進角させる加工ってありますよね?あれですよアレ(笑

よっぽど突っ込んだチューンをしない限りは別にそれでも良いでしょ、って私は考えていますよ。


・仮に目的が10000rpmでBTDC20°なのであれば進角加工してそれに合わせればそれで良し

・純正CDIであれば点火力が弱い事はまずありえない上に、入力電圧が弱くともある程度強い火を打つ

・リミッターさえ無ければよほど他がおかしくない限りは高回転まで安定した特性を誇る


といったメリットだらけなんです。

むしろ、社外CDIを使った方がデメリットって多い場合もある、という事で…

12000rpmまではギリギリの進角なので13000rpmでは2°遅角させたいなんてセッティングやエンジンの

作り方が必要になってくるのはよほどの事が無い限りありえないですし、ね。


…2011年3月号のモトチャンプの記事には「変換してキャビーナCDIをくっつける位なら、社外製のCDIを

買った方が簡単だし効果もあるよ」って書かれてますが、作業が簡単なのには同意ですが効果に関しては

点火時期を変更させていない社外アナログCDIを買う位ならキャビーナの方が良い、と思いますけれどね(笑


何か余談ばかりが長くなってしまいましたが(汗

最後に本題ですが、暴露というのはこのキャビーナCDI、以上の理由により私はFNマシンにおいては

ある時期からはずーっとこのCDIを使っていた、と言う事なんですよ。


さすがにそこまで極度に激変のある物ではありませんが、少なくとも私の実験では、社外デジタルCDIを使い

ある程度進角させた仕様よりも全てにおいて結果が良かったという事です。


なお、これに関してはもう一つ、高効率ハーネスを自作したりするのは当然の事ですが、私はそれに

加え、「フルバッテリーDC点火」仕様にしていました。

バッテリー電圧のみでCDIを駆動させたDC点火仕様と言う事ですね。

なので、FNマシンなのに「点火用」バッテリーが無くなるとエンジンは動きません(笑


これは実際の充電電圧に左右されるのを嫌い、バッテリー単体からCDIへ電圧を直接入力する上、

発電コイル部分からバッテリーに行く配線すらカットしています。

あ、一応FNのレギュレーションでは問題無い事を確認済みですし、「コイルや磁石の加工」ではなく

「ハーネスの線をカット」しているだけなので、手法はハーネス加工にあたりますから誤解無き様に(汗

もちろん、「メインキーのON/OFFでエンジンをストップ出来る」というレギュレーションも満たしていますよ。


しかし、FNというカテゴリーでこれが大きなメリットになるかどうかと言えば、正直めんどくささの方が

上だったりもしますが、「いじくれない」というレギュレーションがある以上、こういった苦肉の策も弄していた、

と受け取って頂ければ幸いですよ。


…実は駆動系に関してもクレアカム+クレアセンタースプリング仕様は「私には」タイムを叩く為の最良の

ベストセットではなかったりします。

これもまた時期が来れば公開致しますね(謎



とまあ、文章のみで長くなってしまいましたが、結論を言いますと私はFN仕様であれば


キャビーナCDI+フルバッテリー点火が最高に安定する上



点火時期変更を必要としないケースにおいては



全域で社外品CDIより高いトルクを生み出す


と言う事です。

…表現として「高いトルク」とはいってもノーマルと同等ですけどね(笑


キャビーナがCDI優れているのではなく、ノーマルのリミッターが無いだけ、という状態が

いかにがっつりと「点火」しているか、と…

これも、社外CDIってチューンにおいても最初に変更してしまえばいちいちノーマルと比較して

比べたりはしませんからなかなか気付きづらいと思いますが、たまにはこういうのも面白いでしょ(笑



そしておまけですが、社外品でもこういった点火力の強い傾向を持つCDIというのは開発している

メーカーもあり、私の分析ではそれはキタコ製品ですね。

定番で点火時期はノーマルと変わりませんが、ノーマルばりに強い火を打っているので実際の

チューンとかでもわりとイケたりしますよ。


特に、エンジンをチューンしたりすると「強い火花が必要」なのは皆さんご存知かと思いますが…

これも単純な話で、仮に新聞紙を一枚燃やすとしましょう。

で、これを広げたままでライターで着火するとします。すると簡単に燃えますよね?


次に、この新聞紙一枚を「手でくしゃくしゃに丸めておにぎり状にした」として、「同じライターで同じ時間だけ

火を当てる」とすれば…広げた状態と同じ時間で火が点いて燃え広がりますか?

…言うまでもありませんがなかなか火が点きませんよね(笑


圧縮比を高めたとか高効率なチャンバーを装着したとかであればエンジン内の混合気はそういった

状態になっており、ギチギチの混合気に素早く点火し燃焼させるには、いかに強い火花が必要かと

いう事です。

「新聞紙一枚」をシリンダー内の混合気の総量とすれば、くしゃくしゃにしても「絶対量」は変わって

ないのに、ぎゅっと圧縮されるとそれだけ燃えづらくなって当然である、と実に簡単な理屈ですね。


これは以前にも言ったかもしれませんが、



エンジン動作の三大要素である

「点火・圧縮・混合気」においての「点火」は

「点火時期のみ」を指す物では無い


と。

これを念頭において頂けると嬉しいですよ。



うーむ…なんか全体的に「スクーター改造」向けの内容になってしまいましたね(笑

とはいえ、スクーター改造がメインの方でもこういうトコって読まれると思いますんで、書いておいて

損にはならない、と信じておきます。


このCDI変更というのもチューンにおいては最初の定番ですが、社外品プーリーでいきなり駆動系の

バランスをぶっ壊す事があるのと同義で、「リミッターカット目的」だとしても社外CDIですらトルクダウンの

原因になっている事もある、と。


DC点火形式のCDIだとこれらの差はAC点火形式に比べてかなり起こりやすい上に、特にボアアップとか

行うと「点火」の問題って顕著に出る事もありますよ。

「アホみたいにMJを大きくしないと吹けない」とかね…(笑


私の定番であるひねくれコンテンツをお読み頂ける皆様であればこの辺もご理解頂けると信じていますが、

社外品のデメリットがメリットを上回るなんて事はザラです、と。

いつものクチで言ってみた所でオサラバしておきますね(笑



※オマケ

キャビーナCDIのピンアサイン解説↓


キャビーナCDIピンアサイン



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