スクーターの車体&足廻りの基本


JOG+AXIS90フォーク改


ここでは、スクーターの車体廻りについて触れたいと思います。

スクーターの車体という物は…私は50ccだと、基本的に時速30km/hで耐えられれば良い、というコンセプトの設計だと思っていますよ。
なのでチューンを前提、いやフルノーマルでも激しく走行する方なら、ノーマルの車体でも危険極まりない物だと言う事をご理解頂きたいです。


まず、スクーターのフレームは一部の車両を除きアンダーボーンという形式です。
普通のバイクで、タンクにあたる所が無い訳ですね。

「またがり式」ではなく「腰かけ式」のポジションである、スクーターのスクーターたるゆえんですが(笑

このタイプのフレームの最大のメリットは柔軟性があるという事です。
その代わり、メインフレームはタダの鉄パイプなので剛性はあまりありません。

なお、基本的にホンダ車は剛性が強くヤマハ車は剛性が弱い、というのが定説ですね。
(この場合の「剛性」と言うのは、「硬い」と言う事では無く、足廻りがきちんと動かせる「しなやかな復元力」を指します)



さて、エンジンを改造し、パワーが上がってくると当然「走る」様になります。
しかし「走る」だけでは、バランスの良い「乗っていて楽しい」マシンにはなりません。

「曲がる」事「止まる」事も、改造にあたっては大変重要な事です。

50ccスクーターの場合、元々の車体そのものが改造したパワー&スピードに耐えられる様には設計されていません。
すなわち、エンジンパワーやスピード以上に車体&足廻りを考える事が必要な訳です。

例えば、3YJ型の7psドラムブレーキJOGは、ノーマル状態でもかなりブレーキング&コーナーリングに不安を感じます。
フロントフォークはスカスカ、ブレーキは効かずリヤサスはプヨプヨですね。
エンジンはヤマハ横置きなのでライトチューンでもそこそこ速くなりますが、ノーマルの足廻りでは全く耐えられません。

昔、ハイパワーのJOGでフレームにクラックが入っているのを見つけた事もありました。

これでは、せっかく最高速が100km出るマシンが作れたとしても、「危ないだけ」の乗り物になってしまいます・・・
このようなマシン作りは個人的には全くお勧め出来ません。


スクーターを改造しようとするなら、まず自分のテクニックにあわせた「足廻り」を作るべきです。

プーリーやCDIを買う予算があるのなら、まず社外リヤサスや良いタイヤを買うべき

だと思います。

特にスクーターはエンジンの搭載位置が「リヤミッドシップ」である為、足廻りのバランスにおいてリヤサスが占める割合は非常に大きいですね。

フロントフォークに関してはある程度は仕方がありません。
しかしメンテは頻繁に行うべきですね。
いくら現在のスクーターのフロントフォークが高性能とはいえ、中身のオイルやグリスが真っ黒では何の役にも立ちませんね。



さて、足廻りは社外品等で強化しても、改造が進むとそのうち「フレーム」が頼りなく感じると思います。

世の中には、ハンドル下部からフレーム中心部辺りまで「サブフレーム」を入れている方もいますね。
特にヤマハ系の難点であるフレームのよじれを抑える事が出来ます。

しかし、ここで注意して頂きたい事は、フレームをガチガチに固定してしまうと、そのしわよせが足廻りにかかってくると言う事です。

今まではエンジンパワーを「フレームのしなり」で受け止めていたのを、ダイレクトにフォークやリヤサスで受け止める事になります。

具体的には、フロント廻りだとハンドル&腕にかなりの振動と抵抗がかかってきます。
これでは安心して乗れなくなります・・・

剛性を上げる事は大事ですが、一箇所に応力が集中しない様に「逃げ」が必要だと言う事です

はじめに言いました「柔軟性」も、デメリットばかりでは無いのです。


よくあるパターンとして、「社外品リヤサスのイニシャル最大」「不必要に硬いオイルを入れたフロントフォーク」等が見られます。

SS1/32mileの様な競技なら話は別ですが、「適度に柔軟性」のある車体作りをしないと、楽しめるマシンは出来ないという事ですね。


このあたりの詳しい事は「基本的なFNマシン作りのコツ」の項目でも述べていますので是非ご一読下さい。



最後に捕捉となりますが、こういう「足廻り&車体廻り」という物は、はっきり言ってライダーのテクニックや経験にも左右されると言う所が大きいです。

ものすごく酷い物言いをしますと、ある程度初心者の方では「何が危険なのか」を判断しかねる場合も多々あると思っていますので。

エンジンばかり弄るのもそれはまた個人の自由ですが、そのパワーを「自分で操りきれる」車体にしておかないと…乗りこなす事はまず不可能ですよ。

私はレースをたしなんでいるので余計にそう思うのかもしれませんが、パワーばかり出ていて車体とのバランスが取れていないマシンは乗っていても面白く無いですね…

(もちろん、「じゃじゃ馬」といった感じのマシンでも、きちんと乗る人が乗れば操れる作り方ならそれは危険な物では無くなりますけれどね)

これも一つの判断基準として考えて頂けると幸いです。



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