吸気系の基本


ケイヒンPE20&24パイ ケイヒンPWK28パイ


ここでは「吸気系の基本」について触れたいと思います。

ここで言う「吸気系」とは、基本的にエアクリーナー&キャブレター、そしてリードブロックやバルブの事を指しますね。

さて、エンジンが動く為に必要な要素は大まかに分けて3種類に分けられます。

の3点が、エンジンが動く為に最低限必要な3つの要素になります。


この中の「混合気」が、「吸気」によって作られる物ですね。
要は「ガソリン&空気&オイルが混ざりあった気体」を作り出すのがエアクリーナー&キャブレターなのです。

しかし、ただ大量の「混合気」をエンジン内部に入れてやればパワーが上がる、と言う物ではありません。
エンジンが要求するだけの「最適な量」の混合気を送り込んでやらないとパワーは出せません。


例えば、50ccのノーマルエンジンにPWK28パイキャブ&大口径リードバルブを装着しても、セッティングさえ合わせればちゃんと走ります。
しかしキャブの性能を出し切る事は出来ませんので、性能的には18パイキャブを装着したマシンに負けてしまうと思います。

他の項目でも何度か説明していますが、吸気系は特に「バランス」が大事なのです。

よくあるパターンとして、「ノーマルキャブ+パワーフィルター」という組み合わせがありますね。
一見空気がたくさん入り、それに合わせてジェットを濃くしてやればパワーが上がりそうな物です・・・

しかし実際は吸気音の迫力程にはパワーは上がっていません。

なぜなら、もはや定番と言ってもいいメインジェットUPが定着してしまっているからなのです。

パーツメーカー指定なら、車種にもよりますがパワーフィルター装着時には必ず「メインジェットを10〜20番上げる」というのが定番です。

しかし実際の「空気量とガス量とのバランス」から考えると

パワーフィルター程度の空気吸入量ならそんなにガスは必要ありません。

空気の吸入量以上にガスを送り込んでも全くと言っていい程無意味です。


ここで大事なのはまず

「今の状態での空燃比がどれ位のものなのか、濃いのか薄いのか、もしくは混合気自体が多すぎるのか」

という事をきちんと把握する事です。

これは当然フルノーマル車にも当てはまります。

フルノーマルだからといって「ベストセッティング」だとは思わない事ですね。


ここからは「基本的なFNマシンの作り方 Dio編」からの引用ですが、セッティングに関してはレーサーでもストリートマシンでもやる事は一緒ですので、それを前提としてお読み下さい。


※以下略語

エアスクリュー=AS

スロー(パイロット)ジェット=SJ

ジェットニードル=JN

スロットルバルブ(カッタウェイ・カットバルブ)=THV

メインジェット=MJ

と記述します。



「基本的なFNマシンの作り方 Dio編」より引用文

(最高回転数の上昇で最高速を伸ばす方法です)

さて、チョークを殺してエンジンを回しても、おそらく最高回転はさほど上がらないと思います。
なぜなら、フルノーマルのキャブセッテイングは、カブらない程度にかなり濃い目のセッテイングになっているからです。
ちなみに、DioのノーマルMJは94〜96モデルで#82ですが、これを#85にして走行すると

超高回転時のアクセル「全閉」状態から一気に「全開」にした場合に、「混合気が濃すぎる事によるエンジンの失速」が起こってしまいました。

「ゴボゴボ」という感じでは無く一瞬で回転が失われてしまいました。「失火」と言った方が良いかもしれません。
すなわち、メインジェットを1ランク上げただけでも空燃比のバランスが崩れるほどガスが濃いという事ですね。

まずこの事が大前提です。「ノーマルのキャブセッテイングは濃いめ」なのです。
少々MJ&SJを下げた所で、焼き付く事はまず無いと言って良いでしょう。


では、「上を伸ばす」為には当然「薄め」のセッテイングが必要です。
具体的にはMJ、SJとも1〜2ランクのダウンといった所です。
97モデルのノーマルセッテイングはMJ=#80 SJ=#40ですので、

MJ=82・80・78・75

SJ=40・38・35

といった所になります。

この位が実用範囲内です。

ここで勘違いしないで頂きたいのが、MJがノーマルより下がっているからといって、「かなり薄い」セッティングでは無く「適正値より少し薄め」だと言う事です。

前述した通り、「ノーマルジェットはノーマルエンジンに対してベストセッティングでは無い」という事ですので。

SJ、THV、JNについても全体的なバランスで調整しなければなりません。
MJのみを薄めにセットし、高回転時の空燃比が合っていたとしても、仮にコーナー進入時に「アクセルを全閉」にして立ち上がりで「全開」にしたとします。

そのような場合、ガスが噴出するのは当然MJからです。
しかし、いくら一瞬でアクセルを「全閉」から「全開」にしてMJからガスを大量に噴出させようとしても、

SJからのガス噴射や、THV&JNの働きがカットされている訳では無いのです。

アクセルが「全閉」から「全開」になるほんの一瞬でも、THVやJNによる空燃比の調整が行われているのです。
直線を全開走行している場合でも、SJからのガスがカットされる訳ではありません。
アイドリング時にMJからのガス噴出が無いかといえばそうでもありません。

「アクセル全開時」に「混合気が薄い」と感じた場合でも、MJが薄いとは限らないのです。

このあたりが、「キャブはトータルバランス」という事ですね。


まとめますと、

高回転域を薄めにセットすれば、オーバーレブ域でのエンジン回転そのものは上昇します。
すなわち最高速も稼ぐ事が出来ます。

しかし「中回転域でアクセルを急に全開にした場合」等の「アクセル全開固定では無い」状況下では、 THV&JN&SJのバランスによっては立ち上がりで失速感が出たり、エンジンの熱ダレを引き起こす事もあります。

そしてエンジン回転域のどこか一箇所でも「薄すぎる」セットになっている場合、どこかで熱ダレ等の不具合が出る可能性があります。

といった所です。



簡潔に説明しますと、「低回転時のアクセル全開」の場合は、SJ〜THV〜JN〜MJまで全ての範囲を順番に「一瞬で」使っているのです。

すなわち、低回転時にアクセルをいきなり「全開」にしても、SJやJNが濃いとガボガボと回転が上がりにくくなってしまいます。(MJが合っていてもです)

「高回転時のアクセル全閉」は、THVが物理的に「全閉」になっていますので、基本的にはSJ、AS、物理的なTHVの開き具合(アイドリング調整ですね)で調整します。 しかしこの場合も、MJからのガス噴出がカットされる訳では無いようです。

JNがMJホルダー(ニードルジェット)に刺さっていても、少しはガスの噴出が起きているのです。



いかがでしょうか?

吸気系やエンジンの改造変更が一切認められていない、「FN (スクーターノーマル)クラス」のエンジンでもこのような症状が出てしまうのです。

直キャブやファンネル等だともっとシビアになります。

「今使っているメインジェットが90番だから100番は濃すぎる」といった様な「固定観念」にとらわれてしまうと絶対にセッティングは出せません。

・・・しつこいようですが、とにかく吸気系はトータルバランスが大事なのです。

まず今自分が使っているエンジンに「100%合わせた」セッテイングを出す事です。

チャンバーや駆動系、キャブ本体を改造しても、キャブセッティング&バランスが合ってないと、いくらセッティングに時間をかけても絶対に速くはなりません。

それを見際めるのは難しいですが、キャブセッティングに妥協さえしなければおのずと身に付いて来る物ですので・・・

ちなみに、吸気系のセッティングが出ているエンジンと言う物は吸気音が綺麗な音になります。耳に付く「ブボボ〜」という音にはなりませんよ?



ではここで、私の独断と偏見で各種キャブを辛口で批評しておきたいと思います。


そして最後にちょっと便利な小技を紹介します。

PE系やPWKはフロート室の底からMJが交換できますね。
しかしいちいちコストのかかる混合ガスを捨てるのはもったいないですね。(ガスを捨てる場所にも困りますし・・・)

そこで、ガスを抜かなくてもMJ交換可能な方法があります。


まず、キャブの「オーバーフローパイプ」を外します。(キャッチタンクに入るホースです)

そしてそこの穴を指で塞ぎます。(空気が入らない様に)

その状態でキャブをひっくり返し、MJ交換用のキャップを外します。

するとガスが漏れてきません。

この様に穴を塞ぎます


この様に穴を塞ぎます。

(親指で押さえている所です。)

この状態を維持しつつMJを交換します。

(写真はPE20ですがPWK等、底からMJが交換出来るタイプのキャブは全て応用可能です)



この方法だと、ガスが全く流れ出なくなるのです。

競技中やセッティング中には大変重宝します。是非お試し下さい。

あと、私はPWKのスロットルバルブのフタ部分の取り付けボルトを「蝶ネジ」に交換しています。

工具を使わずに外せますので整備性は格段に向上します。カッコ悪いですが(笑



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