基本的には上死点前で点火して上死点後いくらかの時点でピストンに燃焼圧力が到達するのですが…
ノーマルだとピストンがかなり下がった所で「ピストンを叩く」設定になっており、これでは適正な燃焼効率を保てずパワーが出せませんね。
なお、「プラグに火が付いた瞬間」に混合気の爆発は起こりますが、実際にピストンを燃焼圧力で押し下げるまでには少々のタイムラグがあります。
いくら「燃焼速度」が速くても、プラグの先端からピストントップまで「燃焼圧力」が達するには少し時間が掛かるという事です。
すなわち、ピストンが上死点にある時がクランクシャフトの回転角度が「0度」ですので、ピストンが上死点にある状態の「約16〜18度手前の回転角度(BTDC)」の状態で点火しているという事になりますね。
やはりノーマルですので、エンジンが異常燃焼を起こさない様にマイルドな点火特性になっています。
(私がスクーター改造にハマりだした頃は、そんな便利な物はありませんでしたね〜)
しかし、「CDIによる点火時期変更」は、全回転域にわたって「進角」させる物ではなく、各回転数ごとに「点火タイミング」がプログラムされているのです。
これから紹介する方法は、全ての回転域の点火タイミングが同じだけ進む(進角する)方法ですので、まずこの違いを認識して下さいね。
まず、ローターベースの加工で進角させる方法です。
ちなみにこの方法はJOG系のエンジンにしか使えません。
一番メジャーな方法ですね。
ローターベースを「左回りに回転」出来る様に穴を広げます。
上側の穴は右側に、下側の穴は左側に広げます。
(画像をクリックすると拡大します)
ローターベースを「少し左回転」させてやると、回転させた分だけピストンが上がる前に点火させる事が出来ます。
ちなみに穴を削る量は約3mm〜5mm位に留めておいた方が無難です。
あまり点火時期を進めすぎると、ノッキング、デトネーション等の「異常燃焼」を引き起こしてしまいます…
点火角度にして3〜5度位の進角が無難ですし、あまり点火時期を進めすぎると高回転が伸びなくなってしまうのです。
しかし、「最適な点火時期」は、確実なレスポンス&トルクUPに繋がります。
この辺りは、個人個人のセッティング、チューニングによって臨機応変に変えるべきですね。
しかしDio等のローターベースは、回転させる事が不可能な形&取り付け部分が加工できない仕組みになっていますね…
そこでDio等で点火時期を進角させるには、ローター外周に付いている「ローターマグネット」を加工します。
具体的には、下の写真の様な加工になります。
こう加工することにより、ローターベースを左回転させたのと同じ効果があります。
(画像をクリックすると拡大します)
しかしこの方法だと、点火時期の調整は出来ませんので一発勝負になります。
ローターの予備を持っている人向けですね。
あくまで理論上の考えです。少なくとも私はプラグ点火が弱くなったとは感じ取れませんでしたが…
JOGのローター外周は約320mmですので、
320mm(外周直径)÷360(度)=0.888
すなわち約0.9mmマグネットを削ると、クランク角度で1度の進角になっていました。
私の加工ローターですと
8mm÷0.888=9.09(度)
約9度ノーマルに対して進角させていることになります。ノーマルCDI併用で、上死点前点火角度は約25度前後という事です。
ノーマルポートに近いシリンダーでは、ノッキングこそおきないものの、エンジンの爆発音ばかり大きくなって前に進む力は無くなってしまいました。
当然高回転も伸びません。
やり過ぎても元に戻せないのが痛いですね…
通常は約2mm〜3mm位の加工が無難でしょう。
点火時期を進角させるといいましても、ノーマルの点火時期は最適な点火時期とは言えない場合が多々ありますので、試行錯誤してみるのも面白いと思います。
特にJOG90等のマイルドな特性のエンジンにはかなりの効果があります。
そして点火時期を進角させた場合、キャブやオイル、混合比のセッティングも見直した方が良いでしょう。
「燃焼効率」がケタ違いに変わってきますので、危ないかもしれませんが効果的なチューンではありますね。
さて、ここでは点火時期を進角させる方法を紹介します。
ノーマル状態の点火系システム(CDI、ローター等)ですと、ピストンが上死点に上がりきるより少し前にプラグに火が飛んでいます。
ノーマルだとアイドリング時の点火時期は、例えばJOGだとBTDC16〜18度に設定されています。(「BTDC」=上死点前点火角度です。)
…セッティングやエンジンの作り方にもよりますが、このノーマル設定の点火時期では、「最適な点火タイミング」とは言えないのです。
最近はZEROデジタルCDIや、POSHデジタルCDI(JOG用)等で簡単に「点火時期」を変更出来る便利な物も売られていますね。
では、具体的な方法を紹介します。
この様にローターベースの取り付け穴部分を「長穴」に加工します。
ローターにくっついている「ローターマグネット」と、ローターベースにくっついている「ピックアップコイル」(写真上側の黒い部分)が、回転してすれ違った時にプラグに火が飛びます。
次に、ヤマハエンジン以外にも応用できる「点火時期進角方法」を紹介します。
ヤマハのローターベースは、中心部にクランクシャフトを通す為のオイルシールが入っており、ローターベース自体も円形ですので「回転」させる事が可能です。
ローターベースのピックアップコイルを動かせないのなら、ローターマグネットの方で点火する位置を変えてやれ、という事です。
クランクシャフトが回転し、「ローターマグネット」が、「ピックアップコイル」を「通り過ぎた」時点でプラグに着火しますので、この様な方法でも点火時期の進角は行える訳です。
補足としまして、この「ローターマグネット」の長さが短くなることにより、若干の「プラグ点火の発電量」が弱くなります。
なお、写真に写っている2JAローターですが、これは約8mmマグネットを削っています。
…しかしこれはやりすぎでした。ヘタなインナーローターなみの進角です。
さて、これで一通りの解説は終わりです。
※注意:こういった進角加工を行う場合には、まずタイミングライトにてノーマル時点での各回転域での点火時期を計測しておくのがベターです