さて今回は、有名なリヤサスである「オクムラSHOWA リヤショック」の改造方法などをご紹介致します。
このオクムラショック、ノーマルでもかなり良い部類のサスに入る物ですが、突き詰めるとやはりバランス的には少し首をひねらざるを得ない部分もあるんですよね。
もちろん好みにもよりますが、ここはいつもの私の独断と偏見で感じた部分の見直しを行いたいと思います。
まずこのオクムラですが、バネレート…と言いますかプリロードは結構固めの設定になっていますよね。
ノーマルでは5段ある調整の内の3段目に設定されていますが、私は正直この3段目ですら硬すぎだと思っています。
これは基本設計がかなり昔の物なので、減衰力そのものの設計は結構良いのですが、いかんせんバネレートは「コンパウンドの硬いタイヤを無理矢理路面に押し付ける」方向性でしょうか。
現在はタイヤ自体の剛性やグリップ力が昔と比べてはるかに上がっているので、それほど硬いスプリングは必要無いんです。
自分の体重&走行負荷さえ支えられ、フルストロークでショックが底ヅキしなければそれで良いんですよ。
なのでオクムラは伸び側の減衰力に対し、プリロードを高めに設定すると「跳ね返り」でぴょこぴょこする感じは否めません。
基本的に私はこのショックを使う時には、プリロード調整は最弱、もしくは2段目しか使いませんね…
その位の沈み側のバネレートじゃないと、伸び側の減衰力自体が「バネの硬さ=反発力」に負けてしまい、ショック(ダンパー)がすぐに戻ろうとしてしまうんですよね。
いくらオクムラは伸び側減衰力の調整が可能とはいえ、ダンパーロッドをしっかり奥までストロークさせないと、伸び側減衰力の効果も半減してしまいます…
さて、ここからは具体的な加工方法をご紹介しましょう。
もちろん、いくら制作費0円といってもそれなりの工具や技術、そして「モノの分析能力」は必要となってしまいますが…
私も基本は「人力」での作業ですが、知恵と勇気と根性があれば大抵の事は出来てしまう物ですよ。あと愛も大事(以下略
で、今回の作業コンセプトはしなやかなサスの動きと余裕のあるストロークとなります。
かなり無理矢理ですが、スプリングの上下にベアリングセパレーターを噛ませ、それを車用のスプリングコンプレッサーで圧縮しています。
オクムラはダンパーロッドが倒立設計の為、まずショック下部のシェルケースを外す方向性になりますね。
もちろん方法は問いませんが、とにかくシェルケースが上にズラせられればそれでOKですので(笑
と、こんな感じでスプリングを縮め、シェルケースを上側にズラして行くと…ダンパーロッドとショック下側の取り付けステーを共締めしているナットが姿を現します。
コイツを緩める事により、下側取り付けステー部分が分離可能となります。
上側にズレたシェルケースの隙間に、金色のナット状の物体が見えているのがお分かりでしょうか?
これは普通の6角では無く、対面方向に平行な部分が切ってあるだけの変形ナットなので、これを緩めるには写真の様なパイプレンチもしくは巨大なモンキー等が必要です。
そしてショック取り付けステー側自体は適当なボルトを通しておきメガネレンチを噛ませておきます。
これで両側を固定する事が出来、後は回すだけですね。
しかしこの部分、ネジを切ってあるダンパーロッドに、固定ナット&ショック取り付けステーがダブルナット方式で固定されているので、運が悪いとどちらかが緩んでどちらかが緩まない、という事もたまにあります。
ステー側のみが緩んでしまった場合、やむをえませんがこうやってロッド本体をバイスプライヤーで掴み、ナット自体を回転させて外します。
ロッド自体はクロモリ鋼?で作成されている(らしい)ので、少々引っ掴んだ所で変形はしないですよ。
…絶対の保障は出来ませんけれど(汗
もちろん事前に潤滑剤をたっぷり吹いておくのは基本ですね。
で、ナットが残った場合はこれでOKなのですが、やっかいなのはナット側では無くステー側が回らずにナットだけ回ってしまった場合です(汗
こういう場合…かなり無理矢理ですが、まずナット部分を上側に向かって締めこんで行き、ネジ山が無くなる所まで占めこみます。
その状態でナットを工具で固定し回り止めを行い、その上でステー部分を渾身の力を振り絞って回しましょう(爆
もちろんこの場合もロッドをバイスプライヤーで挟んで回しても良いのですが、ステー側にきちんと工具がかけられないのでかなり作業が難しいかと。
上記でステー部分をメガネで固定しているのは、あくまで「一発勝負」の外し方ですので(笑
ちと分かりにくいかと思われますが、この様にナットを限界まで締め込み回らなくします。
その上でステー部分を回すワケですが…これがナットねじ切りそうで怖いんですよね(汗
しかし素材がかなり強固なモノなので、これでも外す事は十分に可能です。
要は「上を固定して下を回す」という方法ですね。
と、下側のナット&ステーさえ緩んでしまえば後は普通にシェルケースとダンパーロッドが分離出来ますね。
完全にバラした状態はこうなります↓
左から本体ダンパーロッド、スプリング、シェルケース、バンプラバー、ナット、ステーとなります。
…もちろんダンパーロッドの分解は素人では無理なので無視ですが(汗
オクムラショックといえども、構造は倒立なだけで単純だったりします。
これらを眺めていると、改善出来る点がある事に気付きますよ。
さてバラしたオクムラですが、まずは基本中の基本、バンプラバーのカットを行いましょう。
バンプラバーはロッドの「底ヅキ」を防止するパーツなのですが、実はコレ、オクムラの場合結構切っても良い程分厚いんですよね。
分解したダンパーロッドを手で押してフルストロークさせてやると分かると思いますが、フルストローク時の底ヅキポイントは、ステー取り付け部のネジ山が半分隠れるくらいの場所なんですよね。
なので…大げさに言ってしまえばバンプラバーが無くとも、ロッドがダンパーのケースを「上に向かって」突き破る事はありえないんですよ(笑
あ、もちろんその状態で走行してしまうと、フルストローク時にロッドケース本体とステーが激しく接触してぶっ壊れると思いま(以下略
というワケで・・・実際にストロークを確かめつつ限界の厚みまでバンプラバーをカットしていきます。
もちろんバンプラバーが潰れた時の事も考え、少々厚めに残すのは基本ですが、半分の厚さまでカットしてもOKですよ。
もちろんショックの吸収性を犠牲にしない為、「底側」を真っ直ぐに切り飛ばしましょう。
これで少なくとも切ったバンプラバーの厚み分、4〜5mm程度ですがストロークが増えるワケですね。
…50mm程度しかストロークしないオクムラではそれだけのストロークUPでもかなり数値的には大きいですよ。
このバンプラバーによるストロークの抑制と言う物は、結構なストロークの犠牲になっていると私は思っています。
分かりやすい例えですと、車のチューンで「ダウンスプリング」ってありますよね?
あれもダンパーのストロークを完全に無視し、スプリングのバネレート&プリロードを下げる事により、1G沈下量を増やしている物なのですが。
実際はフルストロークまでの余力がほとんど無くなり、すぐにバンプラバーにショック本体が当たってしまいぴょこぴょこしますよね(笑
車の場合はバンプラバーがかなり厚いのでだいぶ切れますが、サス&ショックの動きとしては犠牲にするものは大きいですね。
もちろんショックが底ヅキする程バンプラバーをカットしては意味が無いですが(笑
どちらにしても、フルストローク時にロッドが底ヅキしない限界のポイントを見極めるのがコツでしょうか。
特にバイクの場合、ストロークはあって困るものではありませんからね。
ストロークが長い事により、ショック自体の動きが大きくなると感じる場合なら、ストロークスピードを調整してやれば良いんですよ。(リヤショックは難しいですが)
短いストロークで底ヅキしてしまうと言う事は、「もしもの時に余力が無い」と言う事と同義なので…
おっと話がそれましたが、このバンプラバーのカットと合わせて、さらにストロークに余力を持たせる方法ご紹介しましょう。
オクムラのダンパーロッドのネジ山部分、ナット&ステーが付く一番下の部分ですが、これは結構固定物の厚みのワリにネジ山が「長い」ですよね。
これを逆手にとって…ロッドの全長を延ばしてやる事によりストロークを稼ぎます。
右図の様に、ダンパーロッドにナット&ステーを取り付ける時に、ネジ山の限界まで下にズラして両者を締め付ける、という方法です。
さすがにこれは何mmも出来る方法ではありませんが、ほんの少しの「ロッド長の長さ」を稼ぐ事が可能となります。
先程のバンプラバーカットと合わせると、1cm近くストロークに余裕が出来るのでは無いでしょうかね。
そしてこれは私も個人では精度は出せないのですが…シェルケースの下側を、きっちり面を出して5mm程カットしてやれば、装着状態でのバネレートを柔らかくする事が可能です。
シェルケースが短くなる事により、スプリング装着状態でスプリングが伸びている方向にセットされ、結果的にバネレートを弱く出来る、という事ですね。
ただでさえオクムラは硬い方向へのスプリング調整幅が使いにくいので…好みにもよりますがこの方法だと調整幅が広げられるワケです。
シェルケースを5mmカットすると…スプリング調整で3段目の状態が、だいたいノーマルの1段目位の硬さになりますね。
…これはもちろん適当な精度でカットすべきではありませんが、実は適当でもシェルケースの固定にはそんなに問題が無かったりします(笑
これは実際にバラしてみて、各部の構造を見てみるとすぐに分かるかと思いますよ。
さて、今回のコンテンツはこれにて終了です。
何故かオクムラのバラし方講座になった様な気もしますが…(汗
基本的にどこのメーカーのショックでも、バンプラバーはきちんとストロークを計算すれば切る余地があったりしますので、色々試してみるのも面白いと思いますよ。
ロッドの取り付け寸法等をわずかながら変えられるのはオクムラの設計による特権ですが…(笑
こういった加工を施すと、目に見えてストローク量が増え、しなやかな動きをするショックになりますよ。
リヤサスペンション自体の取り付け角度は、スクーターの場合かなり「立って」いて、なおかつそんなに減衰力のあるショックが使われているワケでは無いので、こういうチューンだと目に見えて動きも良くなります。
本来ならショックの作動角度をもっと寝かせてやれば、硬いショックでもそれなりにストロークさせてやる事が出来ますが、なかなかそれは難しい物なので(笑
これらの方法と合わせ、「スクーターレース」のコーナーでご紹介している、ショックの取り付け方法も同時に行うのがおすすめです。
(アレはかなり効きますよ?)
では最後に。
フロントフォークもそうなんですが、リヤ荷重がかなり重要なスクーターでは、動きの無い硬いショックなどは全く意味がありません。
タイヤの消耗を早め、車体の振動が増えるだけですので。
「スプリングを硬くすると1G沈下量が減り、車高が上がる」と言う事もありますが…こんな事をしても全く意味はありませんね。
リヤの「車高」を上げたいのなら、理想のショックの動きに調整しておいてから、「そのショックがフルボトムした時の全長」で考えるべきなんです。
車高調整をバネレート変更やプリロード調整で行うなんてのは全く意味が無い事だとお考え下さい。
「沈みにくいから狙い通り車高が上がった」と言うのは明らかに何か間違ってますよ(笑
なので「車高」を調整する場合は、基本的にはバネレートとは切り離して考えるべきです。
ヒップアップアダプターやステー加工等で調整するのが理想ですね。ショックの動きを妨げるのは何においてもデメリットしかありませんので…