BTDC点火時期や点火力について



さて。今回はですね、ちょっと駆動系から一旦離れまして「点火時期」とかのお話をしてみたいと思います。

この「点火時期」ってヤツ、色々な所で耳にする機会も多いかと思いますが、実際の意味合いについては

なかなか理解を深められている方は少数かなと思います。

何故ならば…電気は目に見えないからだと思われますが、確かにその通り、目に見えない物は

理解するのは難しいのが道理なので、多少ではありますが私からご説明しておきますね。



まず、この「点火時期」という物ですが、これは言葉通り、プラグが点火している時期なんですが。

この「時期」って言い方は多少語弊があり、正確には「点火角度」なんですよ。

そして、「角度」と言うからには、クランク角度での上死点前何度、といった言い方になります。

これは「BTDC=Before Top Dead Center」(びふぉあ とっぷ でっど せんたー)、すなわち「上死点前」なので、

上死点をクランク回転角度にて「0°」とした場合、ピストンが上死点より前に居る時に点火が行われているという、

実に単純明快な理屈になりますね。

仮に「BTDC10°」だと、上死点より10°クランクが逆回転した所で点火が行われていると言う事です。


で、ここで「何でピストン(クランク)上死点の前に点火してるんだ?」と思われる方もおられるかと

思いますが…これは正直、一から私がご説明する事でも無いので検索して下さいな(笑

簡単に言いますと、ヘッド頂点で「点火」し、「着火」が行われ、「燃焼」が始まり、「火炎伝播」がピストンの

末端まで到達するには、とても短い時間ではありますがタイムラグがあるんですね。

なので、ピストンスピードが一定だとした場合、



ピストンが上死点に到達した瞬間に点火したのでは


ヘッド末端まで混合気が燃え広がる頃にはすでに


ピストンは下降中で結構下まで降りている


という事になりますね。


ツボは混合気の燃え広がる速さですね



なので、「実際の点火」と言う物は、クランク角度での上死点よりも前で「点火」しているんですね。

「ヘッド末端&ピストン表面」まで、混合気が燃焼して起こる爆発エネルギーが到達する時間と言う物を

考慮して、点火時期と言う物は設定されています。


ちなみに、「一番エンジン効率の良い点火時期」というのは…

ピストンが丁度上死点に来た時に火炎伝播がピストンに到達する…のではなく、

ピストンが上死点よりわずかに下降を始めた瞬間だったりします。

これは理屈は簡単で、ピストンが下がり始める瞬間に「押して」やった方が小さな力でクランクを回せると

言うだけの話なのですけれどね(笑


もちろん、丁度良い点火角度と言うのはピストンスピードに左右されますので、エンジンが高回転でピストンの

ストロークスピードが速い状態だと、点火時期はそれに合わせて早めてやらねばなりません。

これも簡単な話で、仮に5000rpmのピストンスピードで、ピストンが下がる瞬間に火炎伝播が到達すると

いった点火時期の場合、これが10000rpm時のピストンスピードであれば、ピストンの上昇スピードが速すぎ

まだ混合気が燃え広がっている途中の所にピストンが高速で突っ込んだ上、火炎伝播がピストンヘッドを

叩く位置まで来た時にはピストンはすでに理想位置よりかなり下がっています(笑


そしてこの逆で、「ピストンが上死点前に達する前に火炎伝播がピストンヘッドに届く」場合だと、

これは点火時期が早すぎるという状態で、こうなればおなじみの「ガクガクガク」といった感覚や、

「バラバラバラバラ」といったノック音と共にエンジンが悲鳴を上げる事になりますね。



そして、上記の「ピストンスピードに対して点火時期が早すぎ」の状態とよく似た症状で、


「混合気のA/F比か濃すぎてカブっている」という


状態ってありますよね?

これも、アクセルをエンジン回転に合わせて適度に開けたとしても、「ぶぼぶぼぶぼ〜」ってボコボコする

アレの事ですが(笑


ついでにこれ、何でこうなるのかと言えば…「濃すぎる混合気」というモノは、ガスの占める割合が

適正値より多い状態で、こういった混合気の場合だと、プラグにて点火を行ったとしても、上記の様に


適正な混合気(A/F比の物)よりも、「火炎伝播速度」が速くなる


からこそ、あのぶべらばばらはばんびぼんって不正着火の状態になってしまうんですよ。

要は、燃焼室末端までの燃焼速度が速すぎる状態になっていて、ノック音が出てしまうんですね。

実はこれ、メカニズム的には一種の「ノッキング」になっちゃうんですよ。

早期着火の定番「プレイグニッション」ともちょっと違いますし、カブった状態の燃焼状態を表す言葉って

無いのでなんとも表現が難しいですね(汗



そしてもう一つ。

上記ではピストンスピードに対して丁度良い点火時期を得る為には、ピストンスピードが上がる程に

点火時期は進角させてやらなければならない、と書きましたが…

この基本はあくまで「4stエンジンでの基本理論」であり、2stエンジンでは逆に


パワーバンド回転域までは程々に進角気味にしておき


チャンバーでのカデナシー効果が最大になるパワーバンド域からは


逆にどんどん遅角させていかねばならない


という事があるんです。

あ、この場合の低中回転の進角ってのは、ボア径やピストンスピードに対して適正な点火角度、って

事ですので誤解無き様に。


これは何故かと言いますとですね、2stだと「回転上昇=パワー増大」ではなく、パワーバンド内のみで

有効なエンジンパワーを出せているエンジンなんですが…これは以前排気流速と排気温度の関係を

間違ってご説明した事があったかと思うのですが、今回はそれに似た理論があてはまるんです(笑


まず、「燃焼が始まってから終わるまで」のクランクの回転角度は、もちろん点火時期を変えない限りは

クランク角度では決まった角度分になるんですが、ピストンスピードが上がればその「クランクの動く時間」だけは

短縮出来ます。

が、「ピストンスピードは速くなっても、点火から燃焼終了までのクランク角度は変わらない」と言う点が大きな

ミソになります。

「エンジンは高回転になるにつれて火炎伝播速度が上昇してしまう」のですが、これはA/F比の関係や

アクセルを大きく開けた時に「そうなっていく」という認識のみでOKだと思います。

…小難しいので私もご説明しきる自信がありませんので(汗



で、2stってのは…ある程度安定した燃焼効率で、回転数のみUPさせて行ける4stエンジンとは大きく異なり、

2stの高回転でなおかつパワーバンドだと、洒落にならない発熱量のUPが起こっているんですよ。

これを点火時期の遅角にて、冷却(放熱?)効率のカバーを行わなければならないのです。


まず、ヘッド内の燃焼温度が上がるのはやむなしとしても、この発生した熱と言う物は、

混合気の着火が起こり、爆発し火炎伝播がピストンを叩くまで


ヘッドやピストン、シリンダーの壁面に対して放熱されている


のですが、特にヘッド内の燃焼温度はかなり高いですね。

ここで、点火時期をそれまでよりも遅らせた場合…クランク角度的には「火が点くのが遅いタイミング」に

なるので、ほんのわずかな時間の違いではありますが、ヘッド燃焼室内やピストンに対しては

放熱している時間を短く出来る


と言う事になるので、排気ポートが開いて熱ごと排気を捨てられる「タイミング」は変わらないので

「放熱している時間を短縮出来る=ヘッドやピストンに対して熱が溜まりにくくなる」と言う事なんですね。

そのかわり排気ポート近辺は熱くなりますが、それはチャンバーがあるのである程度熱量も吐き出せてるので

完全密閉のヘッド&シリンダー内にて放熱がガンガン行われるよりははるかにマシ、って事なんです。


なお、「常識的な点火時期」の場合、エンジン回転数が同一の状態でそこからさらに進角させると、

ヘッドやピストンが熱くなるというのは定番ですが、これは適正値より早めに混合気に火が点く事により、

「放熱させている」という現象自体がクランク角度的に長く(大きく)なってしまうので、余計にヘッドやピストンに

熱が溜まりやすくなり、限界を超えるとエンジンぶっ壊れるんですね。

点火時期が早めだと燃焼エネルギーによって発生する熱の「放熱」はクランク角度で大きく行われているが、

そもそもその受け皿が限界突破しては意味が無い、と言うだけです(笑



それと最後に補足ですが…

巷には、「点火時期を遅らせると、ヘッドの燃焼温度が下がり、排気温度が上がるので排気流速が上がり

チャンバーのカデナシー効果としては高回転向けに効率が良くなる、なので2stは高回転で遅角すべし」

といった理論があるかと思いますが、この理論は私はちょっと違うのでは、と考えていますよ。

「ポートタイミングと排気流速」のコンテンツでも私はそれを否定していますからね。

数十度程度排気温度が上がっただけでエンジン特性が変わるのであれば、始動直後のエンジンなんて

温度低いから数千回転もパワーバンドが下がるのか、って言うヤツですよ(笑


これは、「排気ガスの流速」ではなく「正圧波」の速度が上がるからであって、

「ガス」ではなく「圧力波」の速度自体は、「排気ガスの温度が上がれば速くなる」ので、本当は


点火時期を遅らせる→

燃焼温度が高くなる→火炎伝播速度が速くなる→圧力波の温度が高くなる→

圧力波の速度が高くなる→早いピストンスピードに対して同調する「速い」圧力波が生み出せる


とも言えるんですね。


順番が前後しましたが、2stが高回転で遅角しなければいけない理由として、火炎伝播の燃焼速度を、

変更する事により「圧力波」の速度を変え、高回転同調型の特性を作り出せるという点も大きいです。

ちなみに、パワーバンド以下で「進角」させるという事は、混合気の充填効率が悪いパワーバンド外では

「混合気の密度が少ない=燃焼室の末端燃焼まで時間が掛かる」と言う事で、その分、火炎伝播速度を

点火時期の進角にて早めてやり、火炎伝播速度の伝達を早くしてフォローしてやると言う事になりますね。



さてさて。

この辺でそろそろ「点火時期」と言う物がおおむねどんな物なのかの解説を終わりますね。

…これは私がご説明するよりもエンジンの本とかの方が分かりやすいのでこの辺で(以下略


では、ここで閑話休題としまして…分かりやすく「実際の点火時期」について少々触れてみます。

まず、各社純正のCDIについての点火時期を例としてお話を進めてみましょう。


さて、いつものパターンで、ここで縦型Dio系の点火時期ってモノを基準としてみましょう。

サービスマニュアル数値では、BTDC17°/1800rpmとなっていますね。

これは前述の説明通り、「エンジン回転数が1800rpmの時に、クランク角度がBTDC17°にて点火している」と

言う事になります。


が、これはあくまで1800rpmという、アイドリング以下って感じの回転数なので、仮にこの点火時期が高回転まで

持続してしまった場合には、全てがベストと言う訳ではありません。

ですが…ここで面白いのが「純正CDIの点火時期」で、これは基本的にですね、点火時期ってのは高回転で

ある程度遅角して行かなければならないモノなのですが、純正CDIだと


基準点となるサービスマニュアル数値からは

ほとんど遅角していない


というパターンがあるんですよ…

もちろん、そこそこ高回転になればさすがに遅角しますが、それでも1°や2°の範囲であり、

理想の点火カーブを描ける様な点火MAP、いやグラフにはなっていないんですよね。

正直、誤差の範囲と言っても良いかも知れません(笑


後、基本的に点火時期と言う物はアイドリング+αのエンジンパワーが出せない回転域だと、

それなりに進角させ、2st特有の「パワーバンド直前の谷」の回転域までは徐々に進角し続けても

良い位で、最終的にパワーバンドから上の高回転域ともなれば、それなりに遅角をしていっているのが

「普通」だったりします。


仮に、パワーバンド内のピークパワー6000〜8000rpm程度、MAX10000rpmのエンジンがあるとして…

適当に数字で表しますと、


2000rpm=BTDC17°

3000rpm=BTDC20°

4000rpm=BTDC23°

5000rpm=BTDC25°(パワーの谷)

6000rpm=BTDC23°(パワーバンド開始)

7000rpm=BTDC20°

8000rpm=BTDC19°(パワーバンド終了)

9000rpm=BTDC18°(オーバーレブ)

10000rpm=BTDC17°(MAX)


といった感じが一つの理想なんですよね。

あ、もちろん実際の数値は前述の通りボア径等のモノによって変わるので参考までに。

こういった流れでの点火時期特性が理想、って意味合いだけですので。


で、これが純正のCDIだと…アイドリング時にBTDC17°だったとすれば、6000rpm程度で

1°程度遅角し(BTDC16°)そこからはえんえんと同じ点火時期、って感じになります(笑

そしてこの点火時期がそのエンジンのパワーバンド回転数に対してあまりにも遅かった場合、

圧縮比を上げようがボアアップしようがまともに効率の良いパワーを出せる訳無いんですよ(笑

パワーが第一でも何でもないモノに「2st的な理想の点火時期」を求めるのはそもそもお門違いですが、

純正だと所詮そんなもん、って事で。


ちなみに余談ですが、モトクロッサーのレーサーのCDIやコイル類を流用するインナーローターでは、

メーカー純正とはいえ点火時期ってのはかなり動いてますから、レーサーはやはり違うと言う事も

付け加えさせて頂きますね。



さて、純正CDIでの「点火時期」ってのはこれでどんなもんかおおむねお分かりかと思うのですが、ここで

社外品CDIについても多少触れておかねばなりませんね。


まず社外品ですと、現在の所大きく分けて2種類の点火特性を持つモノがあります。

これがアナログCDIデジタルCDIなんですが。

これ、誤解が無い様に先にご説明しておきますが、このアナログとデジタルの違いというモノは、


BTDC点火角度における、点火時期の「制御・決定方法」


に相違がある、と言う事です。

実は電気苦手な私では詳しくは分からないのですが、アナログは抵抗等を利用したサイリスタゲートの

開閉式で、対するデジタルは、8Bitかなんかのマイコンにあらかじめ回転数に対応した「点火角度」を

プログラムしておき、CDIでの回転数での点火に合わせ、点火角度も同時に細かく決定していると

いうモノらしいですが(汗

とにかく、デジタル式はアナログ式では出来ない様な千差万別な点火MAPを作り出せるという事です。


で、よく誤解されていますが…「バッテリー点火方式だからデジタル」というモノではありませんのでご注意をば。

これも言葉をキッチリ分けますと、「バッテリー点火」と言うのはあくまでCDIの駆動方式であって、

バッテリー電源での駆動だとDC(直流)なので、これは本来「DC-CDI」と呼びます。

比較的新しい車種のライブやリモコンJOGなんかがコレに当たりますね。

(※ライブやリモコンはバッテリーが0でも点火させられない訳では無いので完全なDC-CDIでは無いと

思われるかもしれませんが、この場合はキック動作にてAC発電が行われ、その後レクチで整流された

DCで駆動しています。その代わりこの電流のみでCDIを駆動させると99%破損しますのでご注意をば。

が、一応はDC駆動なのでよろしくです)


もう一つは、ACジェネレーターから発電される文字通りAC(交流)を動力にして駆動する物、こちらは

「AC-CDI」と呼びます。そのまんまですが(笑

これは古い車種では定番の方式で、レクチファイアを通さない交流電源で動くCDIって事ですね。

ちなみにインナーローターもほぼ全てがこのAC駆動になっています。


とまあ、簡単ではありますが、「アナログ点火」「デジタル点火」と「AC-CDI」「DC-CDI」と言うのは

車種やメーカーによりいくつもの組み合わせがあると言う事ですね。

簡単な一例で、ライブ用のDC-CDIをスーパー系の車体にくっつける場合、CDIの電源自体は

ACを入力するかDCを入力するかの違いで、純正CDIでの点火角度の誤差のみを把握していれば

普通に流用する事が可能なんですね。

もちろん、ライブ用CDIでも、DC入力さえ行ってやればアナログデジタルの区別は関係無い事は

お分かりかと思います。


…で、コレ書いてて久々にいらん事思い出したので書き殴っておきますが。

「ACジェネレーター」って言葉、サービスマニュアルにも書いてますけどコレっておかしいと思うんですよ。

「AC」、すなわち交流電源の発電機であれば、それは「オルタネーター」なんですけど(爆

普通は「ジェネレーター」と言えば「直流発電機」を指すのでなんか変です…

わざわざ頭に「AC」って付けたジェネレーター、これってどんな意味があるのか知りたいですよ。

どなたかコレ知ってる方いらっしゃいましたら是非ご一報をお願いします_| ̄|○_| ̄|○



ではではここいらへんで…コレって無茶苦茶苦労して時間掛けてるのでホントはあんまり公開は

したくないってのが本音なのですが、アナログやらデジタルやらACやらDCやらをここまで書いておいて

実際のデータを出さないのでは口だけ野郎になってしまうので、ここは涙を呑んで大放出します(笑


まず、このデータですが、縦型エンジンの車体に、縦型&ライブ用CDI用を取り付けた状態での

実際の点火時期、いや角度を明記していますのでよろしくです。

ライブだと基準となる点火角度が違っているので、このデータを元にライブにくっつけるCDIを求めるならば

表の数値からは補正が必須になりますのでご注意をば。

後、10000rpm以上ではどうやっても計測精度が出せませんでしたので、表に入れてはいますが一応は

11000rpm程度までのデータと言う事でお願いしますね。

(普通は原付一種用のCDIで、それ以上の回転数で点火時期激変ってのはまず無いと思いますし)


では最初に、ホンダ縦型系用・AC-アナログCDIのデータを少々。


AF18系アナログAC-CDI点火MAP AF18系アナログAC-CDI点火角度表



グラフはちょっと見にくいと思われますが、おおむねこんな感じです。

ブツ的には手元にあってなおかつ「完全に正常動作」するモノのみのデータなので種類は少ないですが、

計測方法が非常にシビアな為、実際の使用には問題ないLVでも、少しでも誤作動を起こすモノは除外して

計測してますんでご勘弁をば_| ̄|○


で、ざっとご説明しますと、ノーマルは見事にBTDC17°を維持し、全く遅角は無かったです(笑

他車ですと1°程度は遅角するモノもありますが、まあこんなもんだと考えて下さいませ。

もちろん、8000rpm程度がリミットでそれ以上は測れていませんが、点火リミッターの無い純正CDIだと

もうちょっと上まで測れますね。


次に、この一覧の中で面白いのがキタコとオクムラですが、これは同年代の物を測ったのですが見事に

点火MAPは同じだったというオチになっていますね。

実はオクムラはチャンバー装着時にキタコCDIを推奨していた事があったりしますが、裏を返せばこういう

事で、実はCDIの中身はおんなじだったという罠で(以下略


そしてどっかで書きましたが今となっては激レアの金POSH、これもそれなりに走ると評判でしたが

なんと全域に渡ってノーマル+2°の進角でして、これならノーマル以上の高回転でも丁度良い位に

進角が行われ、程よいパワーが出たのもうなずけますね。


しかし、基本的にはどれもこれも「アナログ」らしい点火時期の変化、と言いますかほぼ固定進角と

いっても良い位ですが、基本的にアナログってのはノーマルにちっと上乗せした程度の物しか市場には

流通していないというのが基本なんですね…



さて、次はライブ系のCDIですが、皆様お待ちかねの「デジタルCDI」の点火MAPも含めてご紹介します。

が、コレも先に言っておきますが、計測には多大な手間を時間を掛けているのですが、それにしても

あまりに変化が大きすぎ、おおむねこんなもんだと言う事でお願い致しますね。

メーカーさんの考えたMAPなんて見れる訳ありませんが、比べてみたい所ではありますよね〜


AF35系アナログ&デジタルDC-CDI点火MAP AF35系アナログ&デジタルDC-CDI点火角度表



とまあ、コチラがライブ系の各種CDIのデータになるんですが。

アナログもデジタルも混在なので余計に見にくいですが、なんとか解析して下さいませ(笑

後、これは前述した様に、縦型の車体にライブ系CDIなので、ライブにライブのCDIを付ける場合は

この表の角度では3°程修正値が必要と言う事もお忘れなき様に。


で、アナログ系はいたって普通ですが、多少の遅角は見られるのが面白い所です。

が、その反面、デジタル点火MAPであるデイトナパワーアドバンスとZEROデジタルは売り文句通り、

かなり面白いMAPになっていますね。

(私POSHのデジタルは持って無いのでそのデータについてはご勘弁をば)

ここまで激変していると、また言葉悪いですがアフターパーツメーカーさんの言う、「点火MAP」を

綿密にプログラミングしている、というのは少なくともハッタリではないと分析出来ます。


そしてZEROの各MAPだと、パターンによりチューン具合で使い分けろという売り文句ですが、例えばMAP1は

一般的にFNマシンに用いられるMAPなんです。

FNマシンの定番変速回転数だと7000rpm程度ですが、ココではBTDC23°になっています。

が、ライブですと-3°の補正を入れ、実際は7000rpm/BTDC20°って事になりますが、これですと

40φボアで7000pmであればちっと早いかなって感じで、ギリギリまで進角していると私は分析をして

いますんで、丁度良いと思いますね。売り文句通りだと思います。


でもって、異常な進角だと言われる通称デイトナ赤CDI、パワーアドバンスですが…

これは意外で、回転数低い場合には何故か遅角しているというわけのわからん仕様ですが、

8000rpm超えると固定進角気味で、ライブ換算でBTDC17°という無難な点火時期になっていました。

…これ、私もおかしいと思い手持ちの2個を両方とも測ったのですが、結果はほぼ同じで高回転では

さほど進角していないという点が見られましたね。

とはいってもノーマルよりははるかに全域進角といっても良いので、使い方を間違えなければ悪いモノでは

ありませんね。



とまあ、これらがとりあえず手持ちの物で取り溜めてきたデータなんですが…

中には放置プレイが過ぎてまともに信号を拾えなかったものや完全に召されているモノ、はたまた

実用には問題無いのに点火信号が弱い&たまにデタラメになるモノもあり、手持ちを全部は計測出来て

いないのですが、これだけでも各CDIの差異はそれなりに分かりますんで面白いですね。


で、これってどうやって測ったんだ?って思う方もいらっしゃると思いますんで、ヒントだけ出しておきます。


AF18系ハーネス加工でライブCDI装着 タイミングライトを駆使して測(以下略



これは街乗りGダッシュでの計測風景ですが、モノによってはSSマシンをエンジン空転させて計測を

行った物もあります。

左の様に秘密加工によりライブ系CDIも街乗り車体に取り付けて駆動させていますが、街乗りエンジンでは

ノーマルマフラーでも駆動系とか無負荷であれば12000rpm近くは回るエンジンなんで、これでも上等と

言う事なんですが(笑

(ちなみに排熱の問題や回転数維持の問題で、多数計測する場合はノーマルマフラーです)


で、右の写真が実際の測定風景ですが…これはAF18系エンジンだと非常にやりやすいというのも大きいです。

詳細は明かせませんが、右の写真はかなりのヒントって事でよろしくです。

あ、そしてこれ以外にもインナーローターとかも測りますが、「基準点」とかを決めるのは物によっては

結構ややこしい場合もあるので、創意工夫が必要ですね。



さて。今回かなり説明不足な点もありますが、その辺はやはりお勉強も大事ですので、ある程度の

基礎知識が無いと、いくら簡単に説明しても分からない点が出るのは道理なのでそれだけはご勘弁下さいな。

当HPを見られた方々の、「学ぶ意欲」を無くされない為に、「小難しい事を出来るだけ分かりやすく解説する」

のが私のモットーなのですが、やはりこの辺はサイトの注釈通り「中級者以上」向けって事でご勘弁を_| ̄|○


そして…順番が前後しますが、先程のデジタルCDIの点火時期について少々補足をば。

実際に使った場合、ZEROのデジタルとデイトナパワーアドバンスの場合、どうやってもデイトナの方が

「実際の力が出ている様に感じる」のは間違い無いんですよ。

もちろん、進角すればする程パワーが出るって物ではありませんが、それでもこの違いと言うのは

気になってしまいますよね?


ですがコレ、実は明確に「目視でも」分かる理由があるんですが。

その理由とは…この2種類のみの比較ですが



ZEROのCDIよりデイトナのCDIの方が


「点火のスパークが強い」


んですよ…


これ、何故か一般的にはあまり重視されない点だと思うんですが、これって大事なんですよ?

プラグをアースしてキックを踏んだ時点の「スパーク目視」で、あからさまに火が弱いと感じる様な

CDIだと、点火時期はどうあれあまり良い結果って出ないんですよね。

そりゃ、いくらエンジンをチューンしようが圧縮比を高めようがキャブをでかくしようが、それらに点火する

「プラグスパークが弱い」のでは、正直チューンの効果はだいぶ落ちます(断言

エンジンが効率良く動く為の三大要素は


点火・圧縮・混合気


ですからね。

点火が弱いと、せっかく作ったエンジンの性能をフルに発揮出来ない事も多々あるんですよ。

なので…こっからはいつもの語り口になりますが、私はストリートでも高級なプラグを使用しますが、

これはコストの問題もあるので他人様には無理にはオススメしません。

が、本来は出来る限り良い物を入れておく方がはるかに良く、IGコイルやキャップ、コードを良い物に

変えても、肝心のプラグさんがヘボでは効果半減ですからね。


さすがにフルノーマルでプラグの性能差を体感するのはFNマシンでも無ければ難しいですが、

ある程度チューンしたエンジンで、プラグの恩恵を体感出来ないのであれば、それは余程鈍いか

もしくは、各部設計等が間違っている適当で雑なエンジンと言う事になっちゃうんですよね…

(※これはパワー感や速度的なモノのみではなく、振動が減った等の症状も恩恵に含まれます)



後、これも誤解している方が多いと思うのでずばっと書いておきますが、上記の点火のチェックを行う時、

普通は「プラグをキャップに付け、それをエンジン等の金属部にアースしてキックを踏んでいる」

言うのが多いと思います。

が、これは私に言わせれば、「点火しているか、していないか」程度の「確認」をする手法であって、

本来、チューンドエンジンの「プラグスパーク力」を判断したいのであれば




プラグを車体金属部から2〜3cm離してキックを踏み


それでも稲妻の様なスパークが目視出来る




という位で無いと、本当の「点火力のチェック」にはなりません。

もちろん1cmアースを離しただけで火が飛ばないってのは点火力がかなり弱い証拠です。

プラグを完全に接地させてしまうと、壊れでもしていない限りは「プチプチ…」って感じで一応の

「火」は飛びますからね?

ですがそれでは駄目って事で、おもくそ強力な火花が文字通り空間を「スパーク」していないと、

点火力ってのは弱々しいとしか分析出来ないと言う事です。


後、それに加え…その点火系の点火力自体が弱い場合、ボアアップ等にて排気流速や掃気効率が

良くなったエンジンの場合、下手をすると高回転域ではプラグの火が吹き消されているという

症状もありえるんです。

高回転で妙にジェットを上げないとまともに回らないとか、力が無いとかの場合はこの点火が上手い事いって

いないと言う事もあるんですよ。


これと関連した分かりやすい例えで、アイドリング状態の排気音って、一定ではなく「バラバラバランバラバラ〜」と

いった感じで、高回転時やパワーバンド内の様には「一定した連続音」ではありませんよね?

こういった場合、実は





「混合気への完全着火と」いうのは


常に全回転で成功している訳ではない




んですよ。

これってどう言う事かと言いますと、仮にタコが1000rpmを指していたとしますよね。

クランクはもちろん60秒間に1000回転回っていて、もちろん「プラグの点火」も同様に、1000回行われて

いるんですが、プラグが火を打ったからといって




クランク1回転についての


1回の点火→着火→燃焼という流れが


100%成功している訳ではない



と言う事なんです。

プラグは点火しているけれども、混合気への着火→燃焼までは至っていない、と言う事ですね。

1000回転で1000回点火の内、着火して燃焼しているのは800回転程度かも、って言った方が簡単ですかね(笑


これは、音的には2stで大きめの排気量のレーサーレプリカとかだとよく分かるんですが、2stエンジンだと

回転数が低い場合でも色々な不安定要素があり、100%の着火→燃焼は行われていないんですよ。

なので、耳で分からないだけで、点火系に不備があるとパワーバンド域の10000rpmとかでも何回転かに

1回、いや数十回かもしれませんがちゃんと混合気に着火が行われていない状態も確実にありえるんです。

「点火」は出来てもちゃんと「着火」出来ない点火力ではパワーなんて出ないですからね。


そして世の中ではそれをカバーする為に、クランク1回転で1回点火という2st単気筒の定番を覆した点火システムと

いうモノも存在し、NSR50のアナログCDI点火だと上死点付近と下死点付近で2回点火しているというのは結構

有名な話ですし、一部スズキ系スクーターなんかはなんとクランク1回転で4回も点火しているんですよ(笑

あ、スズキ系はプラグコードパルスがそう拾うだけなので、実際は上死点付近以外ではごく弱い点火でしか

無いのかもしれませんが…

(※ちなみにスズキ車への社外タコメーターの不適合が多いのはここに原因があり、実際はクランク1回転で

4回点火のパルスを拾えるタコメーターだとちゃんと表示します。2st4気筒&4st8気筒設定って事ですね)


で、私はケチらないで高級プラグ一本の交換で症状が改善した経験もありますし、出来る限りフレームにアースを

通さないとか、ハーネス材にも気を遣うってのはこの辺に大きな理由があったりします。

正直、どれ程の効果があるかと言えば、体感で速くなるLVではありませんが、それでもチューンが進んで

行けば行く程、こういった点火力の差、そして点火の安定化と言う物は大きく差が出てくるんですよ。

またレーサーを例えに出して申し訳無いですが、エンジンノーマルのFNマシンでも、ハーネスの簡素化と

線材変更等を行えば目視でスパークが強烈になりますしもちろん体感も出来るLVですから。

SSマシンではDCの高電圧をCDIに直接叩き込んでいるのも同様の理屈です。

なので私は「見えない所だからこそ、余計に点火に「も」気を遣っている」という事なんですよね。

…本音ですと、チューンドエンジンでプラグをケチったりするのはオイルケチるのと同等位にオススメ出来な(以下略



そして、それ以外には、前述した様にCDIの個体差、メーカーの差によっても、かなり点火力は違ってたり

するんです。

A社は火が強いがB社は弱めの傾向、ってのは私もいくつか認識していますし。


で、ここでトドメを指す物言いをあえてするならば…

実は、この「火の強さ」ってのは




どんな使用状況にも耐えねばならない


「純正」のCDIが一番火が強い




んですよねコレが(笑

普通は社外CDIを取り付けてしまったらノーマルなんて気にしないと思いますが…

「純正ノーマル」って奴は、点火時期やリミッターの有無はともかく、朝だろうが夜だろうが

北海道だろうが沖縄だろうが富士山の上だろうが、始動性等は絶対に落としてはいけないので

ある程度強烈な火花が飛んでいて当然、と考えればつじつま合いますよね。


これは何度も言ってますが、私は別に純正一番の純正信者ではありませんし、コストのためなら何でもするという

純正体質ってのも好きでは無いですが…CDIは純正が一番火が強いですし、なおかつ寿命も社外に

比べればはるかに性能維持の時間が長いと分析しています。

CDIに寿命があるってのや古いモノだと火が弱いってのは定説ですが、社外品のコストと純正品のコストの

かけ具合を比べるのはこれは酷ってことですけどね…

なので、単純にリミッターが無く、点火時期もそれなりの純正新品CDIってのは結構良い点火をして

くれる物ってのはあるんですよ。


…もっとぶっちゃけますと、社外品CDIは総じて純正よりは火は弱いです(爆

今でもたまに耳にしますが、「CDIを変更して始動性が落ちた」と言う場合、「プラグギャップを狭くする」という

対策により、多少点火力を回復させてやるという手法があります。

これ、下手したらメーカーさんのCDIの説明書にも書いてある手法なのですが、この時点ですでに

自社のCDIは火が弱いぞ、と証明している事にしかなっていませんしね(笑


だからこそ、他の点火関係であるプラグやキャップをケチったりメンテをしないってのは余計にマズいんです。

仮に私がもしCDIを作るならば、そういう点に気を遣って作りますけどね…(笑



さて。

いつも通り長くなってしまいましたが、「点火時期」はともかく「点火力」と言う物に関しての重要性を少しでも

皆様にお伝え出来ればと思います。

こういうのは見過ごされまくりなのが現状というのも悲しいですが、一度理屈を知ってしまえば


「体感出来ない、もしくはしづらい物にもコストや手間を掛けられる」


といった風に人間ってなれるモノですからね(笑

「理屈を知り、そして納得出来ている」場合は、それが自分で体感出来ずとも、理屈のわからんオカルトグッズ

みたいな物と同じにはなりませんからね。

仮にRS125用のIGコイルを入れても全然体感出来ないかもしれませんが、入れるだけではなく最低限は

目視でプラグスパークをチェックしてみましたか?て事でもありますし。

ちなみに私なんか、プラグは絶対ケチりませんしプラグキャップやIGコイル等でも抵抗値を測った上で

使う物を決めています。

プラグの端子もダルマ端子以外は使いませんしね。

あ、もちろん「社外プラグキャップでも純正より抵抗値の高い物がある」ってのはココだけの話(略


「スクーター改造」に戻る