さてさて。今回は以前のコンテンツでご紹介した「点火時期」の件について、もう少し具体的かつ
現実的に掘り下げてみたいと思います。
おおまかな理論である、「上死点前にプラグに点火が行われている理由」や「明確なパワーバンドの
存在する2stエンジンだと、ピークパワー周辺領域ではいくばくかの遅角が必要」といった事を
イメージでもある程度ご存知である事を前提としてお話を進めますので、この辺をいまいち理解しきれていない
方はおいてけぼりになりますのでご了承下さい(汗
もちろん、その辺りについてもコンテンツ内で補足を入れていきますが、あまりに基本的な事までは
言及しませんのでご了承願います。
ここを読まれている方は「BTDC点火時期について その3」以降も続けて読まれる事を強く推奨致します。
※今回の「BTDC点火時期ついて その2」と次回以降の点火時期コンテンツは連動企画になっているので、
近日中にUP致しますので。
さて、この点火時期という物は、一般的な情報や知識としては、点火時期や進角についての言及はWEB上でも
多数見られるんですが、2stエンジンの点火時期に対して「本当に必要な部分」にてそこまで深く突っ込んでいる
所って、個人的にはですがほとんど無いな、と感じています。
基本的に4stエンジンをモチーフとした理論や、かなり難しい所まで突っ込んだ物ならあるみたいですが、それを
ぱっと読んでも初心者の方どころか一般の方が理解したり活用に結びつけるのはまず無理だと思います(汗
というか私も分かりませんが(笑
これは色々な要素が絡んでくるので、それだけ説明も難しいですし簡単に表記するなんて不可能である、とは
思いますが、その辺はちょろっとはなんとかしてご説明しようと思いますので宜しくお願い致しますね。
で、2stだとおおむね「パワーバンド内では遅角させるべし」とか「2stは高回転で遅角すべし」とかの曖昧な表現しか
無いかな、と私は受け止めていますが…
こういうのは、仮にあるエンジンが10000rpmでパワーピークが出るとして、じゃあそのエンジンは10000rpmで
点火時期は何度になってるのよ?と逆に問いたいですし、それが現状で仮に10000rpm/BTDC25°の
点火時期だとすれば、それはその点火時期が「仕様に対しある程度適正値のある点火時期に対し、
速いのか遅いのか」を判断しない限り、むやみに進角だの遅角だの言っても何も始まらないんですよ。
仮に上記の数値が「点火時期として遅すぎる」とすれば、いくらそのエンジンで一番パワーが出ている回転数な
上に高回転状態だとしても、「現時点から遅角」させる必要なんて全くありませんからね。
もちろん、エンジン自体の仕様が違えば最適な点火時期というものは「同一回転域」でも異なってきます。
同じ10000rpmピークでも、ノーマル風なのとビッグキャブポート加工圧縮比UPチャンバー装着等の
チューニングされたエンジンとではまた話は違ってきますね。
が、実際には、ベストな点火時期としては双方で10°も変わるとかって事はありえなかったりします。
…極端な話、この辺の曖昧さってパワーフィルター装着時のMJ番手UPとかと同じく、定番とも言える言葉だけが
一人歩きしているだけだ、と私は受け取っていますよ。
言葉尻のみを取り上げ、「そうしなければならない」的な根拠の無いイメージだけが広がっているかと。
この辺をある程度はきちんと把握しようとしない限り、エンジンが効率良く動くための三大要素である、
「点火、圧縮、混合気」の一つである「点火」をきちんと行う事は不可能である、と言っても良いでしょう。
これは敬遠されがちですが、チューニングを進めるならば放置してはいけないものなんですよね。
※今回も定番のページ内リンクの目次になります。
・点火時期という物の計測方法
ではまず、点火時期という物の把握、と言いますが実際の車両での点火時期の計測方法を解説して
行きたいと思います。
とは言いましても、これは計測だけを行うならば道具とちょっとしたアイデアがあれば簡単でして、
まず必須なのはなによりもタイミングライトになりますね。
あ、当然ですがタコメーターも要りますけどこれはさすがに割愛します(笑
タイミングライトは現在ですと激安系工具屋等でも売られていますし、精度は私は知りませんがそこまでアテに
ならない物では無いという話も聞いていますので、まずは一つそれを使ってみても良いと思いますし、本気で
必要になれば通常品を使えば良いかな、とも。
ちなみに私が使っているのは定番でパナソニックの「TL-3C」といった物になりますが、この品って
現在(2011年)だと少し前に生産中止になってしまっていますので、もし壊れたら代替品が必要ですね(泣
で、このテの物だと説明書には計測限界として「2stだと5000rpmまで」とか表記があるんですが、計測だけに
限って言えば別に10000rpmオーバーでもフラッシュライトが途切れたりはしづらいですし、実用には全く
問題が無い、という事も付け加えさせて頂きます。
が、ここで車両自体の高回転時の点火が不安定とかだと、タイミングライトの発光には結構ダイレクトに
響いてくる、というのも面白い点ですが(笑
高回転域の点火力が貧弱なCDIを使ったりした場合にはあからさまにタイミングライトの発光がおかしくなったり、
点火力どころかIGコイルからプラグまでの信号すら途切れ気味な場合だとモロに発光もばらつきますよ。
酷いのだと、ありえない点火時期までライトの発光が数度単位で一瞬でワープしたりしてしまいますんで、ね。
これだと…実際のプラグからの火花がどうこうではなく、プラグ以前にプラグキャップにすら届いていない
点火電圧自体がすでに不安定で途切れ気味であるという証明になります。
さすがに「プラグキャップより上流側」で点火パルスが不安定、と言われればCDIの能力もある程度判断が
付いてしまいますし、IGコイルがノーマル等の小さな物だとしても、それが「不安定さ」にはなかなか繋がりは
しませんから。
こういうチェックをするとCDIの点火力自体がどうたら、ってのもある程度分かったりしますよ。
では次に、そのタイミングライトを使っての実際の点火時期の計測方法をご紹介しましょう。
とはいえ、これも車種によって特別変化がある物ではなく、「点火時期の表記=クランク回転角度」という
基本中の基本を忘れずにいれば何にでも応用が効きますね。
実際には、ピストンが上死点=TDCにある時点でのクランク角度を「0°」とし、点火時期表記は「BTDC」、
「びふぉあ・とっぷ・でっどせんたー」ですから、上死点前何度か、という事になります。
これで上死点前何度のクランク角度にて点火が行われているか、を表記するものなので、まずはきちんと
「ピストンの上死点」を出す事が先決です。
分かりやすい例として、Dio系なんかはノーマルのフライホイールにTマークが刻印されており、クランクケース
側にもそのTマークが合う箇所があるので、上死点を出すのは何もせずともノーマルで出せる、という
素晴らしいユーザーフレンドリーな仕組みになってたりしますが(笑
で、フライホイールそのものの上死点位置刻印と、それの相方となるクランクケース側の合いマークが
あれば、そこを0°の基点とし、仮にタイミングライトがその合わせマークに対しフライホイールのTDC
刻印が「合っているとライトで判断出来れば」、点火時期は0°点、となります。
が、当然ですがそんな事はまずありえないので、実際にはフライホイールのTDCマークから進角側、
すなわちエンジン右側にあるフライホイールに対し、円周上の向きで言うと「右側」に向けて目盛りを
作ってやらないといけません。
実はこれも簡単で、元々TDC点に刻印のあるDio系フライホイールだと、そこから1°刻みの線を引いて
やれば「計測用の目盛り」が作れますし、ある程度の把握で良いのであれば2°ずつの刻みでも別に
悪くはありませんね。
縦型Dio系の場合だとさらにBTDC17°点にも刻印があるのでかなり楽勝の部類ですよ。
ちなみに、これはご説明するまでもありませんがこの場合の1°というのは「フライホイール外周÷360」です。
Dio系の場合だと約0.9o程度になりますね。が、これはフライホイール径が変わると変化するので参考までに。
もちろん、そういった合わせマークが無い車種だと、適当な所にフライホイールのTDCマークを
刻印してやり、ケース側でも計測基点となる箇所を設定してやらねばなりませんが…
通常のフライホイールだとその辺りを決めるのはある意味どこでも良くて簡単なのでですが、これが
インナーローターとかだとまたちょっと知恵が必要になってきますね。
とはいえそれはパルス発生点を見極めるのも含め、ちと難しいので今回は割愛しますが…そもそも
インナーローターの点火時期をしっかり計測しようとするLVの方であればココ読んでも意味の無いLVかなとも(笑
そして、そうやってフライホイール側の計測用の目盛りとクランクケース側の計測基点をこしらえてやれば、
後は1000rpm程度刻みでも良いのでエンジンを回して回転数を固定し、各回転数で点火時期が何度である、と
いったデータを取っていけばOKです。
で、具体的な計測はこの写真の様になりますが↓
これは実際のタイミングライト計測時を写真撮影した物です。
エンジンはAF18系ですが、このエンジンだとクランクケース側の三角の切れ目の真ん中がぴったりと
計測基点になるので、こことフライホイールの目盛りの合った所がイコールで点火時期になります。
(写真の注釈だと17°って書いてますが真っ直ぐ見たら16°の方が近いかなとも思ったり)
写真では紙を貼っている部分が見えるかと思いますが、これの左端をBTDC17°としていて、実際は
縦型Dio系のノーマルCDIだと基本的にほぼBTDC17°固定になるので、ここから遅角というのはまずありえない
設定といった事を私は知っていますから、進角側にしか目盛りを付けていない事も補足させて頂きますね。
…マジックでちょっとは遅角側の目盛りも書いていますが(笑
で、どこかで書きましたが、縦型Dio系のフライホイールだとピックアップマグネットがピックアップコイルを
「通り過ぎる」地点が丁度BTDC17°だったりしますよ。これは是非目視確認して頂きたいです。
なお、見たまんまでこの目盛り用の紙は、1°ずつ色分けした目盛りを印刷しています。
これだとタイミングライトで目盛りが見づらくなる高回転域の計測でも、一瞬の判断で「今は何色だ」と
いった事だけ判断出来れば、後から「何色の目盛りは何度」といった風に照合して確認出来るので、
安全面から見てもお奨めですよ。
単純にA4ならA4サイズの紙に印刷する設定を使って、実寸換算にて目盛り用の紙をデザインして貼る紙を
こしらえればそれでOKなので、ちょっとしたお絵かきソフトとプリンターがあれば簡単に作れますね。
…別に手書きでも良いんですけど結構めんどくさいですよ(笑
なお簡易的な物であればこういうのでもOKです↓
これはライブDio系のフライホイールですが、クランクケース側に基点を決め、それに合わせてフライホイールのTDCを計測&角度目盛りを設定しています。
14、17、20°の3点計測仕様ですがアナログCDIみたいな激変の無いであろう物の「傾向」を計測したいだけであればこの程度でも上等ですので…
ただし、こういう物でも点火時期1°が目盛り何oになるのか、等はきちんとしてないといけませんね。
とはいえ、ライブ系フライホイールってTDCのT刻印とBTDC14°時点のF刻印が元々あるのでこれまた
簡単な部類なんですが(笑
これがあるのにサービスマニュアルだとアイドリングの点火時期チェック方法はファンボルトでどうたら、って
書いてるのがわけわかめと(以下略
あ、もう一つ安全性の面の作業方法として、こういった点火時期計測をする場合だと、私は可能であれば
「クラッチシューからシューを取り外したプレートのみ」をセットし、スタンドを立てていてもリヤタイヤが
全く回転しないという駆動系構成をこしらえて計測します。
遠心力がかかり爆発する可能性のあるクラッチシュー自体、「存在しなければ爆発のしようがない」ので(笑
皆さんご存知の通り、あまりに高回転での長時間の無負荷空転というものは色々と不味く、大怪我をする
可能性もありますから、多岐に渡って計測を行う場合等ではこういった対策も必要ですね。
もちろん、回転物に目を近づけるので保護メガネ等も私が言うまでも無く必須です。
…ただし、いくら無負荷空転とはいえクラッチ以降の回転物の抵抗が無くなるのでエンジンのレスポンスが
かなり良くなり、計測の為のエンジン回転数固定がやりづらくなりますがリスク低減には換えられません。
インナーローター仕様の点火時期計測だともっともっとシビアになりますし、これは慣れです(汗
なおサーキット現場等の計測にて、どうしてもリヤタイヤを回転させる事が避けられない場合だと、可能な
限り駆動系の最少減速比を大きくしてやり、エンジン回転に対してクラッチシューの回転数が少なくなる様な
構成を使って計測したりもしますよ。
最大変速時の最小減速比が0.8とかだとエンジンが10000rpm時にはクラッチシューは12500rpmですが、
ボスワッシャーを無駄に追加するなりして最少減速比を1.0とかにしてやればエンジン10000rpmに対して
クラッチシューは10000rpmで済みますからね。
(※変速比が0.8だと厳密には減速比ではなく増速比になります)
仮にここまでやれたとしても微々たる物ではありますが、少しでもリスクは小さい方が良いので。
…今更言うまでもありませんが、リヤタイヤが宙に浮いてると実走行の全開時よりはるかに低回転で
変速を行ってしまうので余計に怖いです(汗
なおハンドルをしっかり握らずエンジンを回すとスタンドで立てている車体がずれる事もありますし、長時間の
無負荷空転の繰り返しだとファンを取り付けられていない点火時期計測では熱の面も不味くなってくるので
扇風機等でシリンダーを冷やしても良いですから、色々と知恵を絞って計測を行いましょう。
と言いますか、まずはこういった簡易表をこしらえ、これに計測値を入力していくのが基本です(笑
これは見たまんまエクセルさんのグラフなんですが、別にこういった物を使わなくても方眼紙と色鉛筆が
あれば折れ線グラフを書く事はさほど難しく無いですし、点火時期をきちんと測るのであればこういった感じで
データを取っておくと後々に生かしやすいですから、同一車種で同一フライホイール構成の車両であれば
CDI変更時やローターベース加工、はたまたピックアップマグネット加工等での進角&遅角加工における
点火時期特性の違いの単純比較もしやすくなりますね。
で、このグラフだと測ってるブツがキタコ製レーシングインナーローターですがそれはスルーの方向で(笑
これはまた機会があればご説明致しますが…こういったブツの場合、点火時期そのものではなく、インナー
ローター自体が「点火パルスを拾っているクランク角度」といった数値を、ローター側の構造的な磁石の
極の位置や磁界の切り替わり部分等を把握して分析しておかないと、単純に上死点の合わせをこしらえた
だけでは点火時期の「変化」を上手く把握出来ないどころかせっかくの計測値も有用に生かせません。
…これって説明するのがかなり難しいので今回は割愛しますが、構造を理解した上で測ろうと思えば何でも
測れる、という事の一例としてのサンプルとさせて頂きます。
さて、今回は具体的な点火時期の測定方法をご紹介してみました。
一応重要なツボを押さえたつもりですが、実際にやってみるとそこまで分かりづらいとか危険とか難しいとか
いうワケではありませんので、借り物で上等なのでタイミングライトでの計測を行ってみると面白いと思います。
で、本コンテンツの表題としてはその「点火時期をどう調整するか」といった感じが本来の主題ですが、
さすがにあれもこれもと詰め込むと意味不明になりがちなのでその辺は次回に持ち越しとしますね。
とはいえ、文頭にも表記しましたがこれを読まれた方は流れとして点火時期コンテンツシリーズの次回以降も
合わせてお読み頂けると理解が一層深まるかなと。
と言いますか、点火時期だけ測ってもそれを生かせないのでは何の意味も無いという(汗
それでは次回に続く、という事でよろしくです。