体感とプラシーボ効果 その3 純正IGコイルとプラグ



さて、ここからは「体感とプラシーボ効果」のコラムシリーズも最後、3つ目のお話になりますが。

ホットイナズマとオイルの件で、良くも悪くもプラシーボ効果と体感、といった事について正反対の

イメージを持つ場合の解説を行った訳ですが、もうひとつだけ分かりやすい例を挙げておきますね。


これは表題通り、イグニッションコイルとプラグのお話になるんですが、これも私自身、オイルとかと同じく

しょっちゅう掲示板でも言ってる事なので今更感の強い方がほとんどかと思われますが、一応のまとめとして

このコンテンツに記しておきたいと思います。

と言いますか、これはプラシーボうんたらにかこつけてついでにプラグ等のお話をしておこうかな、といった

真意が根底にあるのは言うまでも(以下略


まず、イグニッションコイル(以下IGコイル)ですが、これはCDIからの点火信号を受け取り増幅させ、

プラグに大きな電流を流して点火し、混合気に着火する為の装置ですが詳しい事をここで解説しても

あまり意味は無いので割愛しますが、要はIGコイルという物は


「プラグスパーク力、火花の強さを決める重要なパーツの一つ」


なんですが、これはCDIやらプラグそのものも同じなんですよね。

あ、社外CDIの点火力等については点火時期のコンテンツで解説してますのでここでは割愛します。


で、このプラグの「火花の強さ」という物は、強すぎて困るという事は全くもってありえず、不足している

状態ではデメリットが多く存在するので、特に重視しなければならない点なんです。

エンジンである以上はいくら混合気がシリンダー内に高密度で充填されていても、それを確実に燃やす為に

着火させられる点火の強さ、というモノはとても大事なんですが、IGコイルでも近年ではRS125用とかの

高性能な物を使う事がエンジンチューニングにおいては一般的になっていますね。

が、だからといって他の点火系をおろそかにしていてもいけないんですが…


そして、プラグ点火までの電気の流れという物を簡単にご説明しますと、仮にDC-CDI点火車であれば


バッテリー→CDI→IGコイル→プラグコード→スパークプラグ


といった様な流れになりますが、基本的には「上流側の方が大事」だったりします。

パーツを交換して体感しやすいのは下流のプラグやキャップだったりもしますが、それは大元が

しっかりしている事が大前提なんですよね。


ですが、いくらかはエンジンがAC発電しレクチファイアでDC変換され、そこからバッテリーにも補佐され

ある程度の電圧がCDIへ掛けられる仕様の車両ならばバッテリーの能力が低下していてもある程度

走行することは可能な位の点火電圧が稼げますが、完全DC点火車だとそうはいきませんから一応

セミDC点火車とも呼べる近年(でもないですが)の2stスクーター、ライブDioやリモコンJOG等はバッテリーが

弱っていると点火力まで低下してしまうが走ることは走る、という事は皆さんご存知かと思われます。


これはある程度メンテ不足でも走ってしまう事が多いですが、エンジンそのものが混合気をかなり

多量に詰め込む高効率エンジンであったり、点火自体の間隔が短く点火電圧の高速なレスポンスを

必要とする高回転型エンジン、もしくは絶対的吸入負圧が大きくなり、ノーマルとは比較にならない

多量の混合気を吸い込んでいるボアアップ仕様等であれば、「点火力」に不具合が出てくると全く

走らなくなってしまい、バスバスと点火そのものが失火してしまう事も事実としてありえるんです。

…さすがにそういった状況を経験した事が無いと分からない事ではありますが。


これは、ノーマルやライトチューン、いや私の経験上そこそこのLVのエンジンチューンであれば

多少の事ではそれらの点火系統が不味くて明らかなる不調を引き起こす、という事はありませんが、

ある一定のLVを超えてくると、とたんにいくらキャブセットを行ってもプラグを高性能な物にしても

まるでリミッターがかかったかの様に失火が収まらない症状が出てくるんです。


さすがにこれはちょっとハイレベルな事なので、実際に経験された事のある方はあまり多くは無いかなと

私は分析していますが、これは事実でそういった事もある、という認識でお願いしたい所です。


で、ノーマル車だと一種でもニ種でもIGコイルが極端に異なる物が装着されているという事はあまり

無かったりしますが、これは逆に考えると「原付ニ種のノーマルエンジン」であれば「原付一種の

ハイチューン」よりも点火力は小さめでもいける物である、とも言えるんですね。

当然、排気量の大きいニ種だとCDI側そのものでも構成が一種と同じという事はまずありえませんし、

IGコイルだけを見て判断するのはやや早計ではありますが、ホンダ系だとリード100(リコール部品?)位しか

一種とニ種で明確に異なるIGコイルが採用されている車両が無い、というのも事実だったりしますよ。


…さすがにホンダさんもセミDC点火仕様で100ccもあるといくらエンジン効率が悪くともその位は

余裕を持たせてきている、とも考えられますけれど…パーツリストで見るとリード100用って50と変わらない

気もするんですが、過去にCDIとかIGコイルとかの大きなリコールがあったみたいなので、そっちの

交換品は大容量化しているのかも、という推測でして、少なくとも何かしらの不具合はあったのではと。

基本的にホンダのIGコイルは見た目が同じでも品番違いがかなり多いですが、私も全部試した訳では

ありませんけど特筆すべき程に明確な違いがあった、といった経験は無いのでどんぐりの背比べ、だと

認識していますよ。

それとホンダ原付一種だと2stミッション車でもIGコイルが同じっぽいですしね(笑


で、ここで例題に上げているのはあくまで「ホンダ2st系スクーターのIGコイル」であり、これが

ヤマハ系だと元々結構余裕のある物が採用されているので、多少の事では能力不足にはならないと

いった事も付け加えさせて頂きますね。

ホンダの物は能力不足な為に、そこそこのハイチューンにおいてはいくらプラグを良くしようが抵抗値の

小さいプラグキャップを使おうが間に合わない、という事はあるんです。

単純には判断出来ませんが見た目だとどう見てもヤマハ純正の方が高性能っぽいでしょ(笑


なおホンダ系純正IGコイルの場合、一概には言えませんが排気量的に60〜70cc程度ある物を10000rpm

オーバーにピークパワーを作る、といった感じまで行くともう足らないLVになってきます。

が、これが50ccのままのハイチューンならば11000rpmオーバーでもまず失火することはなく、力強いとは

言えませんが「明らかにおかしくなるLV」までは余裕が無い事は無い、という事で。

特に、排気量を大きく上げたりビッグキャブ等でエンジン内部への混合気充填効率を高めていくと

こういったリミッターがかかったかの様な失火現象は出やすいという傾向は大きいですね。

ただし、私の場合はそういった状況でもプラグが安物だったりはしなかったので、安物プラグだと

もっともっとエンジンのチューニングLVが低い段階で不調を起こす可能性は大きいです。


で、ニ種のノーマルで90ccや100ccあったとしても、ノーマル風味であるならば小排気量車をチューンして

行ったのとはまたワケが違う、と言う事も覚えておかれると宜しいかとも。

混合気充填効率が高効率ではなく、排気量が大きいだけである程度を稼いでいるエンジン構成の場合は

点火力というものはそこまで高くなくてもいけたりもしますんでね。

よくある粗悪品ボアアップ等でも、見かけの排気量「だけ」が上がったエンジンなんかだといくら排気量が

増えても点火力不足にはなりづらく、純正ノーマルの「ニ種排気量エンジン」のLVにすら混合気充填効率が

遠く及ばないのではまず点火力不足に陥ったりしませんし(笑


なお、掃気効率の良いエンジンやチャンバーからの新規の戻しが高効率なエンジンだと、こういった

点火力不足という物は結構起こりやすかったりしますが…

これは点火力が弱い、イコールで高密度の混合気に「着火出来ない&燃やせない」という事です。

混合気ってのはいくらプラグだけが「点火」しても噴霧化したガスに「着火」出来なけりゃクソの役にも

立ちませんし、一瞬で爆発する様なモノでは無いのでちゃんと燃やしてやらないとダメ、ってだけです。


これはちと言葉が悪い…のはいつもの事ですが、ホンダ純正のIGコイルを使ったままで、こういった

事例に遭遇した事が無い場合だと、そこまで高効率なエンジン構成にまで昇華させきれていない、とも

言えたりするんですよ。もちろん全部が全部当てはまるワケではありませんが。

少なくとも、これを経験されている、ホンダ系純正IGコイルは微妙であるといった事をスタンスとして持って

いる方であれば結構ハイレベルな知識と経験をお持ちの方であろう、と私は判断したりもしますね。


あと補足で、これはレース用途限定になりますが、キタコのインナーローターなんかはホンダ用の場合、

冗談抜きでCDIが無い為にIGコイルの性能がモロに点火力に直結したりするんですが、これを使った

場合だとノーマルIGコイルである場合は点火力不足が顕著で、IGコイルを変えないと真っ当には運用が

出来ない場合もある、という事もあったりしますよ。

モトクロッサーのインナーローター流用等は、点火時期等はともかく2極の大型コイルでの電力を全て

IGコイルに送り込む為の高効率システムである、といった事も考えてみるとよく分かるかと思います。

…点火時期だけがある程度決め打ち出来れば良いのであれば草刈機用みたいなモノで上等なので(笑


とまあ、最初にホンダ純正IGコイルの貧弱さをご説明した訳ですが、これも「自分には失火現象が全く

起こらないからIGコイルなんて変える必要は無い」というのもあまり良くない事でして、良くしてやる事の

デメリットはコスト位しかないのに、あまりに軽視しすぎるのも悪い意味での思い込みなんです。

もちろん、必要も無いのに交換しても大きなメリットは出ませんが、元々頼りないものであるといった事を

「知って」いれば、先行投資や後に起こるかもしれない謎の失火トラブルを回避する、という事も出来ます。


で、プラグについても全く同様で、ちょっとやそっとでは安物プラグでも電極が融解したり碍子が割れたりは

しませんが、高負荷をかけ続けるとどうしてもプラグ本体のトラブル、といった事に見舞われる確率は

上がってきてしまいますね。

もちろん、よほど長期間プラグを交換してないとかであれば問題外ですが、450円クラスの標準プラグでも、

私はノーマルエンジンで運用するにしても「2000kmも使えば交換すべき」だと考えています。


これまた言葉が悪いですが、オイルではありませんがプラグにしてもお高いのを入れるのが嫌ならば

安モンを頻繁に交換していく、といったスタンスは絶対に必要であり、エンジン実動要素である「点火、圧縮、

混合気」の一環を担うプラグを放置しまくり、なんてのはあまりに軽率な行動なんです。

あ、重ねて申しますがこれは「ある程度動けば良い」といったスタンスの方には当てはまりませんけれど…


これも「プラグなんか換えてもほとんど体感出来ない」と感じられる方もおられるでしょうが、

前述のホットイナズマと同じく



「自分で体感出来ないから」といって



効果、作用が0であるという事とは



イコールにはならない事も多い




と。改めてこれを認識して頂きたく思いますよ。


…そりゃ人間、何でも感知出来る程のコンピューター的な超感覚があるのであれば誰も困ったりは

しませんが、そんな人普通は居ませんしそれが出来たら神様ですよ(笑

私にしても、前述の様なホットイナズマやら何やらも完全な体感のみをアテにしては間違う事もあるだろうと

認識しているからこそ、様々な実験や実証を行った上で「判断」を行っているワケでして。

これってですね、あんまり自分を過信しすぎて「これは体感出来るからOKなんだ!」とかって

勢いだけでモノを言うってのはお前は小学生かよ?と私は感じてしまいますんでね(笑


で、もののついでに昔…とはいっても今でも言われている事もあるのでしょうが、巷でよく言われた


「イリジウムプラグは2stには効果が無い」


といったアホみたいな理屈
を取り上げてみましょう。

あ、これって私個人的にこういう理屈って大嫌いなのでちと言葉がきつくなりますがご容赦をば。

…ちなみに内容は以前の掲示板からの引用も含みます。


まず、「イリジウムは2stには向かない」というその根拠ですが、これは「2stだと燃焼室内のプラグは

毎回転点火なので、同一気筒数の4stに比べると実動時間が同じであれば負担がはるかに大きく、

プラグに対する負荷がでかいのでそこまで耐久性も出ず、せっかくの極細電極での強力スパークを

保てない、生かせないという感じだと私は把握しています。

(どうしても4stに比べてカーボンが堆積しやすい、というのもあるでしょうが…)

が、それを言うならばですね、高負荷の掛かる2stエンジンだと「プラグ自身の融解、焼損」を防ぐ為に

電極部分が高負荷に耐えられる、といった設計になっているメリットはとてつもなく大きいんですよ。


これは経験された方もおられると思うんですが、安物プラグである程度使い込むと碍子部分にクラックが

入ったり物理的にもげ落ちたりしてしまう事ってあるんですね。

これも、「プラグそのものの耐久性」が低い為に起こるのであり、それを防ぐ為に高級プラグだと電極が

イリジウムでアースフックはプラチナ、なんてモノもあります。

これはプラグ本体の熱価と同じく、高熱が連続して加わってもそう簡単にはプラグが破損しない為の

対策であり、1回転で1回燃焼している2stの場合、プラグを冷却する暇も無いのでこの点はかなり大切なんです。

…碍子部分が欠けたりしてもエンジン内部ってそれなりにダメージ喰らいますからね(汗


ちなみに蛇足ですが、「1回の燃焼」に対する熱的負荷、という物は2stより4stの方が大きいので

4stエンジンでも1つの気筒で1回転に1回ずつ燃焼が起こっていたら、プラグ自体への負荷ってのは

2stよりも大きくなってしまう筈なんですけれどね。もちろんそんな事は物理的に絶対不可能ですが(笑

4stの場合、燃焼済みオイルがプラグに堆積しづらいのと2回転のうち1回転は燃焼していない、と

いう事がかなりの放熱的なメリットを生んでいる、と言う事も覚えておかれると宜しいかとも。


もういっちょ言うなれば、2stと4stの単気筒同士で排気量が同じ場合、クランクシャフトで発生する

「トルク」ってのは「カタログ値」では2stの方が高いですが、これって何故かと言いますと…


4st単気筒エンジンの「トルク値」という物は


「吸入→圧縮→燃焼→排気」といった


4ストローク分(クランク2回転分)の「平均値」


だからなんですよ。


2stだとその言葉の通り「2ストロークで1サイクル」なのでクランク1回転、すなわち2回のストロークで

1回分の燃焼サイクルを行っており、1回の燃焼ではクランクシャフトを1回転回すんですが。

これに対し、4stの単気筒だと「4ストロークで1サイクル」ですから、1回燃焼した力でクランクシャフトを

回す動作を「2回転」行わなければならないんですね。


当然、最初の1回転「のみ」は高い混合気充填効率と圧縮比により「1発」では2stよりも大きな

「トルク」を生み出せますが、その1発目のトルクによるクランク回転の惰性によって2回転目を

回転させ、次回の工程を行っている訳で、要は


「1回転目(燃焼→排気)」は同一排気量の2stよりトルクが大きいが


「2回転目(吸入→圧縮)」はかなりトルクが減衰している」


という事なんですよ。

もちろん、この場合のトルクってのは曖昧な物ではなくクランクシャフトを回す「力」です。

なので、車両メーカー発表値の「トルク値」ってのはその「2回転の平均値」を記しているので

実際には「1回転目」のみなら2stよりも大きなトルクを発生させているのが単気筒の4stなんです。

仮に1回転目は1.0kg-mを出していても2回転目は0.5kg-mに落ちる、という状態ですね。

この辺りは圧縮比が10:1とかあり、なおかつバルブにて吸入〜排気工程がきっちり分かれており、

混合気の充填もある程度しっかり出来るといった4stエンジンのメリットが生かされています。

分かりやすい点を挙げると、ノーマルでは非力と言われるモンキーとかカブのコンロッドとかクランクって

エンジン出力値の割に意外とゴツいでしょ、と(笑


もちろん、2stエンジンでも混合気充填効率が良いチャンバーを使ったりすれば1回転のトルクでも

4st以上にトルクを出せる場合もあるはずですが、これはあくまで一つの基本、という事で。

…しいて言えば、4stエンジンという物は単気筒ではなく、多気筒で無いと真価を発揮しづらい

いう事は大いにあったリする、と私は分析していますね。

これらは知ってる人には当然の事なんですが、エンジンの基本中の基本なので…


と、話がすっ飛びましたが(笑

これ、2stエンジンでのプラグの熱的損耗という物は、要は4stで言う吸入工程でシリンダー内部が

冷却されるサイクルが十分では無いから大きく起こりえる物である、という事を言いたい訳です。

2st4stの単気筒エンジン同士がタコメーター計測で10000rpm回っているとしても、4stの場合は

プラグで混合気を燃焼させているのはその半分の5000rpm分しかない、と言えば分かりやすいかと。

エンジンが燃焼を行っていない状態だと吸入混合気で冷やされている、とも言えますね。

単気筒なら「音」を聞けば一発で分かりますが、4stって明らかに回転音が低いでしょ、という事で(笑


そしてそのプラグ本体の温度、熱を逃げやすくするという「プラグの熱価」という物も、これは

「プラグ本体が熱に負けて焼損しない様に調整する」物であり、番手UPで燃焼室温度を下げられるのは

あくまで副産物な物になります。

高級なプラグは点火力の向上は当然としても、プラグ本体が「硬くて強い」という点とあわせて覚えて

おかなければいけませんね。


で、話をさらに戻して、確かにイリジウムとかだと電極が細い為、周辺にカーボンが堆積したりしてしまえば

どうしても点火力は衰えてしまいますが、そんなものは標準プラグでも同じ事なんですよ。

汚れてくれば性能は低下する、という至極当然の事です。

これ、「値段のワリに持たない」という事を「2stには意味が無い」といった感じで値段的コストパフォーマンスの

せいにしているにしか過ぎない、と私は受け止めていますね。

そこそこ高価なのにあまり持たないじゃないか、といった風潮が引き起こした大いなる誤解というか

ただの「こじつけ」だと思いますよ…


で、それもある意味当然と言えば当然なんですが…通常、排気量に関わらずノーマルエンジン車であれば

標準装着プラグをそのまんま使い続けていても、一般的にはトラブルが起こるかよほど距離を走らないと

交換なんてしませんよね?

本来は2stである以上、何千kmも持つ訳がない「プラグ」というものをあまりにおろそかにしているからこそ

それなりの値段でもあまり長時間は使えない事があるといった品が良い印象を受けないのでしょう。

2stスクーターでも、ここを見られる方であれば皆さんある程度はノーマルではなくてエンジンパワーを

向上させ、プラグに対する負荷も大きい仕様になっている場合がほとんどだと思われますが、仮に

そういうエンジンに450円LVの標準プラグを入れていても、実際に何km程度の運用で交換されて

いるのでしょうか?

そもそも安価なので劣化具合すらさほど気にしていないのでは?


前述の通り、450円ならば2000kmも行かずに交換しても私は悪くないと思いますし、いじくったエンジンで

あれば、劣化を感じるとか微細を気にする方であればピストンリングでも3〜4000kmとかで交換していく

場合も多々ありますよね。

それは行うのに、もっともっと負荷がでかくて酷使されているプラグの交換サイクルは長め、という事自体が

すでにおかしいんですよ。

前述のオイルではありませんが、仮にボアアップ等でエンジンの熱量が極端に増えているのに何も

対策せずにそのままガンガン走るなんて方はまずおられないでしょう?

もっと言えば、2stエンジンを運用する限り、プラグなんてケチっては何も出来ない…というのは私のいつも

言ってる口癖になりますけれどね。

「高い点火力」をきちんと維持しないとエンジンのパワーもスムーズさも好燃費さえも求められませんし。


そしてちょっと補足ですが、EリーチならR-7376とかの高級な部類のレーシングプラグってありますよね。

これって、電極はイリジウムでアースフックはプラチナなんですよ。

HリーチならばR-5530という物がありますが、これも電極がゴールドパラジュームでアースフックは

プラチナ製だったりします。

これらは融点がニッケルとは桁違いの所にあるものなので、2stエンジンでの運用といえどそうそう

電極が融解したり破損したりする事は無いですし、私もこの手のプラグが「破壊」された事って一度も

ありませんしね。

あ、材質的な融点というものはちょっと調べれば分かりますのでその辺は割愛します。


…言葉尻だけを取るのであれば、「2stにはイリジウムは向かない」なんて、じゃあレーシングマシンで

レーシングプラグを使っている場合はどうなるのよ?と思いますが。


イリジウム電極のプラグが2stエンジンに本当に不向きなのなら


ハイチューンエンジンやレーシング的な2stエンジンだと


一体どんなプラグを使えば良いのでしょうか?


ランクを落としてNGKのVプラグやプラチナVXなんでしょうかね?

「お高い」プラグで高性能品ってのはってイリジウム電極ってのも多いんですけれどねえ…


私はストリート運用でもそれなりのプラグを使いますが、それが本当に「向いていない」のであれば、

色々なプラグ周りのトラブルの頻発を経験していないとおかしいでしょう。

もちろんそんな事は無く、「プラグ自体の耐久性」も、450円程度の物と数千円の物では桁違いに

高いですから、「やばそうな状況に陥っても、プラグ破損でエンジンに大ダメージが行かなくて済む」と

考えても悪くは無いんですよ。

万が一、プラグが焼損して焼け落ちたりしたらピストンやヘッドのみならずシリンダーやら場合に

よってはクランクシャフト等までもを破損してしまい、事実上全損に近くなってしまってもおかしくは

無いんですから…


そして、ちゃんと運用していればそんな阿呆の様に汚れまくったりはしませんし「強い電極」もそうそう

カドがなくなって来たりはしません。

さすがに私もそんな1000km程度で高級プラグを新品交換、なんてストリート運用ではやりませんし(笑

レーサーとかならメンテするから持つんだろ、と思う方もおられるかもしれませんが、そもそもメンテを

ロクに行わずに自分の満足するLVのパワーも維持したい、ってんなら元からパワーがあるとか排気量の

大きい車両のフルノーマル車乗ってれば良いのでは?って私は考えますよ。


で、こういった電極の細いプラグはカブらせたら復帰しづらい、というのはありますがこれは当然でして

一般的な「BPR○HS」とかホンダ指定のうんこプラグ「BR○HSA」とかだと、電極部分と碍子とアースフックが

「極端に燃焼室に飛び出る設計」になってますよね?


これは、プラグ電極等にトラブルで生ガス等がべったり付いたとしても、


プラグ先端部自体が高温の燃焼室部分に「晒されやすく」


そのおかげで表面に付着した生ガス等を焼き切りやすい


というメリットがあります。


が、対するレーシングプラグ的な物だと電極部分はほぼねじ山の中に隠れていますが、これだと当然のごとく


「カブった時には復帰が難しい」のですが…その反面のメリットとして


高温状態の燃焼室内で「火炎核に晒されづらい」


ので、電極部等の熱的な負荷は電極飛び出しタイプに比べて低いんですよね。


左がBR○HSAで右がBPR○HS ここで一つ比較画像を出してみますが、これは標準プラグですが左がBR○HSA、右がBPR○HSになります。

左のBR○HSA、この末尾の「A」というのはホンダ純正で指定されている特殊電極形状なんですが、ホンダ2stスクーターだとこれを採用していますね。

が、このタイプはご覧の通り、電極自体が太く長いので点火効率は悪い上、なおかつカブった場合の洗浄性能を高める為に燃焼室に大きく突き出す形状をしています。



…これは過去に100回位言ってると思いますが、私は個人的にこのHSAタイプは大っ嫌いなんですよね(笑

上記の通り、一般的なBPR○HSと比べても電極周りの「特性」が、カブり気味になった状態をカバーする

いった一点特化の特性しか無い為、プラグ自体も他の同一値段帯の物に比べて耐久性が無いと

感じますし、点火性能なんてどこ吹く風なので。


これ、ホンダさんをバカにする訳ではありませんが、カブってしまった後の事を考えるよりもまずは

やすやすとカブらない様なエンジン構成を形作る事の方が先決なのでは、と思いますし。

いつもの口で、起こった事に対して対処療法を施すのではなくそれが起こりえる可能性があるので

あれば先に「元を絶つ根本的な対策」を行わねば本末転倒なハズなんですけれどね…

この辺、ホンダさんが自社のIGコイル等の点火力を「ある程度」までしか付与していない、と考えれば

つじつまが合わない事もありませんし、「いじり止め」の一環なのかとも勘ぐってしまいます(笑


で、ここで450円程度のグレード品で一番「マシ」であるBR○HSを出しておきましょう。


BR○HS これも、上記の標準的な物と比較すればその目的と構成がよく分かるかと思います。

これは標準品プラグならば一番「マシ」でB○HV等と同様の構成を持つタイプの「BR○HS」なのですが…

最低でもこれを使うのが良いと私は考えていまして、BR○HSAとかBPR○HSってのは私からはお奨めしないですね。

あ、別にRタイプの抵抗入りである必要はありませんのでB○HSでも全く問題無いです。


これ、私がエンジンチューンとかをお手伝いした方だと重々ご承知かとも思いますが(笑

ヘッド側のプラグ位置というか電極ハイトの影響もありますが、最低でもこのタイプを使いましょうと

いった「仕様」ですし、イリジウム等を使う場合も絶対にこれと同じ電極タイプを選ばないとダメです。

なお、市販一般の「イリジウムプラグ(NGKのIX)」だと、BR○HIXがこれに該当していますね。


で、次にもういっちょ比較画像をば。


左がR-7376で右がB○HV これは左が完全レーシングタイプの「R-7376」で、右がまあまあのグレードの「B○HV」になります。

ちなみにこのHリーチでそこそこの性能を持つB○HVって数年前にもう絶版なので入手出来ませんが(泣

上記の標準品の「BR○HS」だと右のB○HVと同じ感じで碍子は引っ込んでいるのもお分かりかと思いますよ。

…が、それが「最高」って訳ではなく「最低限度LVの形状」なのでそこは誤解無き様に(汗


この写真だとよく分かるかと思いますが、左のR-7376だと沿面に近い形状でして、材質が落ちていて

Hリーチ用のR-5530も形状的にはこんな感じですが、もはや一般品や多少グレードの高い物とは

根本的に異なるのが見て取れるかと思います。


こういうのは前述の通り、高温になる燃焼室内に極力電極や碍子を突出させないといった目的を

持ってこういった形状になっているのであり、エンジン温度が同一ならばこういった形状の物の方が

高温の火炎核、もしくは燃焼混合気に晒されづらいので、負荷といいますかダメージを喰らう影響も

小さめになる、というのはもはや言うまでもありません。

だからこそ、阿呆の様にカブらせなければ、同一グレードのプラグでも電極へっこみタイプの方が

「耐久性」については上だったりしますんで。

碍子&電極が燃焼室に派手に飛び出すタイプは、高負荷での運用を行わない事が前提の設計&指定

なんですよね。


「高温になる燃焼室内でその程度の先端の突出具合で何が変わるんだ?」と疑念を抱かれる方も

おられるかとは思いますが、では何故に高負荷で使用するのが前提の高性能レーシングプラグだと、

基本的に電極と碍子がプラグのねじ山内部に隠れている物が多いのでしょうか?

熱的な損耗を極力低減するのは当然としても、燃え盛っている燃焼室内にモロに晒されていなければ

燃焼済み混合気、すなわちカーボンとなりえる物質だって電極周辺には付着しづらくなるから、と

いうのも合わせて考えると決して理論が破綻している訳では無いと思いますよ。

ちょっと開け損ねると途端にカブってしまう可能性もありえるシビアなレーシングエンジンにて、

わざわざプラグカブりからの復帰力を犠牲にしてまでそういった形状の物を使う理由、という物を

考えてみればおのずと答えは出てくるんですよね。


…でもって、一般に何故その手の物が装着されておらず、純正互換イリジウムプラグもBPRタイプの

推奨が多いのかと言えば、冷間時にエンジンかけてかけてすぐに走り出す、とかチョーク引きっぱなしで

無理矢理アクセルを大きく開けて走る、といった「普通」の状況を想定しているからですね。

世の中、そういった使い方の方が一般的ですし、そんな事されると電極突出タイプにしておかなければ

何も知らずにイリジウムなんたらに交換してもすぐカブりまくって走らせられない、というクレームが来る事は

間違いないので(笑


これも「エンジンかけてすぐ走り出す」といった運用を大前提とした設計なのであり、性能的&耐久性的な

モノを求めれば反比例して当然なんですよ。それを「汎用性」と言っても良いかと私は考えていますね。


で、ここで一つの例なのですが。

前述の通り、私がチューニングをお手伝いした方へのエンジン運用だと、プラグは前述の様な「突出タイプ」は

避けて運用して下さい、とお願いしているんです。

ヘッドの構成等で突出があまりに多いとピストンにHITする、と言うのもありますが主目的は前述の様な

所にあるんですね。


が、そういった電極&碍子引っ込みタイプのプラグを入れたからと言って、始動時にカブりまくって

走れないとか、低速走行を繰り返していると次回の始動性が極端に落ちた、といった症状って普通は

まず出たりはしないんです。

…正直、電極先端のみが細いタイプのLVのストリート用イリジウムプラグ「ごとき」を使った程度で

極端にカブらせるとか、短時間で汚れきってしまう、となればチューニングエンジンにて一体どんな無茶な

運用の仕方をしているんだ、といった感じにしか私は受け取れませんね。


…そういった明らかにおかしな症状が出ないのであれば、運用上においては


「標準品に対して多少はカブりから復帰しづらいプラグでもいける」


という証明にもなるんですね。


コレ、カブるってのはよくある表現ですが、私個人としては多少ガボガボいってエンジンがばらついて

うまく回せない、といった程度であればエンジンを暖めていけばその内カブりは取れると考えていますし、

その程度のカブりではプラグ自体が死んでしまうという事はまずありえないんですよ。


本当にプラグが失火しまくりで能力が死んでしまっている、となれば発進すらままならない

状態にまで失火しまくりますし、いくらエンジンを暖めてもカブりは取れずにパスンプスンと

おかしな回転を繰り返し、アクセルをどう開けても変化せず、それでも無理矢理回そうとすれば

キャブから火が出る位のバックファイヤーを起こす事だってあるんです。

さすがにこれは直キャブでないと目視は出来ませんし、そこまでプラグの調子を殺してしまうと

いった経験がある方はさほど多くないと思いますが、所詮「走れば回復する」LVのカブりであれば

そんなもんプラグ自体の洗浄作用がまだ生きているLVだ、と言えるので問題視するLVでは

無いんですよ。


本当に走れもしないしどうにもならないしキャブから火が出る、といった状況にまで陥ってしまう事が

頻発するならさすがにもうちょっとセットを見直しましょうとかそういう方向性になりますが、世間一般で

言われているカブっているというのは完全にプラグさんがお亡くなりになる、といったLVとはちょっと

乖離しているのでは、と私は受け止めていますね…

あ、もちろんキャブセッティング中の表現の語彙の一環としては私もカブってるとは言いますけど、

「プラグが完全死する程の状態」を指し示しているのでは無い、という事で(汗


とまあ、プラグ関連についてはこんな感じの解説になりましたが…

「イリジウムプラグが2stに不向き」なんてのはタイトルとあまり関係ない気もしますが、私としては


自分の体感で明確な効果が「感じられない」のを


「機械的作用が無い」事と勝手に同一視しているだけ


と、こういう感じ方もあるからこその風潮なのでは、と考えていますよ。


前回のコンテンツでも書きましたが、何でもかんでも体感で感じられないというのを「効果自体が無い」と

判断してしまうのは早計でして、仮に自分が乗ったことの無いノーマル中古車に初めて乗ってみて、

「この車両はこんな感じが基本なんだ!」なんて分析する方はまずおられないでしょ(笑

メンテがどの位出来ているかも分からない物の「第一印象」で大局を判断する、なんてのは何の

基準にもなりませんからね。


なので私は、


イリジウムプラグが2stエンジンに不向きだという意見は


全くもっておかしな意見である


と、こういう事になります。


そもそも、その「体感」ってのも性能に対しての体感なのか振動やらエンジン音に対しての

体感なのかで話が違ってきますが…よくあるっぽいパターンなら「イリジウムプラグを入れたけど

アイドリングが安定して振動が減った位で加速が良くなる訳でも最高速度が伸びる訳でも無かった」

いったインプレはたまに聞きます。


これ、確かに2000円弱を出して多少の変化しかなく、なおかつ性能的には全く変化が見られて

いないのであればそれだけでは正直がっかり感もあるかとは思うんですが…

ここで頭を柔らかくして考えてみると、「アイドリングが安定して振動が減った」といった、プラグのみを

交換して起こりえた効果を、プラグを変えずに発生させてみると考えればいかがでしょうか?


もちろん、プラグは元のままで450円の標準新品プラグを使い、その上で「アイドリング回転を安定させた上で

エンジン振動を減らしてみる」という事ですよ。

単純に考えても、それを行おうとすればまずは点火系、プラグキャップやらコードやらの交換とかを行い

CDIも社外を止めたり新品交換したりしてちゃんと火を打つ様にする事、キャブ等を掃除して混合気の供給を

安定させるのも良いですし、エアクリを掃除なり交換なりしたり、リードバルブやブロックを新品交換するのも

良いでしょう。


チャンバー、マフラーを新品にしても劣化が激しければ改善はするでしょうし、エンジン自体の振動を

減らす、となれば劣化していそうなシリンダーやらピストンやらリング等、はたまたクランクシャフトや

クランクベアリングを新品交換しても良いですし、クランクシャフトは芯出ししてもベターですよね。


ヘッドガスケットやベースガスケット劣化で二次エア吸ってるなんて問題外ですし、キャブ廻りの

Oリングやゴム類が傷んでいてもダメですし、ホンダ車ならオイルポンプ周りも大切になってきます。

その辺をメンテして消耗パーツを交換すればアイドリングが安定してくる、という事もありえますよね。


と、ここまで書けばお分かりかと思いますが、エンジンの振動を低減させる、なんてのはそうそう簡単に

出来る事ではなく、点火力の安定化と失火の確率を減らすといった事はかなりの高効率で前述の一連の

劣化部分をカバー出来る物であり、他でやろうと思ってもそうそう簡単には行かない、という事でもあるんです。


そりゃ、明確に加速感やらパワー感が上がらなければ「プラグ変更の効果が無い」と感じてしまっても

当然ではありますが、逆に振動低減やらアイドリングの安定感を出すのはそう簡単な事ではありません。

この辺を誤解してしまうと、そのプラグによって受けている恩恵が「それなりに」大きいものである、と

いった認識を完全にすっ飛ばしてしまうんですよ…

エンジン内部を触らずにエンジンの状態を変えられる、なんて結構な事なんですよ?


これは私、いろんなコンテンツに書いていますが人間って「明確に変化がある」物にはお金や手間を掛けて

いきがちなんですが、コストの割に効果が「体感出来ない」とかの場合だと、自然とそういった物には

重要性が高いのに敬遠してしまう方向性になりがちなんですね。

心理的な問題ももちろんありますし、コストパフォーマンスの面でも個人差はある事ではありますが、


体感出来る、出来ないではなく


何がエンジンにとって大切なのか


といった事を見極める方向性を


いついかなる時も絶対に忘れてはならない


と。私はこういうスタンスをお奨めしたい所ですね。


不満が無いならいじくらなくても良い、ってのは私いつも言ってますけど、エンジンをチューンしていき

手を入れていくのであればノーマルの無改造の様には行かないです、という事ですよ。

どこかでも書きましたが、「体感出来ないモノにお金と手間をかけられるか」ってのはこういった理論と

正しい認識が無いとまず出来ない事であり、それが出来ない内は初心者かな、と私は考えてますね。


もちろん、スクーターいじりの経験が少ない初心者の方とかですと、いきなりそんな事を心がけても

体感と結果が相反してしまって混乱する、といった事は確実に起こりえますし、体感だけを信じても

いけませんが、ある程度の経験を積んでしまえば「経験と体感だけ」に頼っていてはダメだ、という事も

おのすと分かってくる物なので…これが自分で分かってやっと中級者かな、と思います。


結局、この一連のコンテンツで私が何を言いたいかと言えば、プラシーボ効果もですが実際に自分が

体感出来る、出来ない「のみ」で物事を判断するのはよろしくない、という事なんですよ。

某知恵袋とか一般的な掲示板等での質疑応答を見てたりしますと、イリジウムプラグの件にしても

「自分が体感出来なかったからこれは効果は無い」と決め付けてる人ってちらほら見るんですが。


それ、「自分には分からなかった」だけで「本当に効果が無い訳では無い」のでは?といった可能性を

完全否定している物言いなんです。

…正直、あなたは神様ですか?といった感想を持たずにはいられないですが。

こういうのは「自分の体感が一番、それ以外はプラシーボ効果だ」なんて理屈に繋がりやすくなって

くるのが明確なんですけれどね_| ̄|○


自分には体感出来なかった、もしくは体感力にさほど自信が無いのであれば、「自分には効果が全く

感じられなった、だがあなたが使うと効果が出る、分かるかもしれない」といった物言いを

すべきでは、と私は思いますけれどね。

こういう物言いならば自信が無いとかそういうLVではなく、れっきとした「自身の感想ありアドバイスである」と

私は考えます。


私自身、分からない事は分からないとはっきり言いますし、体感で効果が出ていればそれは理屈を

差し置いてもオールOKである、なんてのは一番嫌うという事はここまで読まれた皆さんであれば

すでにご存知かと思いますしね。

私が「断言」してる事ってのも、それは一度や二度の実験とか体感のみで得た事ではなく、きちんと

理論的にも立証している事が大前提です、と言っても良いでしょう。

…ぶっちゃけるとプラグ関連だとこういう適当な人間のインプレや投げやりなアドバイス等が元で

おかしな論調が飛び交っているな、という面もあると私は分析していますが、ココを読まれた方なら少しでも

物事を柔らかく考えてみる、といった方向性に向いて頂ければ嬉しいですよ。


そして最後になりますが、これはこの一連の流れ、と言いますか他の所でもちょこっと書いていますが、

体感出来ない部分に対して手間や時間、お金をかけるという事は本当に難しいモノでして、これらが

分かって来るまでには結構な経験も苦労もお金も時間も必要だとは私も思います。


ですが、体感出来ない物は気にしない、追及しないというスタンスは絶対に不利である

断言しても良いでしょう。

で、それと同じ語彙になるかもしれませんが、私は結果的に「速けりゃOK」というのはあまり好きでは

無いんですよ。

当然、速いのを否定したりはしませんしパワーがあって嬉しいのは私も同じではあるんですが…


最終的に速いとかパワーが出せている事に越した事はありませんが、どんな要因があったからパワーが

出たのか、もしくは出なかったのかを考えないと「後」には繋がりませんし、少なくともチューニングって物を

今後も楽しんで行こうとするならば「求めている性能が出たらそれで完結」して何も考えない、というのは

間違い無く後々に損をしていく方向性になりますんで。

そういうスタンスだと壁にぶつかった時にあっさり挫折する、ってのも私色々見てきていますんでね…


自身の経験だと、峠でもレースでもそうでしたが、どうしても望んだ性能や特性が出ない、どれだけ手数を

こなしても上手く行かない、といった所にぶち当たってしまうと、もはや「やり口」や「理屈」を考えて

前に進むしか道が残されていなかった、なんてのも何度も何度も経験していますし。

…人間、それが出来なければ挫折して物事から逃げて辞めるだけの話なんです。

私自身、長年に渡って広義の「スクーターいじり」を続けられているのも、物事の追求、分析を諦めて

いないからだ、という事にもなりますしね。


そしてある程度まで行くとまた壁にぶつかり、また初心に帰って今までやってきた、学んだ事を掘り返し、

その上で場合によっては経験則が間違っていたという事を「認める」度量も勇気も必要ですし、そういう

思考の柔らかさ、というのも結果や体感だけに頼っているのではなかなか育たない傾向がある、という事も

あわせて記させて頂きますね。

あ、当然ですが人の話を最後まで聞かないとか自分より「下」の人間の意見は箸にも棒にもかけない、と

いう場合はもはや問題外だ、ってのは言うまでもありません(笑


そして本当に最後に、今回のコンテンツの総括として、私の好きな言葉を一つ引用させて頂きましょう。

それは



愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ



…この言葉ですね。


まず勘違いしないで頂きたいですが、私は自分が賢者だ、なんて吹聴するつもりはありませんし

この言葉はそういった意味ではなく、


自分で失敗をしてこそ学ぶ事もあるが


まずはそれを起こさない様に


先人&他人の経験、知識から学んでおくべき


といった意味合いが込められています。


解釈を広げれば、自分で失敗したくないのなら最初から物事をナメてかからずに真摯に取り組み、

分かったつもりで自分の経験のみに頼るのではなく先人の文献や知識等「にも」目を向けていこう、と

いった事になりますね。

石橋を叩いて渡る、といった感じも含まれるかと思いますが…これは何度も言いますが、私は経験だけに

頼るのはダメだ、と言っているのではなく、人の意見も参考にした上で取り組めば初見での失敗の確率も

ぐっと減らせる、という事を言いたい訳なんです。


もちろん、キャブセッティングみたいに経験も積まないと出来ない事、というのもありますが、かといって

ジェットの意味とアクセル開度の関連性も知らずにジェット換えまくっていても、運が良ければその内に

まぐれ当たりが出るだけであり、そんなモンは何の経験にもなりゃしませんしね。

あ、当然ながら「こういう仕様だったらジェット何番位にすれば良いのか」ってのを人に聞け、って意味では

ありませんよ(笑


経験則のみに頼っていると頭が固くなる、ってのはどんなジャンルでも周知の事実ですが、先人の

歴史とも言える「知識」でも、自身の経験がついてこないと実感出来ない事も多々ありますし、だからと

言って必要も無いのに小難しすぎる部分を一点特化で勉強してもまず役には立たない、という事も

往々にしてありえるんですが。


例えば…ハイオクとレギュラーの違いみたいな物で、成分がどうとか洗浄性がどうとか言う前に

自分のエンジンはそれらがきちんと生かされる程に詰められているのか、もしくは運用出来て

いるのか、をまず考えないと、誰も彼もがレギュラーとハイオクを入れて試しただけでは正確な

物事のインプレみたいな批評、分析なんて出来る物では無いですよね?

オクタン価の違いが燃焼効率やプレイグニッションの誘発に関わってくる程に圧縮比を限界まで

詰めているのかとか、ヘッドの廻りの設計をシビアに行っているのかとか、点火時期はどうなのかとか

そういった点を無視して論じても全く意味は無い、と言えます。

はっきり言って市販車ノーマルエンジンのLVでガスの違いを論じても全く無意味なLVですしね。


点火時期にしても、私は速けりゃOK、というのはまずやりませんし、ある程度の絶対基準である数値、

10000rpm/BTDC20°程度、という物も自身の経験と手数のみから生み出されたものではなく、「先人」の

貴重なデータである「NSR500・ハイパー2ストエンジンの探求」といった書物から物事を学び取った上で

自分で長年かけて実証しても不明瞭な点は出ず、理論に破綻もなく納得も行ったといった経緯がありますね。

これも、その本を鵜呑みにしたのではない所が一番のポイントです。


…だからこそ、こういった場合でも経験則と体感「のみ」で物事を判断しようとすると間違ってしまう

事か多くなる傾向が強くなる、といった事は絶対に忘れてはいけないんですよ。

何でもかんでも先に勉強しましょう、とは言いませんが、ある程度の経験を積んでいる方なのであれば

体感や手数のみではどうにもならなくなってくる、といった事は確実に起こりえるので、今回のコンテンツの

様な、体感だけでは分析、把握しきれない事柄も大切だ、という事はお分かり頂けるかなと

私は信じておりますよ。

人間、ある程度「出来る」様になってくると慢心しがちですが、知識的には常に自己改革を目指していないと

脳味噌ガチガチになってしまうだけなので、ね…

私、経験「だけ」を盾にしてオラオラ言ってくる人間って嫌いなのは言うまでも(以下略


そしてここでやっとこさ表題に繋がりますが



巷の「プラシーボ効果」を見極めるには


確固たる理論と豊富な経験の両方が必要であり


理論と経験のどちらから突っ込まれても破綻しない


「きちんとした実証」が出来れば最良である



と、簡単ではありますが私の言葉としてまとめさせて頂きますね。


あ、これについて捕捉ですが、実際には理論と体感が乖離する、という事もさほど珍しくはありませんけれども

そこで何をどう考えていくのか、というのもミソになります。

体感が間違っている場合もありますし、自分の頭の中の理論が間違っている場合もありますがこういった場合、

意固地にならず「頭を柔らかくして物事を多面的に見て考えてみる」というのが一番の良薬になる、と

私は考えて生きていますね(笑

そういった場合でも、歴史すなわち先人の記録や理論、という物は大変役に立つ物なんですよ。

ただし、どんな人間が言う事でも残している事でも、全てを頭から鵜呑みにする、というのはダメだと

いう事は…余計な補足でしょうかね。考えるのはあくまで「自分の頭」である、という事は忘れてはいけません。


と、さすがに3つ目は長くなってしまいましたがこの辺りでおしまいにしましょう。

これでもかなり要点を絞ってプロットを考えてはいるんですが、長くなるのはいつもの事ですしここまで

お読み頂いた方であれば問題は無いでしょう、というのもありますしね(汗


自身の体感と俗に言われるプラシーボ効果、この2点を無理矢理絡めて色々な事について書き連ねて

みましたが、比較的誤解されていそうな物を選びましたんでプラグにしろオイルにしろ、その必要性や

重要性を、「自分が体感出来るか否か」に関わらず、自身の経験も思い出しながら考えてみると面白いかと

思いますよ。


「スクーター改造」に戻る