2011年5月1日 SS1/32mile KLS戦



さてさて今年もやってまいりました。2011年のSS参戦記になります。

そして毎年恒例となりつつある緒戦はダメダメ、という法則に則り、レポートする気も無いダメな

結果だった事を先に記しておきますね_| ̄|○


…もう今回はレポートとか書かないつもりだったんですが、エンジン内部の状態というか

そういうのをネタに出来るかなと思いその辺だけ書いておく事にします。


掲示板でも書いたんですが、今回は処々の事情によりシリンダーを作り直せたのがレースの

3日前であり、慣らしもろくに行えず実走行は一度もしていない、といった状態でした。

それなりに減っていたシリンダーを新しく作り直し、チャンバーに合わせての特性変更を行った

精密ホーニング済みシリンダーなのでいきなりぶん回すのは避けたかったんですが、これも

ある程度練習レーンを走った程度でレースに臨みましたが、ベストでも4秒5台というもはや

調子が悪くてどうこう、のLVですらなくなってきた遅さでしたよ(泣


で、「特性のみ」に、的を絞って物を書くとですね、BSC製チャンバーで以前のシリンダーだと

排気タイミングはBBDC100°に近い状態まで速かったんですよ。

異常だと思われるかもしれませんが、それ以前のkozzyやいもむしチャンバーだと、そこまで

しないと13000rpmオーバーでの美味しいピークパワーが稼げなかったんですが。


かといってタイミングを遅めにして12500rpm程度にピークを持ってきてもパワー自体はいまいちと

までは言いませんが当時のタイムで4秒2程度なので、それを打破する為にチャンバー単体を

鬼の様なピーキーな設計にしたんですよね。


このBSCチャンバーだと、上記のBBDC100°近い排気タイミングだとピークというかパワーバンド

そのものは14500rpm程度まで持続するので、いくらなんでもここまで要らないだろうと考えて

排気タイミングはぐっと遅くしていて、それでも今回のレースの走行ではピークは13500rpmが

使用上限というデータを取る事が出来ましたよ。


それに加え、物理的に排気ポート開度の位置を下げる事により、キタコリングの1本リングである

ゆえの圧縮抜け具合もカバーするつもりでした。

排気掃気が遅く、なおかつ物理的に排気が低いと狙い通り下がもりっと出てきたのである程度

余裕というものは出たのでこれは正解でしたが…

(※当然のごとく、排気高さが変化しても圧縮比は同等になる様にヘッドで調整を行ってます)

問題は、変速回転数が落ち着いた頃にはがくんと加速力が落ちてしまう、という事になります。



で、その原因こそが何であるかが現地ではさっぱり分からず、これを書いているレース2日後の

今の今まで、各部を入念にチェックしたりしていたわけですが(汗

結果、こりゃコンロッドの大端が壊れてるわ、という説が濃厚になっています_| ̄|○


3年前のキタコピストン導入前にも同じような悪循環に悩まされましたが、あの時にも結果的に

コンロッド単体の曲がりがあり、それによりシリンダーの横方向の片側のみに酷いアタリが

付きまくっており症状に気づいたのですが、今回はもっと酷かったですよ…


左 右


シリンダーを下から見た状態ですが、この縦傷が結構入っている様に見えるのがアタリで、

通常、きちんとピストンプロフィールを加味してクリアランスを決定した上に、精密ホーニングで

真円度も出しているシリンダーで、たった10数本程度の走行でこんなになる事なんてまず

ありえないです。

加えてキタコピストンは「横方向」が縦方向に比べて狭めなので。

ピストンだけではなく、ストローク自体が「大幅に横にズレてる」としか思えないですね(汗

当然ですが、これでもコンロッドそのものには縦方向のガタはなく、小端部の頂点を揺すっても

左右方向への傾きは許容範囲でしたが。


うしろ こちらはシリンダー後ろ側ですが、かなり酷いです。

まるで抱きついたのか、とも言うべき首振り跡はありますが、これは排気弦長がかなりレーシング仕様なのとブツが新しいから、という事なので…

そこではなく、一本だけ縦に向かっている筋がありますが、これが一体どこに付いてるんだと(笑

シリンダーボアの「真ん中」に付いていないんですよ…_| ̄|○


しかもリングの稼動範囲にまでアタリが突き抜けて付いてるのも不自然です。

これも、前回の広島までは走行後にエンジンを開けてもこんな異常なアタリ方はしていなかったと

断言出来ますが、何故に今回だけ、しかもシリンダーは新しいのに、と。

ちなみに、シリンダー自体のボアがスタッドのセンター部分にいないという説も考えられますが、私は

加工ベースにするシリンダーはそれもチェックしますんで、これに限ってボア径自体がどっちかに

ずれていた、ってのはありえないです。

まるで、「シリンダーを右側に強く押しながら組んだ」かの様な状態ですが、仮にそうやって組んだと

してもこんな異常な事は起こらないんですよね。

なのでおかしいのは腰下だ、という結論になってしまわざるを得ませんでしたよ。


もう一つ、シリンダーヘッドといいますかピストントップ、ここにも異常が見受けられました。

ピストン上死点時のピストンクリアランスなんですが、これは私今回は「0.4o」にて設定して

運用していたのですが、見事に一部分だけピストントップとヘッドが接触していました。


打刻跡 右側の方にデトネーション跡と白く円弧状にカーボンのない所があります。

ヘッド側にも同等の跡が見られましたし、確実に接触していますね。加えて掃気の焼けもおかしいですし。

とはいえ、0.4oあれば十分とは言いませんが高回転でもピストントップとヘッドは当たらないというデータはありますよ。

「当たらないはずなのに当たっている」事自体がすでにおかしいんですよね(泣



実際に前回の広島戦まででも過去にスキッシュクリアランス0.4oという運用を行っていた事もありますが、

明確にHITした跡があった事は一度もありませんでした。

これが0.3o以下だとちょっと不味い、と私は考えているんですね。

今回はピストンの上死点時の肩落ち0.1o+ヘッドガスケット0.3oで、ヘッド側の90°部分は0と

いう設計なのですが、これで当たるはず無いのに当たる、と言う事は余計にコンロッドの問題が

出てしまっているかと推測出来ますね…

あ、もちろんピストンのカドとスキッシュエリア角度がちぐはぐとかいうポカはやってませんよ(笑

同等どころか+側に安全な余裕を持たせてヘッド作るのが私の主義なので。


そのコンロッドも、頂点部のガタというか左右の触れ具合は許容範囲なのに、大端部を持って

横方向にスライドさせる動作を行うとガクッと1o位動いてしまっているというオチで(笑

数日前にエンジンを組んだ時にはこんなの確実に無かったのにいつこうなったんだ、と…

今回のレースの負荷でこうなったのか、もしくはたまたま運が悪かったのか…

悩んでも始まりませんが、とにもかくにもコンロッド大端部はもうダメ、腰下をなんとかしないと

次は無い、という始末に成り果てましたよ_| ̄|○


で、このコンロッドの件は数年前にも経験しているので、次にまたトラブルが起こる様であれば

対策を、と考えていたアイデアはあるにはあるんですね。

コンロッドを流用するとかそんな感じなんですが…どうせならそれに加えてストロークに対する

クランクを押す角度的な不味さも改善したいな、と考えていますよ。


最近はモトチャンプでもネタがあったと記憶していますが、この39x41.4の構成のエンジンって

縦型Dio系の場合はコンロッド長が80oなんですが、それだと明らかにコンロッドが短いんです。

詳細は割愛しますが短いと効率が悪くなることもあり、同等ボアxストロークのNSR50なんか10o

以上コンロッド長いですからね。やっぱちゃんと考えられているんですよ…


一時これを考えていて完全にお蔵入りしていた案件ですが、可能であればせっかくなのでこれも視野

に入れて腰下というかクランクシャフトをなんとかしてみたいと思ってます。

実は流用できそうなコンロッドは以前に見つけてますしね。

側方吸気であるが故、混合気が大端部には当たりづらく大端の耐久性が無いのは縦型のDio系の

基本なんですが、普通はこれより先にクランクベアリングが逝かれるのであまり気にされる方も

おられないとは思いますが、私何度かはDioのコンロッド大端部を壊した事があるので。


それに加え、台湾赤クランクだと大端部にはオイル穴は開いていますがそれでも足りず、樹脂が

邪魔をして余計に潤滑不足になっている、というのが超高回転エンジンでは足かせになっている、と

いった事を痛感している今日この頃ですね_| ̄|○


と、レポートではなくトラブルをネタにしたうんちくになりましたが(笑

さすがに今回は復活が遠そうですが、もういっぺんリフレッシュさせてみたいと思ってますので

しばしの時間を頂きたく思いますです。


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