2012年5月13日&10月7日

SS1/32mile KLS戦まとめ



さてさて…これを書いているのはすでに2012年の10月でして、前回の5月の地元戦に関しては

ハナから実験の為だったのでレポートは無し、といったスタンスになっておりまして(汗

とはいえそれで得たデータと確証を元に、10月の地元SSは今までと全く異なるアプローチ方法での

トライ&エラーとなりましたので、簡単なまとめだけを記しておきたいと思いますです。

(※レポートや人様の紹介は一切ありませんのでご了承下さい)


2012年5月13日


まずは2012年緒戦である5月13日のSSですが…

ココ2年位、ベストタイムにすら遠く及ばない謎のトラブルを抱えている我がSSマシンではありますが、

今回は心機一転して今までとは全く違う方向性のシリンダーを用意し、こういった方向性だと特性や

トラブルの方向性はどう出るのか、といった実験を行うといったスタンスでした(汗


とはいえ、チャンバーが変わったり駆動系構成が大幅に変わったりする事は無く、大してピーキーでもない

シリンダーでして、それに対して今まで使っていたキタコのピストンではなく、もっと前に使っていた

くたびれたモノを組み合わせてみたんですね。


正直、2011年時点では何が原因で4秒4とか5しか出せないのかもう原因が分からない状態なのは皆さんも

ご存知かと思いますが、元々付いてたパーツなんて全く残っていないにも関わらずタイムどころか原因も

分からない、というのは困ったもんです_| ̄|○


2010年の最後に、クランクシャフトの不具合だけは判明したのでそこはまあ問題は無いと思えますが、

どうしてもエンジン的なフィーリングが納得いかず、昨年度は2機のシリンダーをこしらえたのですがその

どちらもパワー回復には至らずで…

こうなりゃ新し目のピストンもひっくるめて全部違うものにしてやれ、となった訳で(笑


で、結果から言いますと…どうやら復調の兆しは見られました。

変更したシリンダー自体はあまり良い特性とは言えませんでしたが、それでもある程度「下」がある分

タイムにも反映された様で、4秒3程度の安定打には持ってこれましたね。

そして昼休みに、まさかと思いましたが念の為、「昨年度不調だったシリンダー」を突っ込み、それに

組み合わせるのは「調子の良かった時使っていたおんぼろピストン」という…トラブルシュートの意味合いしか

ないセットに残り時間を当てる事にしまして。


が、これが結果的にそれなりに走ってしまいまして…

かなり劣化しているオンボロピストンのくせに、昨年度シリンダーを組み合わせるとタイム的には4.312、

ぎりぎり納得出来るか出来ないか、といった所のタイムが叩けたというオチになりました。


これって分析から察するに…


良かれと思って新品に交換していた


キタコピストンそのものが


数レース分は


悪さをしていた


という、なんとも煮え切らない結論になってしまいました_| ̄|○


…今回はシリンダーは中古でこなれた物を精密ホーニングし、ピストンクリアランスを十二分に取った

上での運用だったのですが、新し目のピストンだと妙にもっさりしている上に抱き付き気味の様な感覚で

あったのに対し、中古おんぼろピストンだとそういったフィーリングが一切無く、パワー感が戻ってきていると

いった感じでは、もはやピストンしか疑うべき所がありません。

当然、リングはこの日の為に慣らした新品で、そのリングで一日運用したので要因はリングでもありませんし、

なんともはや、新品購入してじっくり慣らして使った物が足を引っ張っていたとは私も全くもって予想が付いて

いませんでしたよ(泣


さすがにキタコピストンといえど純正品ではないので、微細な寸法的なばらつきがある事は承知した上で

運用していたのですが、定期交換品としているモノの一つにこんな罠があるとなればもはやこの時点で

「信頼性」はがた落ちになってしまいますね…しかも寸法等が悪いのではなく熱膨張が異常にでかいという(泣

そもそもこのキタコピストンって、他車用のものでもそうなんですがリングの柔軟性に特筆すべき点が

あるだけであり、1本リングの超高負荷であるSS用途だとリングの減りは無茶苦茶に早いですし、ピストン自体は

ちょっと軽量化とかに傾倒しすぎて耐久性はそれなりだな、と思っていたのが本音ですが(笑

…しかし、純正リングじゃあどうしても脆いので他に手が無いんですよAF18系ってば_| ̄|○


でもって、タイム的には自己ベストの4.067には程遠いですが…これでも以前より特性ががらっと違って

いるので発進辺りは唸って全く進んでおらずあくびが出るLVでしたが、完全ミート後のパワー感は全盛期に

近いものを感じ取る事が出来、エンジンそのもののパワー自体はある程度復旧の兆しが見えてきた、といった

感じです。


とまあ、原因っぽいものがある程度分かったのは良しとしますが、実は「次」のシリンダーとピストンはちょっと

別方面から実験的なパーツをサポートして頂いていたりし、それをベースにこしらえる事になっていたので

別に今回は腰上ぶっ壊してもそこまで痛くない、という観点があったからこそ割れるかもしれないLVの劣化済み

キタコピストンで無茶が出来た、という怪我の功名的な一件だった、とも言えますね(笑

が、「次」はキタコピストン仕様では無い為にまた違ったアプローチが必要なのですが、これはまた別のお話、と

いう事で次回SSまでにはコンセプトを完成させて実働状態に持っていきたいと思いますよ。



と、掲示板からの一部引用文で手を抜きましたがここまでが2012年5月のSSの顛末となります。

そこからはじっくりと「新しいブツ」を分析して加工を仕上げ、慣らしも出来る限り行った上での実戦テストと

あいなったのが10月のSSですが、そちらは以下で…



2012年10月7日


さて、この日は今まで使っていたキタコピストン仕様から一度離れ、違ったパーツをベースとした方向性での

腰上を製作しましたが…これってぶっちゃけて言うと純正シリンダー+純正ピストンの併用仕様で、

リングはちと秘密ですが他車種流用品を使った構成、といった物になります。


これ、リングに関しては06〜07年とかのSS記で記している様に、純正の場合だと2本リング仕様においても

このSS用途、13000rpmオーバーを常用するといったスタイルではまったくもって耐久性が無く、何度も何度も

リングを叩き折ってしまっていたのは皆さんもご存知かと思います_| ̄|○


排気ポート弦長がボア径の70%ちょいでも、上側一直線形状だと一発でボン、という事にはなりませんが

SSを数本走るだけでリングがまっぷたつになったりしてましたし、他には別の要因もありましたがリングの

合口部分のみが欠けてしまう、といったわけのわからんトラブルも頻発していたので、扱いはかなり難しい

部類に入ってしまうんですね。

これが8000とか9000rpm程度の常用ならよほどの事が無い限りは破損は起こりえませんが、その辺りとは

文字通り「桁が違う」ので…


そしてこれ、同じ純正でもライブDio系のリングだとかなりの柔軟性が持たされているのでメーカー側でも結構

材質的な特性を変えてきているのは間違いないのですが、残念ながら40φと39φといったボア径の差が

あるのでそのあたりの流用なんて不可能なのも悲しい所です(笑


で、シリンダーも含めて全てが新品パーツなので、まずはこの流用リングに対して馴染むかどうかも

未知数といった感じですから、かな〜り余裕を持った仕様、として加工を施していきます。

ぶっちゃけるとハイパワーが出るとかは全く考えておらず、最低限度の修正のみを施したという

お試し仕様とあいなりましたよ(笑

…だって一発で無茶してフル新品仕様を壊したら何の為の試用実験なんだか(以下略


最低限度の緩い加工修正のみ で、これが現物のおNEW腰上になります。

排気ポート弦長はボア径の70%ですが、ベース品はZXのHGシリンダーなので幅的にはほとんど変わってはいないという(笑

タイミング自体はBBDC93°にしているので「上」には引っ張っていますが、左右末端までの「落差」はかなり余裕を持たせてます。

頂点部分から最大弦長部分までは5o近く落差があり、阿呆の様な安全パイですね。


通常は定番ストリート仕様としても2〜3o弱に抑えるのでこれはかなりのデチューンになります(爆

何が何でも上側一直線がベターという訳ではありませんが、排気ポートは開口時間が長い場合にはどうしても

リングは引っ掻きやすくなるので、耐久性を鑑みるとストリート仕様ではある程度は「落差」を付けますが

写真のマジック線でお分かりの様に、ここまで大きな落差を付けることはまずありえないLVです。


…通路内部も最低限度しか「抜いて」おらず、はっきり言って私がこしらえる依頼品等での50cc純正ベースの

加工と比較してもかなり遠慮しているという、レーシング仕様とは到底呼べない仕様にしてみました(笑

あ、掃気ポートも目的の値にタイミングを揃えて修正、平滑化したのみで拡大等は行ってませんね

なおピストンの刻印を見て頂ければお分かりの通り、まごうことなきGW0品番品ですよん。



そしてこの腰上を組み付け、アイドリングから時間をかけて無負荷の慣らしを行い、1.5リッターのガスを

喰わせきって6000rpm程度までの慣らしを行った所で、「慣らし仕様」のパーツを組み込んでサーキットへ

実走行での慣らしに向かいます。


そこらへん走ってそう(笑 と、フォークをノーマル状態にしてリヤサスを調整し、クーリングファンとエアシュラウドを取り付け街乗りシートをくっつけた仕様です(笑

タイヤが細いのもあり、この状態って個人的にはカッコ悪くて好きではないのですが…平日を選んで慣らしに行ったのにそういう時に限って走ってる人がいる罠_| ̄|○

あんましこのマシンの慣らしは見られたく無いのですが、サーキットしか実走行で慣らせる場所なんて無いのでやむなしですよ(泣


駆動系は劣化してる物をぶちこみ、チャンバーも今となっては劣化しすぎて使いづらいkozzyチャンバーを

装着し、満タンに近いガスを入れて徐々に慣らし走行を行っていきます。

最終的に高負荷で使う場合、熱を入れて冷やす、といった事を新品の内に「実走での負荷」をじっくりとかけて

おくと持ちが違うのは基本中の基本ですから、もったいない事をしたくない私は最近はこうやって実走行での

慣らしを行う事をモットーとしていますよ。以前の様にお金も突っ込めないのが実情なので(泣

…ボアアップ等の新品でも全く慣らしをしない方なんてまずおられませんしね(笑


そしてWRを重い物でしばらく走り、パワーバンドを外すと立ち上がれないというある意味面白い特性を

堪能しつつ、数km走ればもう少し上を使って距離を稼ぎ、どんどこ慣らしを進めて行きますが…

排気ポートの上側落差を極端に大きく取っている分、パワーバンド外でもいつもの様にはパワーが落ちて

いないので、完全SSシリンダーの慣らしよりは乗りやすさ的にはるかにマシですね(笑

しかし、カートランド四国はストレートはそこそこ長いので、高速1コーナーに入る時点では11000rpm程度の

変速でもスピードはすでに70km/h程度は出ている為に、数年落ちのTT91を駆使して貧弱なSS車体を

ムリクソ曲げていくのもこれまたオツなもんですよん。

…ロングホイールベースだと曲げられねー事この上ないですが(爆


そして、結局12000rpm弱までの回転域を慣らしきった所でタイムアップでした。

ちょうどガス欠になりかけたのもあり、3リッターちょいを消費して50km程度を走れたので、まあまあ慣らしと

してはOKな範疇ですね。


前 うしろ


腰上を開けてみると…5.5/100程度のピストンクリアランスではちと負荷的に怖い点もあったのですが、

シリンダーはともかくピストン側には大きな熱膨張がある点は一切無く、パーツ的に安定したのは間違いないと

いった確証が得られましたよ。

一番不安だったリングも極端に破損があるとか減りがあるとかは無く、実際に13000rpmオーバーでの

無冷却運用は行ってませんがまずいける範囲だろうと確信し、10月7日のSSに望む事とあいなりました。


いつもの そしてSS当日、エントリー台数が少ないと聞いていたのでぼちぼちとサーキット入りしたのですが…

色々な方が来られていて意外と楽しかったのは秘密です(汗

私自身、今日一日はレーシング運用を行ってみてリング等の耐久性がどうなるのか、が一番の目的なので、問題なく世間話等に花を咲かせられるという(笑

前述の様に、この腰上の加工具合では絶対的レーシングパワーなんて出る訳無いので最初から割り切ってますね。


で、1本目から実走SS慣らしの段階に入り、慣らしの日に行えなかった回転域、12500rpm程度を使って

練習走行レーンを走り、さらに実走負荷にてちょっとずつ慣らしていきます。

さらっと一本だけアタックもしてみましたが、タイムは案の定の4.701という、個人的に笑えるタイムでした(笑

この1本ではっきりしたのが、クラッチイン〜加速状態に入る段階では普通に加速していますが、実際に

変速が始まり加速していく段階では妙〜にエンジンが重ったるい感覚があり、これはもっともっと慣らしと

加工が必要だと痛感してしまったという_| ̄|○


そしてその後も練習走行レーンを少しづつ走って行きますが…ハタ目から見たらセッティングしている様にしか

見えなかったと思います。

実際はエンジン冷やしながら慣らしをしてただけ、という(以下略

ついでにクラッチイン〜完全ミートまでのあたりも色々構成変更の実験したりしてたので、発進だけが妙に

スムーズで後で伸びてない、といった姿も見られたかと思ったり。


とまあ、そんなこんなで最終アタックの時間になりまして、とりあえずタイムは4秒5程度までは出ていたのですが

最後は13000rpm程度を使い、1発目の試験アタックと同一の駆動系構成としてアタックを試みた所、タイムは

4.407という、最初と比較してコンマ3違う結果になりましたよ。

…これ、私自身もちょっとびっくりですがピストンクリアランスの狭い純正構成の腰上が超高負荷にしっかり

馴染みきるには結構な「負荷を与えた時間」が必要だな、とも言えるんですよね(汗


1発目とはエンジンのフィーリングがかなり異なりましたし、やはり7〜8000rpm常用を考えていて、新品で

その程度の回転域でぶん回しても何も起こらない仕様のブツ、という物が倍近い高回転域での常用にて

しっかり馴染むにはそれなりの実働時間は必須、という事で…

初歩的ではありますが、腰上構成+ピストンクリアランスが純正である前提ならば、という事で改めて勉強に

なりましたよ。



と、まあ、一応ですがこの日のベストタイムは4.407という、劣化キタコピストン仕様にすら及ばないといった

モノでしたが、ポートの仕様を鑑みればこれだけ出れば上出来だと思いますね。

と言いますかレース前にはこの街乗り仕様にも劣るヘボポートでは4秒5を切る事も絶対無理だろう、と

予測していたので…

意外、といっては何ですが、懸念の一つであったキタコピストン1本リングの安定性の無さ、混合気の密封性等が

チューン具合の差となって如実に現れた結果、となってしまいました。

2本リング仕様も間違いなくメリットはあり、そちらを煮詰めてみるのも悪くないという事で。


…問題は、AF18系純正リングの場合はその脆さの為に排気ポート弦長等の加工限界が低いという点であり、

この秘密リングがちゃんと持ってくれれば…数年前とは違うであろう今の自分の設計&加工技術も合わせて

しっかりとした「純正ピストンでの安定運用」が可能なのではないか、といった所ですね。


そして一番の懸念であったリング廻りの状態ですが…

合口は無事 …バラしてみるとリング自体の減りはそれなりに出ていたものの、合口付近の破損等はとりあえず無くてほっとしましたよ(汗

ココがぶっ飛ぶと実走でも明らかにパワーダウンを感じるのですがそれもありませんでしたし、シリンダー側に酷い傷を入れているという事も無かったです。

とりあえずはこの程度の排気ポート具合ならまだまだいける、といった分析は出来たので、次は上側の落差をもっと小さくしてみての運用テストですね。


が、さすがに高負荷をかけて何十kmも走っている上にSSの一日運用の割にはこのリング、柔軟性が

あまり出ていないな、という懸念点もありましたが…

これは実際の運用にて引っ掻かなければOK、としていかなければ話にならないので、しばらく使ってみて

このリングのクセや方向性を掴まないといけませんね。

また長い道のりになりそうですが、これもまた一興という事で…



というワケでして、これにて私の2012年度のSSは終了となります。

今年度のベストっていくつだったかと言えば…5月のお古キタコピストン仕様で出した4.312になりますが…

もはやここまでくると自分でも4秒フラット台ってのがどんな加速感だったのかすら忘れているフシもある上、

人様のSSマシンに乗る事もほぼ無くなったので、人間の体感センサーが劣化している事も確実ですが(泣

それでもやっていかなければ進歩は無いので、来年度もまたぼちぼちとトライしていきたく思いますよ。


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