ピストンが焼き付くと…



ではでは…今回もやってまいりました、管理人の記憶の扉をコジ開けるこのコーナー(笑

今回もそこそこ飛ばして行こうと思いますので、皆様よろしくお願い致します〜



さて今回は、チューニングではある意味裂けて通れない道、焼き付きについてひとつ。

私も今でこそエンジンを焼き付かせる回数はぐっと減りましたが、昔はこれでもかなりのクラッシャーだったんですよ?

…妙なウンチクを垂れ流す現在の私からは想像して頂けないかもしれませんが、私にもハイリスクハイリターンな結果ばかり求めていた時期もあったんですね。




通常、「焼き付き」という物は、ピストンの熱膨張により、シリンダーとのクリアランスが無くなってしまい…金属同士が物理的にこすれてギタギタになってしまうという事ですね。

普通は徐々にエンジンストップ、運が悪くてもいきなりのエンスト程度で済みますが、さらに症状がひどい場合だとそれだけでは済みません(汗

最高速でリヤタイヤのロックが起こったり、極端にアクセルの中間開度セットがマズっていたりするとコーナーリング中にリヤタイヤがすっ飛んだりします…


かくいう私もそんな事は幾度と無く経験していますが、いつも「やっちまった…」と思い、エンジンを開けるのが辛くなりますよね(泣

焼き付いたエンジン…通常ならシリンダーとピストンに縦キズがいくつも入り、お互いにこすれあって嫌な音がします…

しかし…「限度を超えた」場合だと、そんな生半可な物では済まされない場合も多々あるんですよね。




昔…多分ハリケーンSSー1だったと思いますが、Dioのチャンバーを交換してセッティングを行っていたんですよね。

キャブは18パイ&ユニフィルター、当然のごとく排気ポートは手削り拡大でしたが(笑

このチャンバー、当時はなかなかの製品として人気があり、パワーバンドが広くとても使いやすいチャンバーでした。


しかし当時のイケイケな私の事ですから、思い切りキャブセットを薄くし、なおかつ指定WR5.5g?×6個の所を確か4.5g程度でセッティングをしていたんですよ(汗

当然エンジンには多大な負荷がかかりますが…まだまだ尻の青い未熟者だった私には、エンジンが悲鳴を上げている事に気付かなかったんです。


何度かセットを変えて走っている内に、徐々にパワーダウンを感じる様になりました。

「これはおかしいぞ?焼き付きの兆候か??」と思い、とりあえず路肩にマシンを止め、アイドリングでエンジン音を聞いてみる事に。

すると…「チャラチャラ」とか「カラカラ」とか言う音がシリンダー付近から聞こえてくるんですね。


そこでさらに詳しく異音の発生源を探る為、エンジンの真後ろに座り込み、排圧があるかどうかを確認する為、手をチャンバーの後ろにかざし、アクセルを開けてみたんですよ。












すると



















アクセルを空けた瞬間

いきなり手のひらに

「何か」が

「ベチベチベチン!!」とブチ当たって来ましたが



















「痛い痛いイタイッっなんじゃこりゃ?」と思いつつ手のひらを見てみると…























まぎれもない

ピストンリングのカケラが

手のひらに刺さってましたが
















…しばし呆然としましたが、気を取り直して刺さったリングの破片を抜き取りつつ「やっぱり焼きついてるなコレ」と認識しましたがね(笑

あ、手の皮に刺さっていたので別にさほど痛くはありませんでしたよ(汗


しかし今思い出しても不思議な話です。

ピストンリング「だけ」が破損して、排気ガスと共にチャンバーより排出されていたんですから…

当然一度エンジンを止め、Dioを家まで押して帰ったのは(以下略





で、当然のごとく焼き付いたエンジンを開けなければ話になりませんから…即開封です(笑

すると…意外や意外、エンジンはまだ回っていた状態だったのでピストンとシリンダーの固着は無く、無事にシリンダーが抜けました。

「リング飛び出してきたのに…んじゃリングはどうなってんだろ〜」と思いつつリングを確認してみると…





















リングに注目(汗




まだピストン側にリング残ってましたよ。一部分だけ(爆







…残っていると言いますか、リングは熱で固着している部分と固着していない部分があった模様ですね。

運良く(?)固着しなかったリングは、シリンダー内壁さんとお友達になりつつ排気ポートから吐き出されたという事なんでしょうね(笑


こんな状態でも、私がエンジンを止めるまではある程度普通に回っていたんですから…エンジンって不思議ですよ。

リングがある程度でも「形」が残っていれば、そうそう圧縮圧力が逃げ切ってしまう訳でも無いんですねぇ。

ちなみに反対側には50%位セカンドリングが残っていたので、それの影響もあるかと(笑

あ、何か銀色の物体がくっついているのは…アルミパテのテストなのでお気になさらずに(汗




で、その反対側なのですが。
























見事に角が無いですな(笑




思いっきりピストン欠けてましたがね_| ̄|○







さすがにこれはどんな原因でこうなったのか今でも分かりませんよ(汗

掃気ポートにカジったのかとも思いましたが、掃気噴き出し口とはまた別の位置なんですよね。

割れたリングが掃気噴き出し口に挟まり、ピストンのカドを粉砕した、と言う説が最も濃厚ですね…


しかしこれも妙な物です。

ご覧の通り、ピストンの側面には全くといって良い程キズはありませんし。

さすがに吸気側には縦キズがありましたが、全開走行でもしない限り焼き付かないだろうと思う程度でしたからね。

うーんやはりエンジンって強いですね(爆






とまあ、このケースの場合はこんな感じの焼き付き(?)だったワケですが…これでも最後までエンジンは止まりませんでしたよ。

もっと極端にいきなりリヤがフルロック、といった状態なら…まずピストンとシリンダーが噛み付いてしまい人力では外せなくなるケースもあったりします。


…ここでワンポイントアドバイスですが、「焼き付き経験」も「極み」の域に達してくると、エンジンのわずかなフィーリングの差やエンジン音で、焼き付く寸前の感覚、という物が分かる様になります(爆

「エンジンが止まる一瞬前」でも、体が「これは焼き付く!」と感じれば、まだ対処のしようもあるんですよ。

それは…絶対にいきなりアクセルをOFFにしない事ですね。


いきなりアクセルを全開から全閉にしてしまうと、ただでさえ熱的にきついエンジン内部が、混合気の供給までカットされてしまい余計にダメージが酷くなってしまう物なんです。

どっちみち焼き付きの兆候を感じたらエンジンは止まってしまいますので…少しでも「アクセルを開けて(エンジンが)止まる」のが理想といえば理想ですよね…

…そんなモン判断出来る様になる程エンジン壊しまくるのはおすすめ出来ませんけど(笑




では最後に。

本当に気付く暇も無く、「一瞬」でエンジンがストップした場合だと…こんな状態もありえます↓



















穴ぼこーん




これはご説明の必要すらありませんが(汗

極度のノッキングを起こし、ピストン周辺にデトネーションの傾向(溶けやスポット)すら発生しないままエンジンストップしたピストンです。


確か、新品のピストンとシリンダーを組み、峠に行くまでをナラシとし、峠に着いてすぐとりあえず全開にした時に起こった物です。

ナラシは完全に行われていましたが、アクセル開度4分の3から全開域が多少薄く、なおかつ点火時期も早かったんでしょうね。

上り坂である程度負荷をかけて山の上まで登り、高速域でアクセルを全開にしたとたん激しいノッキングが起こり、アクセルを戻す暇も無くリヤタイヤがフルロックでしたよ…

まだコーナーの手前だったのでなんとか事無きを得ましたが、かなりヤバいと思った経験でしたね(汗


エンジン自体がハイチューンで、回転上昇が速い場合だと、人間でヤバいと体感出来てもアクセルをゆるめる(全閉では無いですよ)暇も無い事もあると思って下さいね。

…今でも競技車両だとごくごくごくたまーにやらかしますが、こればかりは兆候を体感出来る様になってもなかなか慣れない物ですよ。


ちなみに何で私がこんなゴミを現在でも保存しているかと言いますと…もちろん過去の自分を戒めるため(以下略





では本当に最後に…

こういった「焼き付き」ですが、こればかりはメカニズムを理解し、エンジンの熱問題等を正確に判断出来る様にならなければいつまでたっても解決しません。

なので普段から、少しのエンジンの不調にも気を遣って乗らないと、いつどこがおかしくなっても判らない物ですからね。

特にスクーターの場合だと、「自分のエンジンの限界の性能で巡航」するのは正に自殺行為です。

いくらハイチューンマシンでセッティングがきちっと出来ていたとしましても、いっつも「限界」の性能で走らせていたのでは無理がでかすぎるんですよ。

MAX80km/h出るエンジンでも、常にアクセル全開の80km/hで巡航するのはただの阿呆ですよ。

(エンジン以外でも、「緊急回避」の為の性能的余力が無い、等色々)

余力が持てないとエンジンだけで無く、他にも色々と危険が発生しますので…

私も昔は色々とくだらない失敗でエンジンを壊した事がありますが、「作業ミス」と「同じ失敗」はした事が無いのが自慢ですしね。

皆様もお気を付け下さいませ。





教訓:同じ原因で何度もエンジンを壊すのは進歩が無い


戻る